新日本
-
スポーツ 2016年06月05日 12時00分
新日ジュニアに新時代の到来! リコシェとオスプレイが奏でた16分47秒の神試合!
5月27日に後楽園ホールで行われた「BEST OF THE SUPER Jr.XXIII」公式戦。メインイベントには、リコシェとウィル・オスプレイによる外国人対決がラインナップされた。世界を代表するハイフライヤー同士の対決に戦前から注目が集まっていたが、ゴングが鳴ると両選手はいきなり立体殺法を繰り出し、お互いにヘッドシザースドロップで着地しただけで後楽園ホールは大爆発。スワンダイブ式フライングボディアタックセカンドロープからのトルニージョ(きりもみ回転式のプランチャ・スイシーダ)ハンドスプリング式スピンキックスワンダイブ式フライングフォーアームトルニージョ式サスケスペシャル変型カナディアンハンマーリバースフランケンシュタイナーその場飛びスパニッシュフライ 次々に飛び出す難易度が高い技の数々に対してファンは「This is awesome!!」(これは凄い)チャントを送るなど、盛り上がりが尋常ではなかった。気がつけば、リコシェのパートナーであるマット・サイダルも客席の後ろから目を輝かせながら2人の攻防に一喜一憂している。他にヘビー級の選手も含め、多くのレスラーたちがインタビュールーム前に設置されているモニターの前に椅子を並べてこの試合を見ていたそうだ。 試合はリコシェがオスカッターをキャッチして変型のジャンピングパワーボムで叩きつけてから一気に仕掛け、変型ノーザンライトボムからのブレーンバスター、その場飛びシューティングスタープレスを敢行。さらにトップロープからの630°スプラッシュを放つも自爆し、高角度の変型DDTを喰らってしまう。最後はコークスクリューキックからの必殺オスカッターでオスプレイが勝利を収めた。試合時間は16分47秒。 試合の途中からは勝敗のことなど吹っ飛んでいたファンが多かったのではないだろうか。試合後、リコシェが再戦をアピールし、オスプレイが握手で応えると大きな拍手と歓声がリング上の2人を包み込んでいた。さらに印象的だったのは、選手が退場しても観客がなかなか帰ろうとしなかったこと。私がインタビュールームから戻った時には、リングの撤収作業が行われていたのだが、まだ残っているファンが多数見受けられた。何人か話しかけてみると「あまりにも凄いものを見てしまったので呆然としてしまいました」「もう少しこの余韻に浸りたい」「今年のベスト興行」といった賞賛の声を聞くことができた。リコシェとオスプレイによる16分47秒の闘いは、新日ジュニアに新時代の到来を感じさせるには十分な内容だったのだから、当然だろう。 ここ数年、KUSHIDAを中心に築き上げてきた新しい新日ジュニアのブランドは外国人選手にもしっかりと根づいている。かつての新日ジュニアも獣神サンダー・ライガーを中心に築き上げ、外国人選手が広げていくことでブランド化した。 この試合は新日本プロレスワールドを通じて世界に同時配信されたが、これを見た元新日本プロレスのエース外国人だったビッグバン・ベイダーや、元新日本の常連外国人で現在WWEのウィリアム・リーガルなどがTwitter上で賛否両論を唱えており、世界中のプロレスラーにインパクトを与えた試合になったようだ。反響が大きいことを受けて新日本は、スーパーJr.の決勝が行われる6月7日までの限定ながら、新日本プロレスワールドとYouTubeで同試合の完全ノーカット版を無料配信することを決定。YouTubeでは6月1日現在、6万回を超える再生を数えている。良いものはより多くの人に見てもらいたいという新日本の柔軟な姿勢は評価するべきだろう。実況が入っていないこともあり、当日の会場の熱い雰囲気がストレートに伝わってくるのもポイントが高い。 試合後、敗れたリコシェが「俺たちは何回も闘ったことがあるから、お互いの技をわかっているんだ」と言えば、勝ったオスプレイは「リコシェは新しい時代を切り開いたハイフライヤーだが、俺は乗り越えてみせる」とコメント。この2人がアリーナクラスや東京ドームで対戦したらどんな試合になるのだろうか。こんなワールドクラスのカードが新日本マットで見られる幸せを噛み締めた5・27後楽園大会だった。(増田晋侍)<新日Times VOL.20>
-
スポーツ 2016年06月04日 15時00分
プロレス解体新書 ROUND4 〈日米王者の友情物語〉 “東洋の巨人”と“人間発電所”
ジャイアント馬場の好敵手であると同時に真の友人だったともいわれるのが、“人間発電所”の異名を取ったブルーノ・サンマルチノだ。 自身が王者のWWWF(現WWE)が新日本プロレスと提携してもなお、ライバル団体である馬場の全日本へ参戦を続けていた。 米国における英語のニックネーム“パワーハウス”も、やはり発電所を意味する単語ではあるが、これはサンマルチノの力自慢と“パワー”の部分を掛けたニュアンスからのもの。 日本のプロレスマスコミはこれを直訳して“人間発電所”としたが、まさに無尽蔵に力が生み出されるかのごときサンマルチノの肉体を象徴する、秀逸なニックネームといえるだろう。 身長182センチと当時のプロレスラーとしては決して長身ではないが、分厚い胸板から繰り出される明快なパワーファイトは説得力十分。 1963年、初代WWWF王者のバディ・ロジャースをわずか48秒で下して2代目王者になると、以後は通算10年以上の長きにわたって王座に君臨し、“MSGの帝王”とも称された。 試合開始からパワー全開、短時間のうちに相手を叩き潰すというファイトスタイルは、のちのハルク・ホーガンやアルティメット・ウォリアーらにも受け継がれる伝統様式とまでなっている。 