スポーツ
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スポーツ 2011年11月05日 17時59分
プロ野球球団は本当に儲からないのか(2) 観客減は「ペナント低迷」だけが原因か?
オリックス球団が近鉄と合併し、オリックスバファローズと名称を変えた04年のオフ、“初代監督”に就任した仰木彬監督(故人)が『よしもと新喜劇』の舞台に立ち、「是非、球場に!」と訴えたことがある。ファンサービスの一環であり、決して悪いことではない。また、『球団合併の悲劇』は真剣に経営再建、ファン拡張を考える契機にもなった。 本当のファンサービスとは何だろうか。落合博満・中日監督は「勝つことが最高の…」と言った。正論である。だが、強いだけでは観客動員数は増えない。中日球団が“優勝監督”の退任を決めたのも不人気が原因とされ、かつて、西武ライオンズの黄金期を築き上げた森祇晶氏が監督の座を追われたのも、観客減が影響していたという。 勝利してもお客さんが来ないのなら、プロ野球そのものの存在意義が問われてしまう。観客減は指揮官を交代させれば全てが解決するというものではない。ファンに球場に足を運んでもらうには、現場とフロントが一体となることが重要ではないだろうか。 プロ野球の無料招待券(タダ券)をもらったことがある。昭和50年代の話だが、新聞販売員に「定期購買の契約してくれたら、後楽園球場のチケットを」と言われ、昨今も「取引先の部長がそっちの方に顔が利いて…」と、『無料招待券』と記された公式戦チケットを見せびらかされたことがある。 ひと昔前、パ・リーグの外野席は“タダ券のお客さんばかりだった”とも聞く。タダ券が悪いとは思わない。普段、あまり野球に興味のない人でも「タダなら球場に行ってもいい」と思うだろう。何よりも、その1回の観戦がプロ野球ファンになるきっかけとなり、また家族連れであれば、次世代の子供たちにも野球の楽しさをアピールできる。 しかし、プロ野球各球団がタダ券をバラ撒いて何年が経過しただろうか。その効果が表れないのは何故だろう…。この種の質問をすると、フロント職員が決まって返すのは「ゲーム内容や選手のスター性」である。間違ってはいない。では、プロ野球界の不況の責任は『現場』だけにあるのか? 2005年1月17日、『第1回 県立野球場建設促進委員会』(新潟市・NSGカレッジリーグ学生総合プラザ)を取材した。同委員会にはJリーグ・アルビレックス新潟のフロントスタッフも関係していた。アルビレックスのJ1昇格、観客動員数の新記録達成(当時)に加え、『新潟に県民球団を創る会』(04年10月6日会見)や、男子バスケのプロリーグ『bjリーグ』への参加などもあり、新潟が『総合スポーツ都市』として注目されたころでもあった。アルビレックスの池田弘代表取締役(会長)やそのスタッフによれば、J1昇格の04年、主催15試合・56万5336人の動員、03年のJ2時代のホーム動員数66万7447人(1試合平均3万人突破)は、タダ券を起爆剤にしたものだと話していた。 しかし、「どうぞ、ご自由に」と、単にばら撒いたのではない。もらった側にしても、最初の1回は好奇心で「行ってみようかな」と思うだろう。配布した無料チケットの利用者をリピーターに発展させるため、「どんな年齢層が、どの地域の人が、どんなグループなのか」など、集客分析にも役立てていたのだ。タダ券に番号を振っておけば、どの地域で配ったのか、どのグループ、会社に渡したのか、見当がつく。そして、その分析データをもとに、集中的にタダ券を撒く地域、年齢層が定め、また同時に「この地域からのお客さんが少ないから」と、新規ファン獲得のためのヒントにもしていた。 タダ券の利用者がリピーターになってくれるかどうかは、選手たちに掛かっているが、アルビレックスのフロントは『現場』と二人三脚での努力を続けた。