社会
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社会 2017年02月25日 14時00分
海外の爆売れに乗り遅れるな 日本酒・緑茶業界アピール合戦の熾烈
ここ数年、日本茶と日本酒の輸出の伸びが著しい。財務省の貿易統計によれば、緑茶の輸出額は115億円で2010年の約3倍、日本酒も155億円で7年連続増加の一途をたどる。 お茶の生産団体などが加盟する公益社団法人『日本茶業中央会』などが会員の日本茶輸出促進協議会(東京都港区)事務局は、その背景をこう分析する。 「最大の輸出国はアメリカで50%前後を占めるが、そのアメリカを中心に欧米でヘルシー志向が強まったことが大きな要因。抹茶を使用した抹茶カフェやアイスクリームなどの海外人気も高くなり、需要が急増しているためです」 日本茶の輸出は戦後、飲料水の多様化もあって減少し、'91年に253トンと底をついた。その後は徐々に増加して2005年には1000トン、'10年には2200トン、'15年に4100トンまで増加。お茶輸出振興の旗振り役の農林水産省・食料産業局輸出促進課の担当者も、その背景をこう分析する。 「'13年に“和食”がユネスコの無形文化財になったことも大きい。和食にはお茶、そして日本酒ですからね。そうした意味で和食がさらに拡大すると思いますので、お茶と日本酒の今後の伸びシロはさらに期待できます。国では'20年までに農産物も含め総額1兆円輸出プロジェクトを掲げていますので、さらにPRに力を入れていきます」 ここで断っておくが、「お茶の輸出増」という「お茶」は、あくまで純粋な茶葉に限ってのもの。そのため農林水産省の関係者は、こうも言う。 「茶葉だけでは100億円程度だが、お茶をペットボトルにしたもの、つまり清涼飲料水の分野まで入れると、裾野は限りなく拡がります。実際、海外の人たちに言わせれば、日本のお茶はペットボトルも含めて見ていることが多いし、和食にお茶のペットボトルという組み合わせもよくあります」 ペットボトルのお茶と言えば、トップメーカーは伊藤園だ。同社の海外での評価はすこぶる高く、消費量も年々上がっているという。昨年、同社は米経済誌『フォーチュン』の、“社会に変革をもたらした企業”として、日本企業では最高位の18位に挙げられた。 伊藤園の広報部担当者はこう語る。 「海外への輸出額は年々増加していますが、特に伸長率が高いのは抹茶製品で、'16年におけるアメリカへの抹茶製品の輸出は、前年比約2倍になっています。また、シリコンバレーでは地道な営業活動を行い、ある企業では『お〜いお茶』が毎月3000ケースも飲用されるなど、現地IT企業の中ではブームを起こしています。理由は、緑茶は無糖飲料で健康的な点。しかも、水とは違うナチュラルな風味があるとして人気が高まったことが挙げられます」 海外での緑茶はティーバッグが主流。そのため緑茶本来の美味しさが知られていない場合も多い。そこで、一部企業では製法に工夫し、うま味成分や渋味成分が急須で入れた濃度と同等になるドリップ式の緑茶を開発、人気が高まっているという。また、抹茶のように粉末タイプの健康茶を開発した企業や、オーガニック茶で攻勢をかけるところもある。 一方の日本酒はどうか。 経産省所管の日本貿易振興機構(JETRO)の日本酒輸出担当部局関係者が説明する。 「日本酒の輸出は毎年10%前後ずつ伸びています。酒蔵さんの努力があり、これを官がバックアップして実を結び始めたのです。さらに、世界各地でのプロモーションも大きい。世界のワイン品評会であるIWCに'07年、日本酒の世界一を決めるSAKE部門が設けられ、一流ソムリエに理解され始めたのです」 酒造メーカーでは、例えば、今や日本酒好きなら誰もが知る純米大吟醸酒『獺祭』を醸造する旭酒造(山口県岩国市)は、海外22カ国に販路を広げ、輸出は売上の10%にも上る。将来の世界市場の目標を50%と定め、さらに輸出、海外直営店の展を拡げる。 「加えて旭酒造は、ユダヤ教徒が口にできる清浄食品基準『コーシャ』を日本酒として初めて獲得。全世界に広がる巨大なユダヤ市場も射程に入れました」(日本酒メーカー関係者) この『コーシャ』認証取得には、玉乃光酒造(京都市)、南部美人(岩手県二戸)なども続く。また、直営店経営では月桂冠(京都市)も共同でロンドンに高級居酒屋を展開している。 兵庫の日本盛(西宮)の広報担当者も、海外戦略についてこう明かす。 「香港、シンガポールなどアジアに積極的に輸出を展開します。人気の純米大吟醸もいいんですが、今後は独自商品、缶入り生原酒販売で売り上げ増を目指します」 国内市場が先細る中、各メーカーは質の向上を目指してシノギを削るとともに、世界に打って出る!