重爆ストンピングからベアハッグ、あるいはカナディアン・バックブリーカーで締め上げて勝ち名乗りをあげる。そんなパワー一辺倒の戦いぶりは、カール・ゴッチらレスリング巧者からは「ニューヨーク以外では通用しない」と軽んじられた。 しかし、こと日本においては、とりわけ馬場との試合でその色合いを異にしている。 '67年、ファン待望の初来日を果たしたサンマルチノは、馬場の持つインターナショナル選手権に2度挑戦。いずれも結果は引き分けであったが、蔵前国技館での2戦めは時間切れのドロー。 「腰痛のためバックブリーカーを使えなかったというが、それでもベアハッグとパンチ、ストンピングで試合を組み立て、フルタイムを戦ってみせた。もともとは重量挙げの選手でレスリング技術はなかったかもしれないが、それでも存在感は抜群。観客に魅せる技術はやはりトップクラスだった」(ベテラン記者) 日本での馬場とのシングル対決は計10戦。中でも名勝負といわれるのが、2度目の来日時、やはり馬場のインター王座に挑戦した'68年8月7日、大阪球場での試合だ。 雨天順延となりながら1万4000人の大観衆を集めて行われたこの一戦。 サンマルチノがバックブリーカー、馬場が32文ロケット砲とそれぞれの必殺技で1本ずつを取り合うと、3本めは場外乱闘から馬場がサンマルチノを鉄柱へぶつけて、カウントアウト直前にリングイン。勝利を収めた。 「リングアウトとはいえ、現役世界王者のサンマルチノに完全勝利を収めたことは、当時としてはとんでもない快挙。力道山ですらNWA在位中のルー・テーズには勝てなかった。これ以降、馬場自身はもちろん、インターベルトに対しても、メディアやファンからの評価はグンと上昇することになった」(同) プロレス界において、今とは比較にならないほど世界王者の価値が高かった時代。これを成し遂げたのは、もちろん馬場の政治力があってのことだが、加えて両者の信頼関係というのも重要なポイントだろう。 '74年にWWWFと新日本プロレスが提携した後、王者サンマルチノが単独で全日のリングに上がり続けたのも、それがあってのことといわれる。 「新日の敵対団体である全日に参戦するなどは、新日からすれば重大な契約違反。ただ新日としては、それを黙認してもWWWFの外国人ルートを必要としていたし、またサンマルチノも長年の功績からわがままを言えるだけの存在だった」(同) “東洋の巨人”として米マットを席巻した馬場の武者修行時代、キャリアが同等だったことからサンマルチノとの間に友情関係が芽生えた−−というのがプロレス界の定説。サンマルチノが馬場に、自前のキャデラックをプレゼントしたとのエピソードもよく知られたところだ。 馬場も自著で、数少ないレスラーの友人の一人としてその名を挙げている。 ただし、馬場は後年まで英語がつたなく、両者の会話は通訳を介して行われていたというから、いわゆる純粋な友情となるとどうだったか…。 「馬場は全日旗揚げ時、外国人選手を確保するために相当な金をアメリカマット界にばらまいたともいわれている。サンマルチノにしても、新日に出れば所属団体と新日の契約。でも、全日なら個人の契約だから、そのぶん実入りが多くなるというのはあったんじゃないか。もちろんその根底には、馬場への信頼があったことには違いないのだろうけどもね」(同)
-
スポーツ 2016年05月29日 15時00分
プロレス解体新書 ROUND3 〈ジャンボ鶴田の偉業〉 AWA王者として全米ツアー
本場アメリカで最も活躍した日本人レスラーは誰か。人によって評価の基準は異なろうが“格式”という点ではジャンボ鶴田だ。 世界三大タイトルAWAのメジャー王者としてベルトを巻いただけでなく、米国内でツアーまでこなした日本人は、これまでに鶴田ただ1人なのである。 鶴田ほどに現役当時の実力と人気が乖離していたレスラーはいないだろう。 アメリカにおいての人気や知名度ではグレート・ムタやババ・ザ・ジャイアント(ジャイアント馬場)に引けを取るかもしれないが、鶴田はメジャー王者だったのだ。王者として巡業することは、つまり団体の命運を握ることであり、その責任の重さは計り知れない。 そのAWAのベルトを奪取したのが1984年2月23日、蔵前国技館でのニック・ボックウィンクル戦。鶴田の持つインターナショナルヘビー級王座とAWAの二冠戦として行われた。 鶴田がそのインター王座を獲得した前年8月のブルーザ・ブロディ戦で、師匠の馬場は「今日からおまえがエースだ」と勝利を讃えている。 それでも当時は、まだまだ“馬場の全日本”であり、タイガーマスクや維新軍などの新風に沸く新日本とは、大きく水を開けられていたのが実情だった。 鶴田を確固たるエースとしてファンに認めさせるには、それまでの海外一流選手と好勝負はしても勝ちきれない、“善戦マン”との評価を変える必要があった。 そのためにまず行われたのが、ルー・テーズによる“へそで投げるバックドロップ”の伝授であり、続いてのインター王座獲得。そうして迎えたAWA戦は、鶴田にとって必勝が義務付けられていたといっても過言ではない。 「ただし、いくら世界戦とはいえ、ニックと鶴田で大会場を埋めるのは難しいというのが会社の判断で、特別レフェリーには前年に引退試合を行ったテリー・ファンクが配された。さらに、セミファイナルでは、天龍源一郎とリッキー・スティムボートのUN世界王座決定戦も組まれました」(元・全日関係者) ちなみにこのUN王座はデビッド・フォン・エリックが保持していたが、防衛戦のため来日した直後に急死。急きょ決定戦に変更されて、天龍悲願の初タイトル獲得となっている。 