フロントは次のプロジェクトも考えた。たとえば、ファン会員の募集だが、その特典を単純な年間フリーパス・チケットにはしなかった。ウィークデーと週末では客層も違って来る。土、日曜日は家族連れも多くなるので、『個人会員』と『ファミリー会員』とに分けてみた。クラブ側が会員にお願いしたのは、「特定の観戦回数に満たなければ、年度更新できない」ということだけ。会員自身がスタジアムに行けなければ、会員証は友人らに貸してもいいと言う(05年取材当時)。 タダ券はばら撒くだけでは意味がなく、撒いた後の方が重要なのである。 千葉ロッテの本拠地QVCマリンの玄関口でもあるJR海浜幕張駅前では、公式戦の行われる日の夕方、要職にあるフロント職員も街頭に立ってピーアール活動をしていた。その熱意に敬服した。プロ野球球団の多くは親会社からの出向職員でフロントが構成されている。個人的にはプロ野球界と自軍に愛着を持つ人なら、前歴は問題ではないと思う。 横浜ベイスターズの売却先としてDeNA社が浮上した際、「NPB加盟の資格」が議論の焦点となったが、ベイスターズを再建し、どうやって経営していくのかが1度も論じられていない。フロント職員の前歴、買収先企業の業務形態よりも、経営ビジョンを重要視すべきである。優勝チームが年間・観客動員数のトップにもなるとは限らない。どの球団のフロント職員も多忙なのは見て分かるが、職務内容を見直し、その優先順位を整理すれば赤字体質も解消できるのではないだろうか。(スポーツライター・美山和也)※本編は『誰も触れない スポーツ界光と影』(別冊宝島)にある「新潟に誕生!? プロ野球チーム」(美山和也著)を一部参考といたしました。
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スポーツ 2011年11月05日 17時59分
西田隆維のマラソン見聞録 第19話「マラソンシーズン真っただ中」
10月30日、大阪で初めて開催された『第1回 大阪マラソン』が開催。『東京マラソン』に追いつけ追い越せ、で始まった3万人規模(2万9163人)のビッグイベント、初回の出来は上々だったようだ。 その中で、特筆すべきは、僕と『オールスター感謝祭』(TBS系)で走った宇野けんたろうくんだ。彼は、『第1回 大阪マラソン』でマラソンを2時間37分5秒でこれまで猫ひろしさんが保持していた2時間37分43秒の芸能人記録を大きく更新。彼曰く「万年2番」だった彼がトップを奪取した格好となった。 宇野君は『オールスター感謝祭』の時、僕の横に着席。その際、よくランニングに関する会話をしたのを覚えている。 彼はマラソン(ランニング)に対する意識が高く『オールスター感謝祭』翌日も40キロ走を行うなど、独自の調整方法を実践。何としても「打倒・猫さん」が彼のモチベーションになっている事が沸々と窺い知れた。 今回の『第1回 大阪マラソン』では体脂肪率を3パーセントにまで落としたそうだが(本当だろうか?)、ここまでして記録にこだわる姿勢はある意味、立派。僕ではそこまで、こだわりを持てない。 まあ、宇野君には今後も頑張ってもらい、2時間30分切りを前提に鍛錬して欲しい。僕も鍛錬するので、そうなったら本当の意味で勝負してみても面白いかもしれない(尚、宇野君は高校まで陸上・長距離経験者で素人では無いのだ)。 さて11月に入った−−。今月、来月は多忙とはいえないまでもイベントが入っている。 まず1日は雑誌『ランニングスタイル』(出版)の取材。その後、6日は『全日本大学駅伝』のゲスト解説で伊勢路入り。駒大時代の同期で現・国学院大の監督を務めている前田康弘と共に大学生を見てくる。テレビと異なり制約が少ないラジオ(文化放送)での実況なので、少し志向を変えて面白い放送をしようと思う。ラジオでしか味わえない放送を心がける。興味のある方は是非、文化放送を聞いて頂きたい。 