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社会 2017年02月24日 10時00分
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第57回
総理大臣に就任、「日本列島改造計画」の推進、実施に踏み切ったが、結果、土地と物価の高騰を招き、計画そのものの中止をやむなくされた苦境の田中角栄だったが、メゲることなく政権浮揚策を外交に求めた。昭和48年9月26日、16日間の日程でフランス、イギリス、西ドイツ(現・ドイツ)、ソ連(現・ロシア)への外遊に出発したのである。 田中は、「大名行列はやらない。カバン一つ、同行は秘書官とSPだけで十分。それで列強と交渉する」と意気込みを語っていた。その狙いは「資源外交」で、仏では原子力発電所のためのウラン濃縮工場に関する共同声明を発表。英と西独ではそれぞれ北海油田の共同開発と原発の共同開発に関する合意文書を交わした。 次いで向かったのが、鳩山一郎に次ぐ戦後2人目の首相としての訪問となるソ連であった。ここでは、同行記者のこんな証言がある。 「モスクワ入りする前、田中は言っていた。『シベリア開発には協力するが、狙いは一つ、“北方領土(歯舞、色丹、択捉、国後)”の返還だ。他のテーマは話す気はない』と。ちなみに、経済協力としてのシベリア開発では、田中らしい知恵が働いていた。シベリアには多くの風倒木寸前の樹木があり、これを日本の木材価格の3分の1くらいで引き取り、それを国内の住宅建設に使おうとしていた。結局、交渉相手のソ連のトップ、ブレジネフ書記長が北方領土問題で言を左右して時間がかかり、“木材買い付け”話まではいかなかったが」 その北方領土返還交渉は、相手がなにしろタフ・ネゴシエーター(強力な交渉者)として鳴るブレジネフだけに難航した。 そもそもこの問題は、日本側が昭和31年10月に時の鳩山一郎首相らを全権とし、「戦争状態の終結」「外交関係の回復」をはじめ「平和条約締結のための継続交渉、並びに条約締結後の歯舞・色丹両島の日本への引き渡し」など10項目をソ連側と署名した「日ソ共同宣言」に端を発する。 しかし、その後、ソ連側は平和条約締結を逡巡、北方領土返還交渉は暗礁に乗り上げたままになっている。 昨年暮れ、安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領との首脳会議で返還交渉に意欲を示したが、プーチンは歯牙にもかけず帰国してしまったのは読者諸賢にも記憶に新しいところだろう。 さて、田中とブレジネフ書記長との交渉は「火の出るようなやりとりだった」と、前出の同行記者は続ける。ブレジネフは日本側の経済協力問題には応じるが、いざ田中が領土問題に入ろうとすると、すぐ話題をそらしてしまうのだった。 「田中はソ連滞在中、イラ立ちを隠さず度々ウオッカをあおっていた。共同声明を出す最後の首脳会談は、凄まじい応酬だった。田中は共同声明に『“領土”の文言を入れないなら経済協力は無理、声明を出さずに帰国するッ』と迫る一方、日本側の案である『第2次大戦からの未解決の問題を解決して平和条約を締結したい』と畳み掛けた。ところが、ブレジネフもさる者、“問題”の意味が領土問題に絞られると警戒、“諸問題”とせよと切り返してくる。“諸問題”なら経済協力問題を含むとの言い分だったようだ。そこで、田中は求めた。『分かった。それでは“諸問題”で結構。それなら、“諸問題”に領土返還問題も含まれていると解釈したい。それでよろしいかッ』と」 ついにブレジネフは田中の迫力、粘りに根負けしたか、「領土」の文言を入れることは最後まで拒否したが、「諸問題」とした中に、「領土」が含まれていることを口頭で了解したのだった。結果、共同声明は、「双方は第2次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが両国間の真の善隣友好関係に寄与することを認識し…」などとなったのである。 以後、先の安倍・プーチン会談を含め、歴代のわが政権は平和条約締結、北方領土返還問題にチャレンジしたが、この田中・ブレジネフ間の共同声明から40年以上経過しているにもかかわらず、1ミリたりとも進展、成果を見せていない。田中以後の歴代政権の“腕力”の乏しさも、また見ざるを得ない。 さて、ソ連訪問でいささか成果を得たとの認識だった田中は、年が明けた昭和49年1月、改めて「資源外交」を秘めた親善外交としてのASEAN(東南アジア諸国連合)国のフィリピン、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア5カ国歴訪に出た。しかし、当時の日本の経済進出に対する不満は各国に渦巻いており、「さっさと帰れ、エコノミック・アニマル!」などのシュプレヒコールを浴びるなど散々、歴訪は完全にウラ目に出たのであった。 加えて、窺っていた内閣の第2次改造もできる状態になく、前年から患っていた顔面神経炎も治らずで顔もヒン曲がってしまった。さすがに、田中も弱音を吐いた。「顔が曲がったのは神のおぼしめしかな。前世の宿縁というものかねぇ…」 その内憂外患の田中に、もう一つの暗雲が忍び寄っていた。「金脈」追及というぶ厚い雲が“豪雨”を伴っていることを田中はまだ知らなかった。(以下、次号)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材46年余のベテラン政治評論家。24年間に及ぶ田中角栄研究の第一人者。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書、多数。
