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プロ野球球団は本当に儲からないのか(1) 「勝利」と「チーム存続」は両立しない?

 かつて、「選手に金を使わず、身売りのことばかり考えている球団には辞めてもらう!」と吠えたプロ野球オーナーがいる。その発言から約2年後の2004年、大阪近鉄バファローズがオリックスブルーウェーブと合併した。新たに東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生したが、近鉄球団が事実上の消滅となった悲劇は、今もファンの心に残っている…。また、その合併劇の直後に福岡ダイエーホークスもソフトバンク社に買収された。
 そして2011年の今、横浜ベイスターズが球団譲渡のカウントダウンに入った。プロ野球球団は本当に儲からないのか−−。

 合併騒動が野球報道を選挙していた頃のことである。球団経営について調べようとすると、必ず1つの『壁』にぶちあたった。球団の収支出の実態が人為的に隠されているのだ。あくまでも当時の話だが、ヤクルトは親会社の化粧品部門と売上げを合計させ、阪神は本社の他レジャー部門と混合させていた。他球団も同様である。かといって、悪意があって隠していたのではないようだ。プロ野球興行は他のプロスポーツとは比較にならないほどさまざまな業種、大手企業と関連している。赤字経営の具体的な内情が暴露されれば、「負の連鎖」が始まっただろう。それを恐れていたのである。
 だが、プロ野球チームの経営実態に関するデータを1例だけ入手できた。ダイエーホークスが観客動員数310万8000人を記録した2002年の経営実態だ。
 310万8000人は当時、史上最多である。2003年3月期の売上げは約179億円。その収支内訳は『一般チケット収入』=約23億円、『年間予約席』=約33億円、『スーパーボックス』=約20億円、『飲食物販売』=約36億円、『広告看板』=約29億円、『放映料』=約9億円、『駐車場収入』=約5億円、『その他』=約24億円…。これに対し、支出は約176億円。内訳は『売上原価』=約32億円、『人件費』=約21億円、『水道光熱費』=約6億円、『参稼報酬』=約38億円、『キャンプ費用・遠征宿泊費』=約46億円、『その他』=約33億円…。
 収支179億円に対し、支出176億円。<野球協約第36条の6>によれば、「30億円の加盟料を連盟に納めなければならない」とある。30億円を投資して、年間利益が3億円…。史上最多の観客動員数を記録しても、3億円の黒字にしかならないのか…。もっとも、本社事業における宣伝効果、自社製品のイメージ効果等を考えれば、「球団経営部門だけで損得勘定を出すべきではない」と、経営者や起業家は考えるという。

 また、この数値を入手したとき、巨人との格差も考えさせられた。
 ダイエーの『年間放映料9億円』。当時、巨人戦のテレビ放映料は『1試合1億円強』と報じられ、公式戦のほぼ全試合が中継されていた。02年のセ・リーグは140試合制。対戦チームにも何パーセントかは払っていたはずだが、当時はセ5球団が主催する巨人戦も全国放送されていた。巨人が対戦チームに払ったのと同じだけの額を受け取っていたはずだ。もっと大雑把に考えれば、「主催ゲーム数70×1億円強」の『テレビ放映料』が巨人に入っていたのではないだろうか。70億円強と、9億円…。ダイエーの『年間放映料9億円』は、地方テレビ局から支払われたものである。地域密着、地元球団として絶大な支持を受けていたのはダイエーの方である。99年の優勝・日本一を皮切りに、黄金時代を築く。戦力、観客動員数で巨人を追い抜いたものの、球団経営でつまずいたのは「テレビ放映料による格差だった」とも考えられる。
 
 この支出金額にもナゾは多い。02年、プロ野球選手会がアンケート実施して発表した『球団別の選手総年俸』を見直してみると、ダイエーは約19億円(58選手)。『参稼報酬』とは選手総年俸を指す。球団が雇っている職員、アルバイトの給料は『人件費』の方で計算されている。『参稼報酬38億円』とあるが、選手会が発表した金額は約19億円である。38億円と19億円−−。残りの半分は? 外国人選手、王貞治監督(当時)以下コーチスタッフの年俸が19億円にプラスされるわけだが、それだけで2倍の38億円に達するだろうか。プロ野球選手の年俸とは、「推定」で報じられる金額よりももっと高いのかもしれない。

 ダイエーグループはホテルなどの“福岡事情”による多額な借入金があり、球団を経営していた『株式会社ダイエーホークス』もその金利を負担し、「最終的には赤字になっていた」という。2000年代、「チームを強くすること」と「存続させること」は並び立たなかったようである。(スポーツライター・飯山満)

※本編に出てきた収支出の数値は1千万単位を繰り上げています。あくまでもダイエー球団時代の数値であり、現在の福岡ソフトバンクホークスとは関係ありません。

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