『全日本大学駅伝』が終わった後、13日は故郷の栃木・足利で開催される『足利尊氏公マラソン』のゲストランナーを同郷の世界的ランナー・渋井陽子と務める。渋井とは家族ぐるみの付き合いながら、交際はしていない。が、彼女とは腐れ縁で何かとつるんでいる。 ゲストランナーが終わった翌日には京都に飛び『日本体育協会』体育指導員の仕事で小学校へ。詳細は当連載で報告するが、こちらも軌道に乗ってきており、児童・生徒の指導も形になってきた。 20日の週も『体協』指導員の仕事が入っており、今度は福島へ飛ぶ。その週は以前、指導員の仕事で訪れた千葉・木更津の小学校にも「持久走大会」のスターターをお願いされており、そちらにも顔を出そうと思っている。よもや『体協』指導員がこれほどまで拡大するとは−−。1年前とは明らかに違っている。 12月に入ればゲストランナーの仕事2本と自らプロデュースした大会1本をこなすなど、毎週がイベント尽くし。 3日は『東京音響』さん主催の『音響マラソン』のゲストパフォーマー。スターターとストレッチなど、僕の「走りとは違う」一面を披露する。今回、この『音響マラソン』は『東京サマーランド』で初めて開催されるイベント。もしかしたら『東京サマーランド』が今後、ランニングイベントの聖地になる可能性もあるので、乞うご期待だ。 10日は、これまた『東京音響』さんが主催する『伊豆大島マラソン』にゲスト参加。実は3日も10日も土曜日の開催なのだ。土曜日といえば、唯一のレギュラー番組『週刊西田隆維』(FMたちかわ)の生放送日だ。当然、番組を飛ばす事など出来ない。3日は、番組が始まる直前まで『東京サマーランド』に滞在し、ぎりぎりでFM入り。10日は『週刊西田隆維』のアシスタント・竹口浩子さんが仕事の関係で伊豆大島入り出来ない事から、僕と僕の後番組を担当している『FMたちかわ』営業部長兼アナウンス部長・三谷啓子さんと大島からの生放送にチャレンジ。12時から13時までは僕がメーンで三谷さんはアシスタントに控えるが、それ以外は三谷さんメーン、僕がアシ(スタント)に徹し、『FMたちかわ』開局以来、初の試みである伊豆大島からの8時間(8時から16時まで)生放送に挑む。 当日、僕は10キロの部に携帯電話を持参、通話をしながら走る、という大胆な企画を遂行しようと思う。勿論、トップで走り景色を克明にレポートしようと思う。 18日は僕が初プロデュースするランニング大会『大江戸ロードレース』が東京・荒川の河川敷で開催される。まだ、募集中なので、興味のある人は『ランネット』でエントリーしてもらいたい。こちらの大会も三谷さんと共に盛り上げて行こうと思う。 今回は、宇野君の結果と僕の近況報告を綴らせてもらった。「走る」という事は、何も「こうでなければいけない」というカテゴリーはない。僕の活動(学校訪問とゲストランナーの融合)とスタンス(携帯電話持参でのランニング)に見れば、理解できると思うが…。どうか皆さん、マラソンシーズン真っただ中の今だからこそ、肩の力を抜き、根詰めないで欲しいと思う。<プロフィール>西田隆維【にしだ りゅうい】1977年4月26日生 180センチ 60.5キロ陸上長距離選手として駒澤大→エスビー食品→JALグランドサービスで活躍。駒大時代は4年連続「箱根駅伝」に出場、4年時の00年には9区で区間新を樹立。駒大初優勝に大きく貢献する。01年、別府大分毎日マラソンで優勝、同年開催された『エドモントン世界陸上』日本代表に選出される(結果は9位)。09年2月、現役を引退、俳優に転向する。9月3日スタートのラジオ番組「週刊 西田隆維(りゅうい)」(FMたちかわ)のメーンパーソナリティ。
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スポーツ 2011年11月04日 15時30分
アントニオ猪木がDREAMと大同団結! 大みそかに格闘技イベント「元気ですか!!」開催!