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社会 2017年02月23日 14時00分
開始前からシラけムード漂う「プレミアムフライデー」
経済産業省が旗振り役となり2月24日からスタートする『プレミアムフライデー』は、月末の金曜日15時に業務を切り上げ、夕方からショッピングや食事、旅行やレジャーを楽しもうという取り組みだ。 「この施策は、推進協議会に日本百貨店協会や日本チェーンストア協会などの小売業界団体が名を連ねていることからも分かる通り、何とかして個人消費を喚起しようというものです。しかし、効果は一時的と見る向きが多い。そもそも金曜日の午後3時に社員が退社できる環境にある企業が、世の中にどれだけあるのか。さらに言えば、退社時間17時の企業がわずか2時間早く退社しただけで消費が高まるとは思えません」(経済誌記者) 限られた小遣いでやりくりする多くのサラリーマンにとっては、早く帰宅して家で夕食を食べて過ごす人がほとんどかもしれない。 「本当に飲食店や小売業界に対する消費を上げたいのであれば、2000年から始まった“愚策”だったハッピーマンデー制度を廃止し、祭日の分散を元に戻すことです。サラリーマンにとっては“休みになる前日”を増やしてもらう方がありがたい。『心置きなく飲める』など、居酒屋を中心とした飲食業などにとってはメリットが大きく、即効性が期待できます」(同) ハッピーマンデーが施行された頃は、観光業の衰退が問題視されていた時期。3連休を増やすことで国民が旅行をする機会を増やしたいという国の意向があった。しかし、今やどの街も外国人観光客であふれ、宿泊施設は満杯だ。もう賞味期限が切れた法律であることは言うに及ばない。 「アベノミクスで賃金を上げると息巻いた安倍政権も5年目に入った。にもかかわらず、意図した賃金上昇は実現していない。だから、『時間だけは与えてやる』で、ごまかそうとしているのでは」(経済アナリスト) 最初からシラけた雰囲気が漂うのもムリはない。
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社会 2017年02月23日 10時00分
わずか4年で党本部“再お引っ越し” 追い込まれた社民党の断末魔
党勢低迷から抜け出せない社民党が、またもや党本部を移転する。同党は2013年、国会近くの旧党本部から、首相官邸裏手のオフィスビルに移転したばかり。わずか4年での再引っ越しとなるが、何が起こっているのか。 「そもそも今の党本部が分不相応なんですよ」と吐き捨てるように語るのは、党関係者。現在の党本部はビルの2フロア分で、党首室や会議室、職員室など約700平方メートル。賃料は年間約4500万円に及ぶ。確かに所属国会議員4人の小政党にしては過ぎた佇まいだ。 「職員の間では旧本部からの引っ越しの際、こんなに高家賃で大丈夫か、との不安の声もあったが、メンツにこだわる幹部が押し切った。そもそも旧本部が老朽化して改修費用を負担できないから移転を余儀なくされたのに、現本部は内装を一新して事務机も椅子もすべて新調する大盤振る舞い。つまるところ、野党第一党時代の意識が抜けていないんです。それで再引っ越しなんて、物笑いのタネですよ」(同) 5月までに、現在の家賃の3分の1以内の物件に移転する方針だが、新本部探しは難航しているという。 「一度は色よい返事をもらった物件でも、オーナーが社民党と知って掌返しで断られたケースもあったとか。都内に限らず、担当者は新横浜まで当たったそうですよ。どこまで“都落ち”するのやら」(同) 党財政はまさしく火の車だ。吉田忠智党首も落選した昨年の参院選惨敗を受け、'17年度の政党交付金は前年から4600万円も少ない約3億9500万円まで落ち込む見通し。別の党関係者からも、「このままでは'17年度中の資金ショートが現実味を帯びる。年内の解散総選挙が必至なのに一体どうするのか」との声も聞こえてくる。 「党職員から早期退職も募っている。地方組織代表の交通費や宿泊費を減らすため、毎週開いていた常任理事会も2月から隔週開催にしたのに、吉田さんは何かにつけて地元大分県から上京したがって担当者は頭を抱えている。少し静かにしていてほしい」(同) 老舗政党の悲しき実情。
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社会 2017年02月22日 14時00分
米中「貿易戦争」が引き起こす第3次世界大戦という最悪のシナリオ
