京都府笠置町は人口1040人で高齢化率約56%。昨年10月に町議選が行われた際、告示日に定数と同じ8人から届け出があり、無投票当選となった。ただ、告示1週間前は立候補予定者が5人しかいなかった。その後、新人3人が届け出したが、いずれも現職の家族や親戚だった。笠置町議会の関係者は「30人ほど声をかけたが全員に断られ、やむにやまれず親戚に声をかけた」と話す。
では、なぜ議員のなり手がいないのか。笠置町の場合、年間の議員活動は125日程度で、議員報酬は月17万円(手取り約14万円)だという。会社勤めとの兼任は難しく、議員専業だと収入的に難しいのが理由の1つだという。
笠置町が特殊な例なのかと言えば、決してそんなことはない。2023年の統一地方選挙では、30%超(123町村)の町村議会議員選挙が無投票となった。うち20町村で候補者が定員に満たない定数割れになっている。この傾向は統一地方選挙を重ねるたびに上昇している。
道府県議会議員選挙も町村議会ほどではないものの、無投票当選は増加傾向にある。現職が圧倒的に強い選挙区では無投票になりやすい傾向がある。大阪府の倉田哲郎元箕面市長は「首長は強大な権限を持っており、決めようと思えば何でも決められるので暴走する可能性もある。議会のチェック機能が非常に大切」と話す。
なり手不足解消の解決策はいくつかある。まず、出産・育児・介護で出席が困難な議員は、委員会へのオンライン出席を認めることだ。2つ目は夜間や休日の議会開催により、平日昼間に働いている人が出席しやすくする。これには住民の傍聴をしやすくする効果もある。
番組コメンテーターの菊間千乃弁護士は「定数割れしている自治体は、その定数が適正なものなのか議論の必要がある」と指摘。地方を中心に人口減少が止まらず、市町村合併で効率化するしかないのではないか。
雑誌「フォーサイト」元編集長の堤伸輔氏は「根本的な原因は投票率が低いこと、無関心だ。投票に行かないのに議員になろうという人はいない」とコメントした。
2023年統一地方選挙の平均投票率は、道府県議会議員選挙で41.85%、政令指定都市の市議会議員選挙で43.92%と過半数に満たない。地方自治への関心の低さが深刻な問題となっている。