IGFプロレスリング会長のアントニオ猪木が、格闘技の灯を消さぬため、総合格闘技団体DREAMと強力タッグを結成する。 すでに、DREAMが12月31日にさいたまスーパーアリーナで恒例の大みそか興行を開催することは決まっていた。しかし、DREAMの運営母体であるFEGが死に体となったため、白羽の矢を立てたのが猪木だった。昨年大みそかの「Dynamite!!」ではエグゼクティブ・プロデューサーを務めた猪木が、今年はゼネラル・プロデューサーに就任し、「元気ですか!! 大晦日!! 2011」を開催する。「Dynamite!!」の商標権は第三者に移管しているといわれており、その名称は封印する。 同大会はDREAMとIGFが選手招へい、マッチメイク編成などで協力。参戦候補として、猪木プロデューサーは、K-1の代表的な外国人選手でもあったピーター・アーツやジェロム・レ・バンナらの名も挙げた。ヘビー級が主体のIGFと中軽量級が主体のDREAMとでは体重差の問題があるが、調整がつけば、対抗戦もあり得るという。 15時開始となる同大会では、カウントダウンイベントも行われ、全20試合程度、9時間を超えるロングラン興行となる。 気になるテレビ中継について、DREAM・笹原圭一イベントプロデューサーは「地上波、スカパー!と調整中」と語ったが、現状、地上波の紅白歌合戦の裏番組枠の獲得は厳しいところ。長年、「Dynamite!!」は大みそかの紅白裏番組として定着していたが、「元気ですか!!」は地上波におけるテレビ中継面では苦戦をしいられそうだ。(落合一郎)
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スポーツ 2011年11月04日 15時30分
創始者・石井和義氏が“中国マネー”でK-1再建へ
K-1が低迷するなかで、創始者がついに表舞台に復活した。 K-1創始者で正道会館宗師・石井和義氏(58)が、11月3日、中国・北京市内で会見を開き、新生K-1といえるFIKA(フェデレーション・インターナショナル・K-1・アソシエーション=国際K-1連盟)の設立を発表した。 FIKAは中国の投資グループ、陽光紅岩投資事業集団傘下の七星グローバルエンターテイメントと資本提携。潤沢な中国マネーをバックに、拠点を香港に置き、32カ国で予選会を実施し、世界最強を決めるトーナメントを開催する。新生K-1は競技性を重視するという。 すでに、FIKAはWAKO(世界キックボクシング団体協会)との開催協力で合意しており、WAKOに加盟する約110の国や地域団体を中心に、下部組織を立ち上げる。FIKAはサッカーのFIFA的な役回りを担うことになる。 新生K-1は来年から始動。ヘビー級(100kg以下)、ミドル級(70kg以下)、ライト級(70kg以下)の3階級で、来年4月までに世界32カ国で予選トーナメントを開催。各国の代表32選手による決勝トーナメントは、5〜6月に準々決勝、9〜10月に準決勝、10〜12月に決勝を行い、世界一を決する予定。 石井氏はプロレス、総合格闘技などのエンターテインメント性を参考にして、K-1を設立し、最大の人気格闘技イベントに急成長させた“やり手”。ところが、脱税容疑で02年末に逮捕され、すべての役職を辞任。K-1は03年からは、新たに設立されたFEG(谷川貞治社長)が運営してきたが、経営不振に陥っていた。石井氏はすでに服役し、罪を償っており、約9年ぶりの表舞台への復帰となる。 国内では不況、K-1ブランドの信頼低下、石井氏自体のイメージ等の問題から、疑問符も付くが、新生K-1は海外に活路を求める。かつて、らつ腕を振るった石井氏の手腕に注目が集まる。(落合一郎)
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スポーツ 2011年11月03日 15時30分
亀田興毅期待はずれ! 今回もまた“勝てる相手”と防衛戦!
亀田ジムは12月7日、大阪府立体育会館で年末恒例の「亀田祭り」を開催。同大会では、長男・興毅(24)、次男・大毅(22)、三男・和毅(20)が揃い踏みする。 3兄弟は11月3日、決戦に備え、フィリピン合宿に出発した。ここで発表されたのが、WBA世界バンタム級王者である興毅の同大会での対戦相手。興毅は同級12位マリオ・マシアス(26=メキシコ)と3度目の防衛戦を行うことが決まった。WBC世界バンタム級9位の和毅は、同級22位エドゥアルド・ガルシア(31=メキシコ)と世界前哨戦を行なう。この発表はまたもや、関係者、ファンを落胆させた。 これまで、亀田兄弟は「勝てる相手としか世界戦をやらない」と言われ続けてきた。現に興毅が昨年末に同王座を奪取後、防衛戦の相手に指名したのは、V1戦(5・7大阪)でランキング14位のダニエル・ディアス(ニカラグア)、V2戦(8・31日本武道館)でランキング8位のデビッド・デラモラ(メキシコ)と、ランク下位の無名選手。まさしく、“勝てる相手”をチョイスしてきた。 しかし、今年前半、興毅は「年末にビッグマッチをやりたい」と、「亀田祭り」での大物選手との対戦をぶち上げていた。5・7大阪でのV1成功後には、世界4階級制覇を達成したホルヘ・アルセ(メキシコ)との対戦を希望していた。「さすがに今回こそはビッグマッチ」と期待した向きは多い。ところが、決まった相手はランキング10位にすら入っていない選手。 大物選手との対戦にはビッグマネーが必要で、交渉が不調に終わるケースもある。ただ、それがかなわぬなら、せめてランキング上位選手と、マッチメイクしてほしいところだ。カード発表前の段階で興毅は「今回のメーンは大毅」と語っていたが、これは注目度の低いマッチメイクになることを暗示していた。大毅はWBA世界スーパーフライ級暫定王者、シンワンチャー・テーパリット(タイ)への挑戦を交渉中。2階級制覇を目指す大毅は、正規王者ではなく“暫定王者”への挑戦ということで、これまたいかにも亀田流。 スポーツライターのA氏は、「大物選手との交渉がまとまらないのは、やむを得ないにせよ、毎回勝てる相手とばかりやっていたのでは、さすがにファンも見放すのでは? 試合への興味がもてませんからね。これじゃ、(試合を放送する)TBSはドンドン、井岡(一翔)寄りになっていきますよ」と苦言を呈す。(落合一郎)
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スポーツ 2011年11月03日 15時30分
プロ野球球団は本当に儲からないのか(1) 「勝利」と「チーム存続」は両立しない?