「ベリー ベリー ベリー グッド ケミストリー(抜群の相性だ!)」とまで言い、握手嫌いにもかかわらず19秒間という異例の長さで自ら手を差し伸べた米トランプ大統領。なぜ、ここまで安倍首相を厚遇するのだろうか。「安全保障」と「経済」を密接に絡ませ合ったパートナーシップが確立し、中国つぶしで一致したからなのか…。 トランプ政権が対中国強硬策にかじを切るのは、閣僚の顔ぶれを見れば明らかだ。新設された国家通商会議の代表には、ピーター・ナバロ氏が起用された。同氏は『中国による死』などの著作で知られる筋金入りの親台湾反中国派だ。また通商代表部代表に起用されたロバート・ライトハイザー氏も、中国製鉄鋼材のダンピング(不当廉売)輸出を批判するなど対中強硬派として知られる。今後、トランプ政権の通商戦略はこの両氏が司令塔となって進められることから、米国が中国つぶしに取り掛かることは必然的な流れだろう。 「他にも政権内部にはカルテルやトラスト、コンツェルンという独占活動を規制する反トラスト法の専門家が多く入っており、すでに中国企業のM&A(合併・買収)が頓挫するケースが増えています」(在米日本人ジャーナリスト) 在米華人は約450万人、このうち220万人が有権者だ。祖国からの不法移民の急増で、彼ら正統な移民が就労の機会を奪われており、こうしたことからこれまでの民主党支持を捨て、トランプを支持した。しかし、中国と米国の対立構造が顕著になると、彼らの立ち位置は微妙になる。 「台湾を中国の一部と見なす『一つの中国』の見直しを表明するなど、トランプは各方面から中国を揺さぶっています。2月9日に習近平国家主席と電話会談を行い、この原則を尊重するとは言ったようですが、昨年末に駐中国大使に任命したブランスタド・アイオワ州知事の顔を立てたにすぎません。同氏は習主席と親交があり、『旧友』と呼ぶくらいの仲ですからね」(同) 一方、中国の内憂は何と言っても経済の衰退だ。1月13日、中国税関当局は2016年の貿易統計を発表したが、輸出額は前年比7.7%減、つまりこれまで中国の高度成長を支えてきた「輸出」という柱が大きく棄損しているのだ。 「中国は国家運営の根幹となる穀物輸入を米国に頼っており、輸出がマイナス成長となると虎の子である外貨準備高は見る見るうちに減っていき、国家運営がうまく機能しなくなる恐れがあります。そして、沿岸地域の労働密集型の輸出向け産業は破滅的な打撃を受けて倒産が広がり、失業者が溢れるようになる。トランプは『中国を為替操作国に指定する!』『中国製品に45%の報復関税を課す!』と公約しており、中国は自由経済と計画経済の“いいとこ取り”をする形で国際社会における存在感を拡大してきたので、その歩みはストップせざるを得ない。約50%と最大の輸出相手国である米国が本格的な“通商戦争”を仕掛ければ、貿易への大打撃という外患と経済の衰退に加え、習近平主席vs李克強首相という権力闘争激化の内患が加わり、かつての日米間以上に激しい貿易・経済摩擦に耐え切れず、中国は第3次世界大戦、いわゆる世界経済戦争での敗北を余儀なくされる。もちろん、中国とは切っても切れない関係にある日本も無傷では済みません」(国際情勢に詳しいジャーナリスト) 中国製品は日本の部品を組み立てているにすぎず、日本製や韓国製のような付加価値や優位性はない。中国製品を選ぶ理由は低価格だけだが、そこに公約通りに45%の関税が課せられれば、中国経済は即座に“昇天”だ。 「昨年末、経済産業省はWTO(世界貿易機関)の『市場経済国』に中国を認めない方針を発表しました。日本と同様に米国やEUも認めていないため、日米欧は不当に安い価格で輸出される中国製品に対して、反ダンピング措置を取りやすい体制を整えたわけです。日米欧は、あらゆる手段で中国の競争力を奪う方向に向かっているのです」(経済アナリスト) あえて言えば、トランプ政権内における中国の味方は唯一、長女のイヴァンカさんしかいない。 「彼女は2月1日、ワシントンの中国大使館で開かれた旧正月を祝うパーティーに娘のアラベラちゃんと参加し、京劇を楽しみました。まだ5歳のアラベラちゃんに中国語を習わせるほどの中国シンパです。一方、習主席に近いアリババのジャック・マー会長もトランプと会い、米国内に10兆円の投資と100万人の雇用を生み出す約束をしています。ソフトバンクの孫正義社長が5兆円投資なら、アリババは10兆円というわけです。トランプ大統領は、孫社長と同様にマー会長との会談のときも、わざわざ記者団に『マーは偉大な実業家』と誉めちぎっています。米国の世論軟化を狙ったパフォーマンスにすぎませんが、孫社長もマー会長も、そして安倍首相も、トランプ大統領にとっては飛んで火に入る夏の虫かもしれません」(外交関係者) いくら安倍首相をヨイショしようと、トランプ大統領の「雇用を外国から取り戻す!」という“公約”が変わるわけではない。 TPPに取って代わる日本との自由貿易協定の締結を視野に、自動車貿易や為替の分野で厳しい要求を突き付けられる恐れが消え去るわけではないのだ。
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社会 2017年02月22日 10時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 核心に迫る日本批判