メーンの鶴田vsニックは30分を超える熱戦となった。ニックの執拗な腕攻めなど老獪なテクニックに翻弄されながらも、鶴田は随所にパワーを発揮し、最後はテーズ直伝のバックドロップで仕留めてみせた。 鶴田の完勝によるAWA奪取と、その3日後の大阪での防衛戦は、ファンにとって意外なものだった。 「たとえ鶴田が勝っても、特別レフェリーのテリー絡みのトラブルで“タイトル移動がなくなるのでは?”との予測が外れたのがまず一つ。さらに2度試合が組まれていることから、馬場のNWA王座と同様、もし獲っても“すぐに陥落するレンタル王者に終わるのでは?”との見方です。いずれも杞憂に終わりました」(プロレスライター) この直後からアメリカに渡って3度の防衛戦をこなすと、帰国してさらに3戦。再度アメリカでツアー参戦し、5月にリック・マーテルに敗れるまで計16度の防衛を重ねることになる。 今に至るまで日本人プロレスラーの誰も成し遂げたことのない、まさに偉業である。 この米国防衛ロード、全日本側には鶴田格上げのためとの明確な理由があったが、ではAWA側が、なぜ未知数の日本人を王者に迎えたのかといえば、それにも理由はあった。 「80年代に入り激しさを増したWWFの攻勢に、AWAは大きな危機感を覚えていた。それでテリトリーを日本にも拡大しようという意図から、鶴田を王者に抜擢したわけです」(同) ところが、そんな両者の目論見はもろくも崩れる。 まず、当初の予定で鶴田は日米を股にかけ、長期王者として君臨するはずだったが、あまりのアメリカでの不人気で、その予定を変更せざるを得なかったのが誤算だった。 「異国人の鶴田ではベビー(善玉)は張れないし、かといって分かりやすいヒール(悪玉)でもない。アメリカの試合ではレフェリーの隙をついたラフファイトを見せたり、それを注意されるとリック・フレアーばりの『NO! NO!』もやりましたが、やっぱりそれだけでは受け入れられませんでした」(同) さらに国内では、長州力率いるジャパンプロレスの全日参戦が始まり、そちらに注目が集まることになる。その長州とのシングル戦で、鶴田は余裕の戦いぶりで格上感を見せつけたものの、逆に“本気を出していない”とファンの反感を招いたりもした。 また、AWAもWWFの大量引き抜きにより弱体化。日本では新日本とも提携するなど存続を模索したが、1991年には事実上の活動停止を余儀なくされた。
-
-
スポーツ 2016年05月29日 12時00分
約7年ぶり! “ジュニアオールスター戦”スーパーJカップの出場枠が決定! 気になる「X」は?
3月3日の新日本プロレス大田区総合体育館で、木谷高明オーナーから約7年ぶりとなるスーパーJカップ(以降Jカップ)の開催が発表された。Jカップは過去5回行われているが、毎回ホスト役を務める主催団体を持ち回り的に変えることで、業界全体の大会であることを打ち出している。過去の大会の主催団体と優勝選手は次のとおりだ。1st STAGE 新日本プロレス(1994年) <優勝>ワイルド・ペガサス2nd STAGE WAR(1995年)<優勝>獣神サンダー・ライガー3rd STAGE みちのくプロレス(2000年)<優勝>獣神サンダー・ライガー4th STAGE 大阪プロレス(2004年)<優勝>丸藤正道5th STAGE 新日本プロレス(2009年)<優勝>丸藤正道 今回は「スーパーJカップ2016」というタイトルになり、Jリーグのブームにあやかって付けられた「STAGE」という名称がタイトルからはずれた。また主催団体はプロレスリング・ノアと新日本が共催することになった。トーナメント1回戦は7月20日に後楽園ホール(8試合)が行われ、2回戦、準決勝、決勝をノアのお膝元でもある有明コロシアムで8月21日に行う。有明コロシアム大会ではジュニアのスペシャルマッチも組まれる予定だ。 また団体(または軍団・ユニット)別の出場枠も決定し、発表された。新日本プロレス 本隊 3新日本プロレス CHAOS 1全日本プロレス 1プロレスリング・ノア 3鈴木軍 2ドラゴンゲート 1KAIENTAI DOJO 1琉球ドラゴン プロレスリング 1ROH 1CMLL 1X(未発表) 1計16選手 Jカップは第1回大会から普段絡みがない団体や選手による対戦が注目されるが、今回は全日本の参戦がサプライズと言ってもいいだろう。3月の時点で全日本は出場団体に入っていなかった(逆に名を連ねていたゼロワンは外れている)。全日本は世界ジュニアヘビー級王者である青木篤志が参戦すれば久々にノア&新日本の選手と絡む可能性があり、楽しみが膨らむ。 出場選手は参加各団体に委ねられており、KAIENTAI DOJOはJカップへの出場権を懸けた予選を行うことが発表されている。代表のTAKAみちのくは第1回Jカップが自身の出世試合だったので、思い入れが強いのだろう。層が厚い新日本は本隊とCHAOSを合わせて4枠あるが、ROHやCMLLの代表選手も新日本への参戦経験者が出場することが濃厚で、新日本ジュニアという括りでは6枠。IWGPジュニア王者はもちろん、21日から開幕した「ベスト・オブ・ザ・スーパーJr.」の上位選手がラインナップされるのは間違いない。 ノアも現在ノアマットに参戦している鈴木軍を含めれば、ノアジュニアから5枠という見方もできる。TAKAみちのく、タイチ、エル・デスペラードといった鈴木軍のジュニア部隊は昨年1月、ノアに戦場を移してから新日本ジュニアの主力とはシングルを行っていない。特にデスペラードはノアで自信を深めているだけに、何としてでも出場したいはずだ。 前大会でYAMATOが出場したドラゴンゲートは今回も若手の有望株を送り込んで来ることが予想される。