かつて、「選手に金を使わず、身売りのことばかり考えている球団には辞めてもらう!」と吠えたプロ野球オーナーがいる。その発言から約2年後の2004年、大阪近鉄バファローズがオリックスブルーウェーブと合併した。新たに東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生したが、近鉄球団が事実上の消滅となった悲劇は、今もファンの心に残っている…。また、その合併劇の直後に福岡ダイエーホークスもソフトバンク社に買収された。 そして2011年の今、横浜ベイスターズが球団譲渡のカウントダウンに入った。プロ野球球団は本当に儲からないのか−−。 合併騒動が野球報道を選挙していた頃のことである。球団経営について調べようとすると、必ず1つの『壁』にぶちあたった。球団の収支出の実態が人為的に隠されているのだ。あくまでも当時の話だが、ヤクルトは親会社の化粧品部門と売上げを合計させ、阪神は本社の他レジャー部門と混合させていた。他球団も同様である。かといって、悪意があって隠していたのではないようだ。プロ野球興行は他のプロスポーツとは比較にならないほどさまざまな業種、大手企業と関連している。赤字経営の具体的な内情が暴露されれば、「負の連鎖」が始まっただろう。それを恐れていたのである。 だが、プロ野球チームの経営実態に関するデータを1例だけ入手できた。ダイエーホークスが観客動員数310万8000人を記録した2002年の経営実態だ。 310万8000人は当時、史上最多である。2003年3月期の売上げは約179億円。その収支内訳は『一般チケット収入』=約23億円、『年間予約席』=約33億円、『スーパーボックス』=約20億円、『飲食物販売』=約36億円、『広告看板』=約29億円、『放映料』=約9億円、『駐車場収入』=約5億円、『その他』=約24億円…。これに対し、支出は約176億円。内訳は『売上原価』=約32億円、『人件費』=約21億円、『水道光熱費』=約6億円、『参稼報酬』=約38億円、『キャンプ費用・遠征宿泊費』=約46億円、『その他』=約33億円…。 収支179億円に対し、支出176億円。<野球協約第36条の6>によれば、「30億円の加盟料を連盟に納めなければならない」とある。30億円を投資して、年間利益が3億円…。史上最多の観客動員数を記録しても、3億円の黒字にしかならないのか…。もっとも、本社事業における宣伝効果、自社製品のイメージ効果等を考えれば、「球団経営部門だけで損得勘定を出すべきではない」と、経営者や起業家は考えるという。 また、この数値を入手したとき、巨人との格差も考えさせられた。 ダイエーの『年間放映料9億円』。当時、巨人戦のテレビ放映料は『1試合1億円強』と報じられ、公式戦のほぼ全試合が中継されていた。02年のセ・リーグは140試合制。対戦チームにも何パーセントかは払っていたはずだが、当時はセ5球団が主催する巨人戦も全国放送されていた。巨人が対戦チームに払ったのと同じだけの額を受け取っていたはずだ。もっと大雑把に考えれば、「主催ゲーム数70×1億円強」の『テレビ放映料』が巨人に入っていたのではないだろうか。70億円強と、9億円…。ダイエーの『年間放映料9億円』は、地方テレビ局から支払われたものである。地域密着、地元球団として絶大な支持を受けていたのはダイエーの方である。99年の優勝・日本一を皮切りに、黄金時代を築く。戦力、観客動員数で巨人を追い抜いたものの、球団経営でつまずいたのは「テレビ放映料による格差だった」とも考えられる。 この支出金額にもナゾは多い。02年、プロ野球選手会がアンケート実施して発表した『球団別の選手総年俸』を見直してみると、ダイエーは約19億円(58選手)。『参稼報酬』とは選手総年俸を指す。球団が雇っている職員、アルバイトの給料は『人件費』の方で計算されている。『参稼報酬38億円』とあるが、選手会が発表した金額は約19億円である。38億円と19億円−−。残りの半分は? 