トランプ大統領が、ついに核心に迫る日本批判を始めた。 1月31日、米国の大手製薬会社幹部との会談のなかで、「他国は、通貨やマネーサプライ、通貨の切り下げを利用し、我々より優位に立ってきた。中国をみてみろ。日本がこの数年でやってきたことをみてみろ。彼らは何年にもわたって通貨を切り下げ、市場を操ってきた」と、中国や日本の金融政策を批判し、米国の製薬会社が被害を受けているとしたのだ。 この日本批判に対して安倍総理は、2月1日の衆院予算委員会で、日本が為替を操作したという事実はなく、金融緩和について「2%の物価安定目標に到達するために適切な金融政策を日銀に委ねている」と述べている。加えて、日銀の黒田東彦総裁も「物価安定のために金融緩和を進めることは、G20各国もすべて了解している」と、為替操作を否定した。 このポイントは、トランプ大統領が円安を批判したのではなく、日本の金融政策自体を批判したところにある。 金融緩和をすれば、通貨安がもたらされるというのは、経済学の教科書にも書いてある“常識”だ。しかし、それを公の場で言ってはいけないという不文律がある。もし、それを公式に認めてしまうと、各国が自国通貨の供給をどんどん増やし、通貨安に誘導する“通貨安競争”を招いてしまうからだ。通貨安競争の先には、世界インフレが待っている。 もちろん、安倍総理も金融緩和を進めれば、円安になることは当然分かっている。分かっているからこそ、金融緩和を頑なに拒んできた日銀の白川方明前総裁の任期切れと同時に、金融緩和派の黒田総裁を任命したのだ。 だから、トランプ大統領の主張は筋が通っているといえば通っているのだ。ただし、安倍総理はここで譲ることはできないだろう。金融緩和は、アベノミクスの根幹となる基本政策だからだ。 リーマンショック時を基準に日米の資金供給量(マネタリーベース)の動きをみると、一貫して米国のほうが金融緩和の度合いは大きかった。そのため、民主党政権末期には1ドル=70円台という円高になってしまったのだが、日銀が黒田体制になってから、急激に日本の資金供給が増えていく。そして、一昨年末に米国がゼロ金利解除をすると、米国の資金供給が横ばいから減少に転じたため、昨年には、ついに日本の資金供給が米国を抜いてしまったのだ。 つまり、トランプ大統領の日本批判は、「子分の分際で親分を抜くとは何事か」ということなのだ。 これにより安倍総理は、難しい立場に立たされた。もし、ここで金融引き締めに転ずれば、アベノミクスは崩壊し、日本はデフレに逆戻りだ。だから、結局のところ、トランプ大統領に生贄を渡して、金融緩和を継続させてもらう可能性が高いのではないか。 しかし、そうなると牛肉やコメなどの日本の農産物を犠牲にするとか、米国から大量の武器を購入するとか、日本の医療や保険を米国に開放するなどといったことが避けられない状態になる。 最終的に、日本の国民生活が厳しくなることは確実だろう。
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社会 2017年02月21日 14時00分
東京・足立区騒然! 鳥インフルエンザ検出でヒト感染への恐れ
ついに東京都足立区へも感染が拡大した。2月3日、同区内の住宅街で回収されたオナガガモ1羽の死骸を遺伝子検査した結果、A型の鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出たという。都内で鳥インフルエンザが確認されたのは2年ぶりのこと。感染を防ぐため、上野動物園や多摩動物公園では鳥類展示を中止するなど、波紋を呼んでいる。 「鳥インフルエンザは1、2年のうちにパンデミック(世界的流行)するかもしれないし、明日なっても不思議ではない状況にあります」 こう警告を鳴らすのは、インフルエンザの事情に詳しい元小樽保健所所長で医療ジャーナリストの外岡立人氏だ。 「鳥インフルエンザにも様々な種類がありますが、お隣の中国には世界中の鳥インフルエンザウイルスがいる。言葉は悪いが、鳥インフルエンザの再生工場の趣を呈しているのです。現在、中国でもの凄い勢いで広がっているのが、H7N9のタイプで、2013年に出てから感染者が倍増した。しかも、致死率40%という驚くべき毒性がある。もし、こんなものがパンデミックになったら、人類の滅亡の恐れさえあります」 1918年から翌年にかけ、アメリカを発生源としたインフルエンザのスペイン風邪は、爆発的に流行し、全世界で感染者5億人、死者5000万人から1億人という被害をもたらしたが、今はその時以上の危険を孕んだ状況なのだ。 「このまま行けばパンデミックもあるなと心配していたら、H5N6型の低病原性のウイルスに感染した鶏が、中国からミャンマーに輸出されていた。しかも同タイプは、韓国や日本でも確認されている。こちらもいつ、ヒトからヒトへ感染するタイプに変異するか分からないので、それが非常に心配です。このようなことは、人類の歴史上なかったことです」(同) H7N9型は、鶏に対しては致死性が低く、低病原性に分類されるが、人に感染すると致死的病原性を発揮するという。これまで1000人以上の感染者が発生し、約350人が死亡している。