Eitaあたりが出場すれば話題を呼びそう。琉球ドラゴンはライガーとも対戦経験がある代表のグルクンマスクが初出場か? そして気になるのは今回「X」となっている未発表枠。団体数の増加に加えて日程などの都合もあり、なかなか全ての団体のジュニア選手が一堂に会するのは難しい。個人的にこの「X」で期待したい選手がいる。それは今年1月の「ファンタスティカマニア」後楽園ホール大会で、一夜にして旋風を巻き起こしたカマイタチ(高橋広夢)だ。現在カマイタチはROHなどに出場している。「X」枠で出場するに値する選手なのは言うまでもない。帰国後はジュニアを背負う覚悟があることもインタビューなどで明らかにしているだけに、Jカップでの本格凱旋に期待したい。 過去の大会ではいろんな夢を見せてくれたJカップの復活はプロレス界にとっても喜ばしいことだ。これを機に4年一度、オリンピックイヤーの定期開催検討を願っている。(増田晋侍)<新日Times VOL.19>
-
スポーツ 2016年05月23日 16時00分
プロレス解体新書 ROUND2 〈A猪木vs藤原喜明〉 思惑が入り乱れた末の師弟対決
「この1年半のUWFの闘いがなんであったかを確認するために、新日本に来ました」 1985年12月、両国国技館のリング上から、前田日明のあいさつとともに新日本プロレス復帰参戦を表明したUWF。翌年明けからアントニオ猪木への挑戦権をかけたUWF勢によるトーナメント戦が始まり、これを勝ち上がったのが藤原喜明であった。 猪木への挑戦者決定戦となった藤原vs前田。その結着のゴングが鳴らされた瞬間、会場は低いどよめきに包まれた。そもそもどちらが勝ったのかが判然としない。 マットに伏せ倒れているのは藤原だが、一方の前田も脚を引きずり顔をしかめている。結果、レフェリーにより勝ちを告げられたのは藤原であった。 テレビ解説の山本小鉄は、「藤原に足首を極められた前田がギブアップした直後、藤原は前田のスリーパーで締め落とされた」と、不透明な結末への補足説明をした。だが、勝った藤原への歓声はまばらで、それよりも前田敗退への落胆の溜息が会場のあちこちから漏れ聞こえることになる。 この試合が前田の地元大阪で行われたため、というばかりではない。当時、選手の大量離脱など暗い話題の多かった新日において、前田はファンの“希望”だったのだ。 この頃、新日の常連外国人といえば、すでに猪木とは格付けの済んだ感のあったディック・マードックにマスクド・スーパースター。エリック兄弟はまだ若く、猪木よりも藤波辰爾らのライバルと見られていた。 唯一、猪木と完全決着がついていなかったのはブルーザー・ブロディだが、前年暮れのMSGタッグリーグ決勝をボイコットし、新日離脱が濃厚視されていた(以後、いったん新日に復帰した後、再度離脱して全日本プロレスへ)。 そんな中にあって、前田は猪木の敵役として、また次代のエースとしても、その活躍が渇望されていた。しかし、その期待は藤原の勝利により、先送りとなってしまった。 そうして2月に行われた猪木と藤原の試合は、名目上は“新日とUWFの頂上決戦”とされたものの、かつて両者が師匠と付き人の関係にあったことはコアなファンならば先刻承知。そのため当初から、藤原の下剋上を期待する声は薄かった。 猪木もまた、あくまでも自分が格上であることを意識した試合運びで、藤原のアキレス腱固めには「極める角度が違う」と上から目線のアピール。さらには局部への蹴りや顔面へのストレートパンチとやりたい放題の末に、藤原をスリーパーで締め落としてみせた。 これに怒ったのがセコンドの前田で、勝ち名乗りを上げる猪木に駆け寄ってハイキック一閃。マットに崩れる猪木を尻目に、「猪木なら何をしても許されるのか!」と吐き捨てたその姿は、プロレス新時代の到来を予感させるに十分だった。 「この時点で新日は、猪木vs前田を将来のドル箱カードとして見据えていました。そのことはもちろん猪木も納得済みです。そうでなければ前田のキックを食らったりはしない。次につながるストーリーがなければ、ただの蹴られ損ですから」(当時の新日関係者) では、なぜこのカードは実現しなかったのか。 「というか、あの時点で実現したとして、いったいどっちが勝つんですか? かねてから『ワールドプロレスリング』中継を担うテレビ朝日は、あくまでも猪木がトップでなければ、テレビ放送する価値がないとの構え。だからといって、将来のエース候補である前田を簡単に潰すわけにもいかない」(同) やる以上は、前田がトップに立つことをファンや関係者に納得させた上で、最低でも猪木と互角以上の闘いを見せなければならないわけである。そうして、そんな要望に応えるかのごとく、前田は着実に実績を重ねていった。 タッグ戦ながら猪木にリングアウト勝ちを収めると、ドン・中矢・ニールセンとの異種格闘技戦でも激勝を果たす。これにより、いよいよ世代交代が現実味を帯びてきたかに見えたのだが、そこで思わぬ横やりが入る。 新日vsUWFの対抗戦は、ライトなファン層からすると関節技主体の攻防が地味に映ったのか、コアなファンの熱狂とは裏腹に、テレビ中継の視聴率はむしろ対抗戦以前よりも低くなってしまったのだ。 そのためテレビ朝日の要望で、『全日本プロレス中継』(日本テレビ系)を活性化させた立役者である、長州力の新日復帰工作が始まった。 長州路線で行くとなれば、もはや猪木と前田が闘う必然性はない。前田を新エースの座に就かせる“大河ドラマ”は、シナリオ変更を余儀なくされてしまったのだった。
-
-
スポーツ 2016年05月08日 12時00分
誰がKUSHIDAを止めるのか? 新日本プロレスジュニアの祭典出場選手決定!