外国人選手、王貞治監督(当時)以下コーチスタッフの年俸が19億円にプラスされるわけだが、それだけで2倍の38億円に達するだろうか。プロ野球選手の年俸とは、「推定」で報じられる金額よりももっと高いのかもしれない。 ダイエーグループはホテルなどの“福岡事情”による多額な借入金があり、球団を経営していた『株式会社ダイエーホークス』もその金利を負担し、「最終的には赤字になっていた」という。2000年代、「チームを強くすること」と「存続させること」は並び立たなかったようである。(スポーツライター・飯山満)※本編に出てきた収支出の数値は1千万単位を繰り上げています。あくまでもダイエー球団時代の数値であり、現在の福岡ソフトバンクホークスとは関係ありません。
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スポーツ 2011年11月02日 11時45分
ダルビッシュは米メジャー移籍せず日本ハム残留? その意外な理由
かねて、ポスティング・システム(入札制度)を利用して、米メジャーリーグ入りを夢見ているといわれているダルビッシュ有(25=日本ハム)。 昨オフはプライベートの問題(離婚問題)もあり、チームに残留したが、今オフ、その去就が大いに気になるところ。現時点でダルビッシュは、その意思を明らかにしていない。日本ハムは、メジャー移籍を希望した場合、本人の意向を尊重する方向で、あとはダルビッシュの判断次第ということになる。 ダルビッシュのメジャーでの評価は松坂大輔と同等と見られている。松坂はポスティングの結果、レッドソックスが入札に成功。当時のレートは1ドル=約117円で、西武には入札金の約5111万ドル(約60億円)という大金が転がり込み、松坂自身は総額5200万ドル(約61億円)で6年契約を結んだ。 日本ハムとしては戦力としてダルビッシュの流出は痛いところだが、松坂並みの入札金が入れば、球団経営が楽になり、あえて慰留はしない方針だ。 プライベートの問題も、いまだ解決していない状況だが、ここにきて、日本ハム残留に心が傾いてきたともいわれる。その理由はズバリ、“カネ”。為替レートは現在、異常な円高ドル安で、この相場が急激に円安へと向かうとは考えがたい。つまりは、円高が原因でダルビッシュが残留する可能性が出てきたという。 仮にダルビッシュがメジャーに移籍し、年俸1000万ドルで契約したとする。1ドルが約78円として、日本円では約7億8000万円となる。これが、松坂がメジャー入りした当時なら、約11億7000万円となっていたわけで、実に約4億円程度も目減りしたことになるのだ。 ダルビッシュの今季年俸は5億円(推定)といわれているが、日本ハムは残留した場合、7億円程度を考えているとも伝えられる。大社啓二球団オーナーは「あれだけの大エースが残ってくれるなら、10億円まで考える必要があるんじゃないか」とも語っている。年俸が日本と同等、もしくは日本以下であれば、わざわざ言葉や習慣が違う米国にまで渡る必要はないというわけだ。 ベテランのスポーツジャーナリストのA氏は、「円高の影響で、メジャーに行っても稼げないのが現状です。夢を追うのもいいですが、現実を見つめるのも大事。ダルビッシュは離婚問題も片づいていませんし、無理をしてまで行く必要もないでしょう。残留の可能性も出てきたんではないでしょうか」と語る。 あくまでも、夢を追ってメジャーに移籍するのか、現実を取って日本ハムに残留するのか、ダルビッシュの動向から目が離せなくなってきた。(落合一郎)
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スポーツ 2011年10月31日 11時45分
“ボクシング界のニュースター”井岡一翔に強力なライバル出現! 大みそかの紅白の裏はボクシング決戦へ