そして2016年秋以降、感染力が増しているのか、例年になく異常な拡大ぶりを見せているのだ。 「初期症状は通常の季節性インフルエンザと同じですが、数日以内に重篤化し、多くが死亡に至ります。幸いなことに、これまでヒトからヒトへの感染の事例は数件ですが、今後、どうなるかは未知数。潜伏期間は約10日間で、その間に日本に入ってくる中国系旅行者が危険。彼らの風邪症状については、鑑別が非常に重要になってきます」(同) 鳥インフルエンザは、感染した家きん、あるいは野生鳥などの体液・排泄物への濃厚な接触や飛沫を吸入することにより、ヒトへ感染している。北西の風が吹き荒れる今の季節で心配なのは、ウイルスの空気感染である。 「感染野鳥の排泄物に混じった鳥インフルエンザウイルスは、排泄物が乾き、空中に舞いだすと、空気感染を起こす危険が出てきます。数キロ先の農場までウイルスが拡散した事例もありますからね。感染した野鳥が飛び交う地域の空中には、乾いて粒子状となった排泄物に混じって、ウイルスが空中に飛び交っているのです。微量では鳥だけに感染し、ヒトへの感染力は弱いと考えられますが、変異して人に容易に感染するようになれば、パンデミックもありえます」(同) 鳥インフルエンザの中でも、現時点で最も感染が恐れられているのがH5N1型。ヒトや多くの動物に感染しやすい強毒性で、突然変異によってヒトからヒトへの爆発的な拡大が最も懸念されている。 「H5N1は現在、人への感染はあまり起こしていませんが、インドやアフリカでは家きんの間で流行しているのです」(同) では、我々は今後、どのような対策をしていけばいいのか。 「野鳥が衰弱して飛べなくなっていたり、死んでいた場合、鳥インフルエンザに感染している可能性がある。死骸及び周辺の排泄物や、飛び散った羽根にも手足で触れないこと。できるだけ早めにそばを離れ、周辺にいる場合は呼吸を避けること。ウイルスが周辺で排泄物や羽毛などと一緒に浮遊している危険性があるからです。また冬期間、寒い地域ではウイルスが長時間生きていることに留意すること。特に雪の中では数日間は生きていることがあるので、衰弱死した鳥周辺の雪も、当局は消毒する必要があります。家庭の庭で野鳥の死骸が見つかった場合は、即当局に連絡する。調査の上、庭の消毒も行われるはずです」(同) 鳥の死骸を発見、帰宅後は、靴底や手を十分に洗うことだ。 「パンデミックが起きた際の迅速な対応を、行政、医療機関、マスメディアが普段から作っておく必要もあります。一般市民はパンデミックが起きたとき、できるだけ人混みの中に入らないこと。症状のある人間、出始めた人間は自宅で自己隔離し、保健所に連絡して指示をもらいます。これも、保健所が十分機能していればですが…」(同) もはや対岸の火ではない。
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社会 2017年02月21日 10時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第210回 日米がWinWinになるために
アメリカの商務省が2月7日に貿易統計を発表した。財貨(モノ)の貿易に限ると対日貿易赤字が689億ドル(約7兆7000億円)となり、赤字額が中国に次ぐ2位となったとのことである。特に、トランプ大統領が「不公平だ」と批判する自動車関連で、対日貿易赤字が526億ドルに増加した。 今後、日本はアメリカと2カ国間貿易協定の交渉を進めていく可能性が高い。すなわち日米FTA交渉だが、アメリカサイドは例により日本に「日本の自動車市場が閉鎖的であるためアメリカ車が売れないのだ」などと、言い掛かりをつけてくるだろう。 日本は外国からの自動車輸入に対し、関税を掛けていない。アメリカは、乗用車に2.5%、トラックに至っては何と25%もの関税を掛けている。どちらが閉鎖的なのか、誰の目にも明らかである。 日本の軽自動車を除く国内市場において、すでに輸入車は9%のシェアを得ている。日本の輸入車市場のシェアを見ると、何と過半数がフォルクスワーゲン(&アウディ)、メルセデスベンツ、BMWというドイツ車が占めている。GMやフォードといったアメリカ車は、ベスト10にすら入っていない。 ドイツ車が日本で売れている理由は簡単だ。性能、デザインに加え、「右ハンドル車」が中心になっているためだ。さらには、ドイツ勢はサービスを重視する日本の顧客向けに、日本国内において過去にディーラーネットワークの構築に投資した。 高級感があり、右ハンドル。さらに、購入後のサービスも心配がいらないからこそ、日本国民はドイツ車を喜んで買うのだ。 逆に、アメリカ勢はなかなか日本向けの右ハンドル車を作ろうとせず、ディーラーネットワークへの投資もおろそかにしてきた。しかもフォード社に至っては、2016年1月26日に突然「日本事業から撤退する」とアナウンスし、本当に撤退してしまった。 アメリカ企業の「努力不足」が原因であるにもかかわらず、責任を「日本市場の閉鎖性」に押し付ける。政治力を使い、日本に車を買わせようと、繰り返し、繰り返し、ありもしない「日本市場の閉鎖性」を叫ぶ。これが、自動車分野におけるアメリカ側のスタイルだ。