今年で23回目を迎える新日本プロレスジュニアヘビー級選手の最強決定戦「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア23」(以下BOSJ)の出場選手が3日福岡国際センター大会の休憩前に発表された。<出場選手> 【Aブロック】KUSHIDA(7年連続7回目)※第73代IWGPジュニアヘビー級王者、2015年優勝田口隆祐(11年連続12回目)※2012年優勝カイル・オライリー(2年連続2回目)※2015年準優勝マット・サイダル(初出場)ロッキー・ロメロ(5年連続6回目)外道(2年連続10回目)BUSHI(2年振り4回目)マット・ジャクソン(2年振り2回目)【Bブロック】獣神サンダー・ライガー(16年連続20回目)※1994年、2001年優勝タイガーマスク(15年連続15回目)※2004年、2005年優勝ボビー・フィッシュ(2年連続2回目)バレッタ(2年連続3回目)ニック・ジャクソン(3年連続3回目)リコシェ(2年振り3回目)※2014年優勝ボラドール・ジュニア(初出場)ウィル・オスプレイ(初出場) 5月21日後楽園ホールで開幕戦を行い、各ブロック総当りで対戦。最終戦の舞台として今年は6月6〜7日に仙台サンプラザでの2連戦が決定している。2014年の飯伏幸太、2015年のケニー・オメガと当時のIWGPジュニアヘビー級王者が2年連続で出場しなかったため、6月(昨年は7月)の「ドミニオン」で優勝者が挑戦する流れになっていたが、今年は福岡大会で行われたタイトルマッチの前にメンバーが発表され、チャンピオンのKUSHIDAも、挑戦者のライガーも名を連ねていたため、3年振りにIWGPジュニア王者が出場することになった。 Aブロックは福岡大会でライガーを相手に4度目の防衛に成功したIWGPジュニア王者KUSHIDAに対する包囲網が敷かれるのは間違いない。KUSHIDAは7月18日から開幕するヘビー級の最強決定戦「G1クライマックス」や8月21日に有明コロシアムで開催されるジュニアオールスター戦「スーパーJカップ」の出場を視野に入れており、「スーパージュニアは2連覇。夏前に独走する」と絶対王者になるためにも連覇は不可欠と捉えている。しかし、最近はKUSHIDAのサポートに回っている田口や昨年決勝を争ったオライリー、初出場のサイダル、そしてKUSHIDAを付け狙うBUSHIと難敵が待ち構えている。KUSHIDA本命は揺るがないが、団子状態になると意外な選手が勝ち上がる可能性もあるだろう。 Bブロックは福岡大会でKUSHIDAに敗れたものの「ライガー最終章」という言葉をKUSHIDAに再挑戦する日まで封印すると宣言した“世界のレジェンド”ライガーが20回目の出場。福岡大会の試合後、改めて「ライガー(を出来るの)はあと5年」と話しているだけに、最後のスーパージュニア優勝も狙っているはずだ。ただ近年の実績や勢いから予想するとこのブロックは2014年にKUSHIDAを破り優勝しているリコシェを本命に推したい。サイダルとのハイフライヤーズではIWGPジュニアタッグ王座を福岡大会で再度奪還するなど今ノリに乗っている。注目はCMLLから初出場するボラドール・ジュニアと、同じく初出場のオスプレイが何処まで星を伸ばせるか? 彼らにとってはまさに生きる伝説であろうライガーとの対決も楽しみだ。 1・4東京ドーム大会でケニーを破りIWGPジュニア王座を奪取してから完璧とも言える防衛ロードを築き上げているKUSHIDA。ライガーも「ジュニア最強のチャンピオン」と称賛していたが、2013年のプリンス・デヴィット以来、3年振りのチャンピオンとしてBOSJ制覇、そして連覇となると2004年〜2005年のタイガーマスク以来の快挙となる。はたしてKUSHIDAの時計の針を止めることができる選手はいるのか? 今年もBOSJが見逃せない。(増田晋侍)<新日Times VOL.17>
-
スポーツ 2016年05月01日 12時00分
新日本5・3福岡は豪華6大タイトルマッチに! 永田、ライガーと泣けるか!? 大会展望
今年も「レスリングどんたく」の季節がやって来る! 新日本プロレスは5月3日に毎年恒例のビッグマッチ「レスリングどんたく2016」を福岡国際センターで開催する。4・29グランメッセ熊本大会が中止になったことで、タイトルマッチが当大会に振り分けられたことに加えて、NEVER無差別級6人タッグ選手権の開催も急遽決定。全10試合中、豪華6大タイトルマッチにスペシャルマッチが2試合とまさに東京ドーム大会級のラインナップとなった。今回は5・3福岡大会の全対戦カードの見どころを掲載する。1.キャプテン・ニュージャパン&ジュース・ロビンソン vs バッドラック・ファレ&高橋裕二郎 ヨシタツにハンタークラブ入りを直訴したが保留されているキャプテン。ここはバレットクラブ相手に結果を出したいところ。バレットクラブは最近大人しい裕二郎の奮起に期待したい。2.タイガーマスク&田口隆祐&ジェイ・ホワイト&デビット・フィンレー vs 桜庭和志&YOSHI-HASHI&ウィル・オスプレイ&外道 注目は福岡初登場のオスプレイ。