今年の大みそかのNHK「紅白歌合戦」の裏は、ボクシング決戦となりそうだ。 10月30日、テレビ東京で会見が開かれ、大みそかにボクシングのダブル世界タイトルマッチが開催されることを発表した。会場は神奈川・横浜文化体育館になる予定だ。 世界戦に臨むのはWBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(31=ワタナベ)と、WBA世界フェザー級10位の細野悟(27=大橋)。王座奪取後、3戦連続KO防衛中の内山は、同級暫定王者ホルヘ・ソリス(32=メキシコ)と王座統一戦。細野はWBA世界フェザー級王者のセレスティノ・カバジェロ(35=パナマ)に挑戦する。このダブル世界戦は同日に同局にてゴールデンタイムで生中継されることが決まった。 大みそかのボクシングといえば、正式な発表はまだなされてはいないが、“ボクシング界のニュースター”であるWBC世界ミニマム級王者・井岡一翔(22=井岡)が、大阪府立体育会館で2度目の防衛戦を行い、その試合をTBSがゴールデンタイムで放送することが内定している。テレビ東京はTBSと井岡に、真っ向勝負を挑む腹づもりだ。 ダブル世界戦を主催する大橋ボクシングジム・大橋秀行会長は「他局でも大みそか開催のウワサがあり、いよいよボクシングの時代が来た。なんで大みそかにボクシングをやらないのかとずっと思っていた。ボクシングで大みそかを変えたい」と意気込んだ。 数年前まで大みそかの紅白の裏は格闘技が定番だった。「Dynamite!!」(TBS)と「PRIDE」(崩壊=フジテレビ)が、視聴率争いでシノギを削った。日本テレビがアントニオ猪木プロデュースの「INOKI ボンバイエ」を放送し、実に3局が紅白の裏に格闘技を投入した年もあった。それももはや過去の話。今年は最も長く続いた「Dynamite!!」も消える見込み。 今後、ボクシング中継が大みそかの定番となっていくのか。それは、TBS、テレビ東京両局での数字いかんということになるだろう。(落合一郎)
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スポーツ 2011年10月30日 11時45分
ドラフト舞台裏でベイスターズ売却延期が! 加地隆雄球団社長が奔走
今年のプロ野球・ドラフト会議で会場がもっとも沸いたのは、北海道日本ハムファイターズの菅野智之投手(東海大)の入札がアナウンスされた瞬間である。だが、舞台裏では“切実な話”で持ちきりだった。横浜ベイスターズの買収問題についてだ。翌28日に予定されていた『球団譲渡』を承認する臨時取締役会の延期が、親会社・TBSホールディングスから発表されたからだ。その一方で、日本野球機構はDeNA社からの『参加申請』を受け取っており、関係各位は11月2日の臨時実行委員会、オーナー会議の準備にも追われていた。ドラフト会場の舞台裏ではこうした喧騒も見られたが、横浜ベイスターズ・加地隆雄球団社長の真摯な姿勢に感銘した。 この日、同社長は休養中の尾花高夫監督に代わって、1位入札選手の抽選クジを引くため、雛壇にも上がっている。とくに印象に残ったのは2度目の入札で(松本竜也=英明高)、巨人とかち合ったときだった。自身の抽選結果が『ハズレ』と分かるなり、左隣の巨人・清武英利GMに手を延ばし、ファンに巨人が『当たりクジ』を引いたことを会場のファンに伝えた。退く際も同GMよりも一歩下がって歩き、むしろ笑顔で自軍のテーブルに帰って行った。1位指名後の会見にも応じてくれたが、開口一番、「悔しいです」−−。その言葉に嘘はないだろう。しかし、その語り口はソフトで、ここまで自分の感情をコントロールできる人もなかなかいないと思った…。 この1年間、加地社長はペナントレースを戦う選手よりも厳しい日々を送っていたのではないだろうか。当たり前だが、昨年オフから続く球団買収問題の話を振ると、選手は露骨に嫌な顔をする。親会社・TBSホールディングスが球団売却の方向で関係各所と話を進めてきたのは紛れもない事実だが、その情報の全てがベイスターズに伝えられていたわけではない。加地社長も知らない話がいくつかあったという。 「球団の売却? 知っていたら、教えてほしい。