トランプ大統領が真の意味で「製造大国アメリカ」を復活させたいのであれば、この種の政治的な動きは慎むべきだ。政治力で他国に強引に製品を買わせることは、逆にアメリカ製造業の復活を妨げることになるだろう。 ところで、2月3日の衆議院予算委員会で、安倍総理大臣は日米首脳会談において、「インフラ投資などによってアメリカ国内の雇用を生み出し、成長につなげていくことを包括的に説明したい」という考えを示した。とはいえ、日本マネーをアメリカに投じた場合、ドル買い円売りになってしまうため、為替レートはドル高円安に動く。結果的に、アメリカの対日貿易赤字はかえって拡大することになる。 そもそも、「アメリカのインフラ投資を日本が担う」などという意味不明な路線に走らなくても、日本国がアメリカの雇用拡大に貢献する方法はきちんと存在するのだ。すなわち、日本が国内に財政出動を行い、デフレから脱却。内需主導の経済成長路線を取り戻すことである。日本が、自ら健全なインフレ率の下で安定的な経済成長路線に回帰する。そうすることで、日本の生産能力(経済力)が国内の需要に振り向けられることになる。 日本の生産能力が国内に向けば、対米輸出は減る。さらに、内需が拡大していけば、エネルギーや鉱物資源を中心にアメリカからの輸入は自動的に増え、対米貿易赤字は縮小に向かうだろう。 日本政府は内需主導の経済成長実現のために、どうするべきなのか。もちろん、地方の交通インフラ整備への投資拡大だ。 例えば、地方で高速道路と「称する道路」は片側一車線の対面通行で、真ん中にポールを立てて仕切っているところが少なくない。筆者は首都高や東名自動車道に慣れているため、片側一車線対面通行ポール仕切り方式を高速道路と認めることには抵抗感がある。しかも、ポール仕切りの対面通行は悲惨な交通事故の原因になりやすい。 本来、地方において片側二車線、コンクリ仕切りで建設する予定だった高速道路の多くが、実際には対面通行ポール仕切り方式になっている。理由はもちろん公共投資削減路線である。予算を理由に、わが国の地方の高速道路の多くが片側一車線で作られてしまったのだ。情けない限りである。 カネ、カネ、カネと、財務省主導の緊縮財政に誰も逆らえず、最低限のインフラ投資すら実施できず、地方は人口流出に悩まされている。となると、これまた情けない成長否定論者、あるいは「日本衰退論者」たちが、 「地方は人口が減っているのだから、交通インフラの整備は無駄だよ」 と、言い出すのが、わが国の「決まりごと」である。 とはいえ、話は逆なのだ。交通インフラが整備されていない地域の経済が成長するはずがなく、当然ながら人口も減少していく。東京一極集中に歯止めをかけ、地方の人口を増やしたいならば、なおのこと交通インフラに投資をしなければならないのだ。 わが国では、国内の交通インフラ中心に政府が投資する路線に対し、反射的に否定する政治家、学者、官僚、識者が少なくない。しかも、選挙区の区割りが変えられ、地方の国会議員が減らされてしまった。政治的にも、ますます地方のインフラ整備が困難になっているありさまなのだ。 地方のインフラ整備をおろそかにする反対側で、なぜかアメリカへのインフラ投資についてマスコミは礼賛する。まずは「国内」に投資するという普通の発想が、なぜできないのだろうか。 日本が「属国」よろしくアメリカに投資を捧げても、対米貿易黒字は減少しない。何しろ日本の内需は低迷したままで、アメリカからの輸入は増えず、さらに日本国内の生産能力が「外需(アメリカ市場)」に向かわざるを得ない。 日米がWinWinの関係になるためにも、日本国は内需主導型の経済成長を目指さなければならないのである。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2017年02月20日 14時00分
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第56回
「日本列島改造計画」へ踏み込んだことにより、工場誘致地区に指定された候補地周辺の地価の値上がりを当て込んだ商社をはじめとする大企業が次々と“買い占め”に出、地価はアッという間に暴騰した。 例えば、昭和48年4月、建設省が公表した全国5490地点の地価は平均約30%、首都圏に限れば35%も暴騰したことを明らかにした。また、高騰したのは土地だけではなく、一般物価も凄まじいばかりの勢いで高騰、毎月1.5%〜2.0%ずつ上昇し続けた。わずか半年ばかり前には「今太閤」「庶民宰相」と喝采を浴びた田中角栄だったが、ここに至ってもはや昔日の面影はなく、人心は離れる一方となったのである。田中の着想の素晴らしさは誰もが認めたが、「負」の側面が現れるや国民の多くが手のヒラを返したということだった。 当時の田中首相番記者のこんな証言が残っている。 「地価の暴騰、インフレの高進、さらには前年暮れのよもやの総選挙での敗北も手伝って、田中の普段の表情は大きく変わった。これらはすべて“想定外”ということで、悩みは相当に深かったと思われた。持ち前の明るさは消え、『分かったの角さん』から『だんまりの角さん』と呼ばれるようになっていた。さらに追い打ちをかけたのは“オイルショック(石油危機)”だった。