8人タッグなので何処まで予測不能な難易度が高い空中殺法が飛び出すかわからないが、まだ荒削りながらも今後新日ジュニアの中心に間違いなく入って行く選手なので、その一挙手一投足に注目してもらいたい。3.IWGPジュニアタッグ選手権試合<王者組>ロッキー・ロメロ&バレッタ vs リコシェ&マット・サイダル<挑戦者組> 4・10両国大会のリターンマッチ。外国人によるIWGPジュニアタッグ戦は本当にハズレがない。この絡みが新日本マットで見られるのは本当に幸せなことである。両国でも熱を生んだこのカードが福岡でも爆発するのは間違いなく、勝敗に関しては当日運が良かったチームが最後にベルトを巻いているのではないだろうか。それだけ両チームの実力は拮抗している。最初から最後まで目が離せない。4.NEVER無差別級6人タッグ選手権試合<王者組>棚橋弘至&マイケル・エルガン&ヨシタツ vs ケニー・オメガ&マット・ジャクソン&ニック・ジャクソン<挑戦者組> この試合も4・10両国大会のリターンマッチだが、4・27博多スターレーン大会でファレとの激戦を制した棚橋が、ケニーが保持するIWGPインターコンチネンタル王座への挑戦表明(ケニーは拒否)したことにより、棚橋がケニーを振り向かせることができるのか注目される。また敗れはしたものの、ケニーと大熱戦を演じたエルガン、ハンタークラブ設立に向けて動いているヨシタツと話題を欠かさない王者組に、チームワークに自信がある挑戦者組がどう崩して行くのか。様々なテーマが入り混じったタイトルマッチになりそうだ。5.IWGPタッグ選手権試合<王者組>タマ・トンガ&タンガ・ロア vs 真壁刀義&本間朋晃<挑戦者組> ジュニアタッグと同じく4・10両国大会で王座を明け渡した真壁&本間のGBHが、トンガ兄弟を相手にリターンマッチを行う。ここ数年、IWGPタッグ戦線はなかなか日本人タッグチームが確固たるチャンピオンになれていないだけに、GBHにかかる期待は大きい。またGBHが勝利を収めると会場内が笑顔に包まれることを見ても、ファンから愛されていることがわかる。一発でリベンジして九州に笑顔を与えて欲しい。6.NEVER無差別級選手権試合<王者>柴田勝頼 vs 永田裕志<挑戦者> 小島聡、天山広吉と第三世代を相手に防衛を続けている柴田。天山戦ではダメージから試合後にコメントブースで座り込む姿が見られた。次なる挑戦者は、4・10両国で半ば逆指名される形で永田が登場。柴田は先日の後楽園大会で行われたタッグ戦で中西学も破っており、永田が第三世代最後の砦になる。「もう一度這い上がる」と誓った第三世代にとって永田の挑戦は背水の陣と言ってもいい。リスクを背負う闘いという意味では今大会最も注目のカードだ。7.IWGPジュニアヘビー級選手権試合<王者>KUSHIDA vs 獣神サンダーライガー<挑戦者> 4・10両国でライガーが挑戦表明する形で実現。ライガーは約6年振りのIWGPジュニア挑戦。もし戴冠するとなると2000年7月以来、16年振り12回目の快挙となる。しかしこの後スーパージュニア、スーパーJカップが控えているKUSHIDAは時代を戻すわけにはいかない。8.スペシャルマッチ後藤洋央紀 vs EVIL 昨年11月のEVIL凱旋マッチ以来の対戦。あの時は内藤の介入もあり不透明決着に終わっている。一連の石井戦で覚醒したEVILにとって後藤とのシングルはさらなるステージアップするチャンス。一方の後藤もCHAOSに入り“変化”を誓っているだけに負けられない。二人の肉弾戦は見応えがありそう。9.スペシャルマッチオカダ・カズチカ vs SANADA SANADAはオカダにとってようやく現れた同世代の日本人ヘビー級選手。前哨戦では連日SANADAのSkull EndでオカダをはじめCHAOS勢が絞め落とされて来たが、シングルでは真田聖也時代に使用していた技もいくつか解禁されるはず。ただオカダもSANADAにはまだ手の内を見せていないので、このカードに対する期待値は高い。10.IWGPヘビー級選手権試合<王者>内藤哲也 vs 石井智宏<挑戦者> 内藤の「消化試合」発言に怒り心頭の石井だが、この時点で内藤が主導権を握っている感は否めない。石井が王座を奪取すれば史上最小のIWGP王者が誕生するが、L・I・Jの試合をファンは介入も含めて概ね支持しており、4・10両国のオカダ以上に石井は闘い難いかもしれない。それだけ内藤と石井の立場はこの2か月で逆転してしまった。勝っても負けても試合後の内藤の言動に注目が集まる。 以上、全10カード。今大会の結果は新日本プロレス今年前半戦の大一番、6・19大阪城ホール大会に繋がっていくので、どのカードも結果が重視される大会になるだろう。その中でもベテランの永田とライガーの挑戦は二人がIWGPのヘビー、ジュニアヘビーの王者時代を知るものにとっては感慨深いのではないだろうか。どちらかが戴冠して泣きたいファンも多いはず。はたして福岡で泣けるドラマは起こるのか?(増田晋侍)<新日Times VOL.16>
-
社会 2016年04月27日 14時00分
「創価学会の日」に“エリート”“婦人部”に起こる地殻変動の不気味!