本当はどうなっているんだ!?」 筆者も球団関係者から“逆取材”を受けたことがある。 なのに、同社長は選手たちの前に立ち、球団の今後を説明し、まるで自分に責任があるかのように頭を下げた。元電通マンで、TV制作プロ『C.A.L.』時代にドラマ『水戸黄門』を担当していた経歴は有名である。 球団社長の就任会見でも葵の御紋シールを自身のケータイに貼っていたので、報道陣からは印籠を出すポーズを要請されたが、個人的にはその直後の発言の方が衝撃的だった。 地元横浜高の「筒香嘉智を1位指名すべき」と公言したのもある。 当時、横浜スカウト陣は菊池雄星を指名する方向で調整していた。それを『鶴の一声』で一変させ、取材者の1人として、混乱する現場を目の当たりにしている。「ベイスターズは大丈夫だろうか」と批判的に見ていたが、この2年間の誠実な対応、そしてドラフト会場での紳士的な言動に、こちらの考えが間違っていたことに気づかされた。 「詳しくはいえないが、加地社長は古巣の電通を訪ね、独自の球団再生案を提示し、その協力を求めていました」(広告代理店幹部) この1年間、球団再生のために奔走していたことは皆が認めている。同広告代理店幹部によれば、加地社長は「喋り出したら止まらない人」だと言う。各方面に出向き、横浜経済、地域産業と野球をリンクさせるアイディアを語り、その協力を求め、頭を下げ続けていたそうだ。 ベイスターズナインが球団売却の危機にあっても動じなかったのは同社長の苦労を知っていたからだろう。 「球団売却の話はTBSホールディングスから一方的に報告がされるだけ。本当にこちらは何も分からないんです」(関係者) 失礼ながら、加地社長は少しお疲れのようにも見受けられた。ベイスターズの再生はもちろんだが、フットワークも軽く、真摯な氏の言動に敬意を表したい。(一部敬称略/スポーツライター・飯山満)
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スポーツ 2011年10月29日 17時59分
Jリーグ人気急落のなかで捨てたもんじゃないプロ野球人気
今やプロ野球に取って代わって国民的スポーツになりつつあるサッカーだが、Jリーグは急激な人気下落にあえいでいる。 今季Jリーグの観客動員(J1のみ集計)は、30節を終えた時点(10月23日現在)で、417万8129人で1試合平均1万5475人。昨季は1試合平均1万8428人で、現時点で前年比17%も減少した。これには、東日本大震災の影響もあるだろうが、人気チームの浦和レッズが成績不振により、前年比16.7%減と大きく動員を落とすなど、さまざまな要因を含んでいるようだ。 公式戦全日程を終えた一方の雄であるプロ野球は、セ・リーグが1179万2344人(1試合平均2万7297人)で前年比4.2%減少。パ・リーグは977万7852人(1試合平均2万2634人)で前年比0.6%減とほぼ横ばい。両リーグ全体でも微減にとどまった。 チーム別に見ると、プラスに転じたのは、セでは終盤まで首位を走ったヤクルトのみで前年比1.2%増。パでは2年連続優勝のソフトバンクが6%増、被災地でもある楽天が2.3%増で、増加したのは3チームのみ。 他のおもなチームでは、2年連続優勝の中日が2.2%減、巨人が8.4%減、7年連続リーグ動員トップの阪神は3.6%減。パでは昨年日本一ながら最下位に甘んじたロッテが13.8%減と大きく落とした。 今季は震災の影響で開幕当初、東北、関東では電力不足の影響でナイターを自粛し、平日にデーゲームを行ったり、地方での開催に変更するなどの措置もあり、多少の観客動員の減少はやむを得ないところ。むしろ、前年比でプロ野球全体が微減ですんだのは、良かったともいえる。 昨季にもまして、今季は地上波でのテレビ中継は激減。もはや、プロ野球はBS、CSで見る時代となった。報道番組での日本のプロ野球の取り上げ方も、著しく悪くなった。それを思えば、まだまだプロ野球の人気自体は健在で、捨てたもんじゃないようだ。(落合一郎)