公明党の支持母体である創価学会が“もろ刃の剣”に怯えている。 5月3日の「創価学会の日」を控え、東京都新宿区信濃町の創価学会本部周辺は今、ピリピリムードなのだという。 「昨年の安保法制議論以来、学会本部とJR信濃町駅反対側の公明党本部は反対派のターゲットにされてきました。これまではたまに右翼が街宣をかけるのが定番だったんですが、昨年来、目立つのが学会員自身によるアピールです」(警視庁関係者) 今、学会関係者の中で特に注視されているのが、『元創価学会職員3名のブログ』である。これまで学会脱会者の匿名ブログは数多くあったが、このブログの元本部職員は実名で、しかも経歴まで明かし現在の学会指導部を批判しているのだ。しかも、昨年12月と今年1月に「安保法制の容認は創価三代に違背している」などの横断幕を掲げて、創価学会本部(広宣流布大誓堂)前で「サイレントアピール」(無言で立ち続けること)まで断行した。 「実名ブログといい、本部前行動にしても、従来の学会員では考えられないもの。しかも彼らは一般会員ではない。大学卒業と同時に本部職員となった創価エリートそのものです。信仰のあつい彼らの異議申立に対して、池田氏の子息や原田稔会長、谷川佳樹副会長ら幹部連がどんな対応を繰り返したか、実にリアルに記述されているのには驚きました」(学会中堅幹部) こうしたことから、5月3日(池田大作氏の会長就任と香峯子夫人との結婚記念日)に信濃町界隈で何が起きるか、学会側は戦々恐々なのだという。 一方で、婦人部にはこんな動きがある。実は3月中旬、埼玉県のとある中核都市の「新日本婦人の会」活動メンバーのもとに学会婦人部員が夜分、突如訪れた。“すわ法戦か”と身構えるメンバーに、学会婦人部員は、「戦争法案に反対する署名活動をお手伝いしたい」と驚くべき言葉を口にしたという。「新日本婦人の会」は公式否定するものの、共産党系大衆組織で、学会員からすれば“仇敵”。まして署名は個人情報で、氏名や住所を明かすものだ。 「学会婦人部員は数十筆の署名を携えてやってきたといいますが、このような学会組織の地殻変動はかつてないものです。今夏の参議院選挙の学会票が、どんな数字になるのか…。学会の指導へ面従腹背する一般会員の数は、到底読めません」(同)
-
スポーツ 2016年04月24日 12時00分
新日本4・29熊本大会中止! 棚橋とオカダがメッセージを発表
「日本はね、震災を経験してきて、その中で僕なりに学んだことがあって。日本全体が、元気を失っちゃいけない。1個ずつ、1個ずつ」 17日の甲府大会の試合後に棚橋弘至は熊本地震の被災者に対して力強いメッセージを送った。今から5年前の東日本大震災では、震災の1か月前に仙台大会のメインイベントで当時保持していたIWGPヘビー級王座の防衛戦を行ったばかりということもあり、東京スポーツが主催し、新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノアらが参加した「ALL TOGETHER」の日本武道館大会と仙台サンプラザ大会で棚橋がメインを務めている。あの時も新日本は募金活動に限らず、被災者を励ますために選手を被災地に派遣するなど支援を惜しんでいない。 熊本地震は新日本の選手も被災した。13日から4・29グランメッセ熊本大会のプロモーションで現地入りしていた本間朋晃が無事に帰京したが、マスコミの取材に対して「死ぬかと思った」と震度7の恐怖を語った。甲府大会では試合前にオカダ・カズチカが自ら志願する形で、会場に募金箱を置き、詰めかけたファンに募金を呼びかけている。 新日本では、4・29熊本大会の開催について協議を重ねてきた。しかし「熊本地方を中心に発生した震災の甚大な被害状況や、観客の安全確保、さらに会場となるグランメッセ熊本の破損状況の報告」を考慮した結果、18日に正式に中止を発表した。熊本大会は今シリーズ5・3福岡国際センターと並ぶビッグマッチだったことから、タイトルマッチやスペシャルマッチが数多く組まれていたが、IWGPインターコンチネンタル選手権試合のケニー・オメガ<王者>vsマイケル・エルガン<挑戦者>、スペシャルマッチ棚橋弘至vsバッドラック・ファレは4・27博多スターレーン大会に、NEVER無差別級選手権試合の柴田勝頼<王者>vs永田裕志<挑戦者>、IWGPジュニアタッグ選手権試合ロッキー・ロメロ&バレッタ<王者組>vsリコシェ&マット・サイダル<挑戦者組>は5・3福岡大会にそれぞれ振り分けられた。 熊本大会の中止を受けて棚橋とオカダは次のとおりコメントを発表している。 棚橋弘至「今回の件に関しては、両方の意見があったと思います。まず、選手としては、『現地の方にプロレスを観て頂いて、エネルギーや活力を与えたい』という気持ち。一方、会社としては、大会を開催するのであれば、お客さんの安全確保を第一に考えなければいけないという部分。ニュース等で見聞きするに、熊本地方は余震もまだまだ多いようですし、4月29日という10日後のことは誰も予測できない状況です。残念ですけど、安全を第一に考えたら、今回は中止という結論になったのだと思います。新日本プロレスのレスラーは心の中で『熊本が早く復興するように』と祈ってますし、それは全国のプロレスファンも一緒の気持ちだと思います。いま、会場では熊本地震の義援金活動も行っていますけど、2011年の東日本大震災の時にも仙台や東北、各地のファンからそういったプロレスファンの絆を強く感じました。自分は、こんなときこそ全員が下を向いてはダメだと思うんです。よく身体にたとえて言うんですけど、ケガをした部分を治すには、その周りの細胞が元気にがんばって、いい血流を送りこむことが大事なんです。ボクらは精一杯、プロレスをして盛り上げていきます。そして必ず、熊本に戻ります。熊本の皆さん、その日まで待っていてください!」 オカダ・カズチカ「やっぱり、プロレスができる状況であったら、できれば熊本現地の方に自分たちのプロレスを観てもらいたかったです。それができないというのが会社の判断だったわけで、そこは残念でしたね。ただ、プロレスはできないですけど、これからも被災地のことを考えて、新日本プロレスとしても、個人としてもできることをやっていきたいと思います。(開幕戦では)会場での熊本地震の募金活動もやらせてもらいましたけど、やっぱり選手が立っているだけで、お客さんの反応が違うと思いますんで。今後もやれることはやっていきたいです。今回、大会はできなかったですけど、けして二度とやらないわけじゃないですから。新日本プロレスは、また必ず熊本に戻ってきますんで。その時は、このオカダ・カズチカが、カネの雨以上に、みなさんに“元気の雨”を降らせたいと思います!」 このように棚橋が「いい血流を送りこむ」と言えば、オカダは「元気の雨を降らせる」とそれぞれ独特なニュアンスで被災地に対してコメントをしている。木谷高明オーナーは、新日本とブシロードが合同で1,000万円の義援金を送ること、また新日本の今シリーズ終了までと、期間中に開催されるブシロード関連のイベントで募金活動を行うこと、そして必ず熊本大会を再び開催することを発表した。 阪神淡路大震災のときも東日本大震災のときもプロレスは被災者に勇気と希望を与えてきた。今回もプロレスが担う役割は大きいはず。新日本としては5・3福岡大会が被災者に強いメッセージを送る機会になることだろう。<新日Times VOL.15>
-
-
スポーツ 2016年04月17日 12時00分
IWGPヘビー級王座奪取の内藤哲也がトランキーロ政権樹立!
【尋常じゃない内藤の支持率】 「この会場の雰囲気、この声援、あなたの耳にしっかり届いてますか? 新日本プロレスワールドをご覧の木谷オーナー」 4・10両国国技館大会でオカダ・カズチカを倒し、夢だったIWGPヘビー級王座を奪取した内藤哲也は、渡されたベルトをリングに投げ飛ばしてマイクを掴み、“体制側の象徴”木谷高明オーナーを挑発した。この試合をシンガポールで見ていた木谷オーナーは、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの介入によるタイトル移動に憤り、飲んでいたビールを投げつけたという。しかし、当日もし木谷オーナーが来場していたら、大ブーイングと「帰れ」コールが送られていたのは言うまでもない。 関係者の話によると、今回の両国大会は前売り券の売り上げが順調で、当日券も若干数のみの発売だったという。結果9,078人(超満員札止め)の動員をマーク。今大会用に作られたスペシャルパンフレットも完売した。会場にはロス・インゴベルナブレスグッズを身に付けているファンが数多く見られ、対戦カード発表のオープニング映像が流れた時点から会場は「内藤哲也王座奪取」に向けてすでにムードが高まっていた。 そうしたファンの感情は、メインイベントで内藤の入場テーマ曲が流れると、大・内藤コールとなって爆発。最近の新日本の会場でテーマ曲に合わせてコールが起こるのは珍しい。逆にオカダには入場時からブーイングが飛ぶという異様な空気。これまでどんな選手を相手にしても余裕の表情を隠さなかったオカダだが、どんなに反則をしてもブーイングすら起こらない内藤を前に、徐々に焦りの表情を見せていた。まさに内藤の代名詞である「トランキーロ(焦んなよ)」の術中にハマってしまったというのが正直なところだろう。内藤は予告通りデスティーノでオカダを沈め、2011年1月から5年以上に渡り、棚橋弘至、オカダ、AJスタイルズの3人しか腰に巻いてないIWGPヘビー級王座のベルトを手にした。【新しいパレハはSANADA】 “何かが起こる”春の両国大会で今年も事件が起きた。メインの試合中、オカダがフィニッシュに向けて吠えたところに後ろから忍び寄る覆面を被ったマッチョマン。男はオカダを担ぎ上げるとハワイアン・スマッシャーを喰らわせ、自らマスクに手をかける…。正体は全日本プロレス、WRESTLE-1、アメリカTNAに所属し、現在はフリーとして活動していた真田聖也。前日に大日本プロレス札幌大会に参戦していたことや、髪型をイメージチェンジしたことで、最初は「誰だ?」という声も多く上がっていたが、直後に放ったムーンサルトプレスは名刺代わりというには十分な一発だった。 真田とロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのメンバーには繋がりがある。BUSHIとは全日本時代の同期の仲、EVILとはEVILが渡辺高章だった時代にアメリカでタッグを結成し、カール・アンダーソン&ドク・ギャローズと対戦。そして、内藤とは新日本の入団テストを一緒に受けたというストーリーがある。また、東京スポーツが主催し、新日本、全日本、プロレスリング・ノアの3団体が2011年に日本武道館、2012年に仙台サンプラザで開催した東日本大震災復興チャリティー興行「ALL TOGETHER」では、両大会とも真田と内藤がタッグを結成。仙台大会の試合後に内藤が「もう真田とは同じコーナーに立ちたくない。もう俺を真田の横にくっつけないでくれ」と言えば、真田も「もう次はホント、組むのはないっすね。次は相手のコーナーにいることを望んでいます」と語っていた。同年7月に新日本と全日本が旗揚げ40周年記念として行った「サマーナイトフィーバー in 両国 WE ARE PRO-WRESTLING LOVE!」では内藤がタマ・トンガ、真田がジョー・ドーリングをパートナーに従え対戦し、試合後に握手を拒否したことからシングル対決への期待が膨らんでいた。 こうした経緯があるだけに、あれから4年の月日が経ち、2人が対角線上に立つならまだしも、こんな形で組むことになろうとは全く予想できなかった。真田はSANADAとリングネームを改め、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの新メンバーとして次期シリーズからの参戦が決定。5・3福岡国際センター大会ではオカダとのシングルマッチが組まれた。実はSANADAとオカダはともに28歳で同い年。同世代のライバルが不在だったオカダにとっては、新たな刺激になるのではないだろうか。【内藤の次なる挑戦者は石井】 「俺に決定権があるなら、キャプテン・ニュージャパンと防衛戦30連戦やりますよ」 次期挑戦者が石井智宏だと“会社に決められた”ことを不服とした内藤は、11日に新日本プロレスの事務所で行われた一夜明け会見でこのように発言した。内藤にとって石井は、先月行われた「NEW JAPAN CUP 2016」2回戦で勝った相手であり、「キャプテン・ニュージャパンのIWGP初挑戦の方が見たくないですか?」という内藤の言葉にも頷けてしまう。こうしたファン心理を突いた発言が、内藤が支持率をどんどん上げている一番の理由である。お互いに挑発合戦を繰り返している木谷オーナーとの遭遇も、木谷オーナーが会場を訪れたときに遅かれ早かれ実現するはずで、それを期待する声も多い。しかし、内藤はそんなファンに対しても「トランキーロ!」と言い放つはずだ。 混沌とした時代に生まれた内藤哲也のトランキーロ政権。時代の後押しとともに長期政権となる予感がする。(増田晋侍)<新日Times VOL.14>