折から顔面神経痛を患ったため顔が歪み、歯切れがよく分かりやすかった国会答弁も次第に不明瞭になっていったものです」 立ち往生する日本列島改造計画に、あたかもトドメを刺すかのようにオイルショックが日本列島を襲ったのはその年(昭和48年)の秋であった。 OAPEC(アラブ石油輸出国機構)が、この年10月に勃発した第4次中東戦争を有利に導こうと、イスラエル友好国に対する原油価格の値上げと原油自体の供給削減を決定、ために原油価格は一挙に4倍にまで急騰、折からのインフレの高進と相まって、日本は未曾有の経済危機に直面したということだった。 「角福総裁選」で敗れ、行政管理庁長官として入閣していた福田赳夫は、これを評して「まさに狂乱物価」と批判した。地価や物価の高騰はとどまることなく、国民も一種のパニック状態に陥ったものだった。石油がなくなる、トイレットペーパーがなくなるという不安心理から、全国の主婦が争って買い求めるという“トイレットペーパー騒動”も起きたのだった。 田中にとってはまさに緊急事態発生、もはや列島改造を云々しているときではなかった。田中内閣は「石油緊急対策要綱」「消費節約運動」などを立て続けに発表、事態の収束に努めたが効果なく、むしろこうした施策が国民の不安心理を煽る結果ともなった。人間、良いことは重ならないが悪いことは重なる。そうしたさなかの11月23日、右腕と頼んでいた大蔵大臣の愛知揆一が急死したのも田中にとっては“痛打”であった。 田中はこれを機に、政権基盤の再構築、体制強化を狙って愛知死後の翌々日の25日に内閣改造を断行、愛知の後釜の蔵相に財政通と評判だった福田赳夫を起用した。その頃の福田は、 「角さんの強気はいかにも心配だ。これでは超高度成長そのもので、インフレ加速が避けられないだろう」 と、田中批判にさらに声を強めていたのだった。 苦境の中での蔵相就任要請をした田中と福田の間にはこんなヤリトリがあった。 「国際収支も大赤字のいま、もはや財政、経済とも政策転換をするしかない。それをのんでくれた上で全権を任せてもらえるなら引き受けるが」と福田。これに対して、田中は「しかし、列島改造の一枚看板を下ろすわけにはいかない」と逡巡、難色の表情を見せた。福田が言った。「それでは、とても蔵相は引き受けられない」。しばし沈黙の後、田中が口を切った。「列島改造は止める。お任せしたい」。 この福田の大蔵大臣起用は、田中の追い込まれた苦悩ぶりが窺われた。福田は長年のライバルであるだけでなく、経済政策的にも田中の高度成長路線に反対するインフレ抑制の安定成長路線を主張していた。言うなら両者は対極的存在で、田中にとっては決定的に列島改造計画の大幅後退を覚悟せざるを得ない決断だったということである。 その福田は蔵相に就任するや徹底した総需要抑制策を取って物価上昇の抑制にひとまず成功、さらにインフレ対策の目安を付けた上で、翌49年7月、蔵相の座から降りた。田中政権は長からずと見て、「ポスト田中」へ向け立ち位置を保ったということだった。 ただし、福田蔵相の手による総需要抑制策により、昭和49年度は戦後初のマイナス成長となったのだった。田中は福田に「任せた」と言った以上、その間、予算に一切の口を挟むことはなかったのである。 そうした苦渋の中、それでも田中は政権再浮揚に腐心した。内政での失点挽回を、外交に向けたのである。かねがね「中国の次はソ連(現・ロシア)だ」としていた懸案の「北方領土」問題解決へ向けての交渉に、ミコシを上げたということだった。(以下、次号)小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材46年余のベテラン政治評論家。24年間に及ぶ田中角栄研究の第一人者。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書、多数。
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社会 2017年02月20日 11時37分
赤裸々に明かされたNHKの“受信料詐欺”の手口
視聴者が支払う受信料で運営されている公共放送・NHKだが、一部の徴収員が詐欺まがいの手口で受信料契約を結んでいたことを、発売中の「週刊文春」(文芸春秋)が報じている。 実際に各家庭を回り、受信料の契約・徴収をしているのは、NHKが業務委託する地域スタッフや下請けの企業の社員。同誌に対して、長崎県佐世保市内のオフィスに勤務していた元受信料徴収員が“受信料詐欺”の手口を明かしている。 その手口とは、パラボラアンテナなどの受信機器が設置されておらず、明らかに衛星放送が写らない世帯に衛星契約を結ばせるもの。NHKの受信契約には、「衛星放送」と「地上放送」があり、「地上」は2か月前払いで2520円。対して「衛星」は4460円。ターゲットにしていたのは、1人暮らしの高齢者や親元を離れた学生など、受信料に詳しくない人で、契約の違いにあえて触れず衛星契約を結ぶというのだ。 そうしていた理由は、徴収員の給与は歩合制で、衛星契約を多く取れば、その分ポイントが加算され、給与が上がるからだったという。 「都会はケーブルテレビ局やスカパーなどを通して衛星放送を受信しているので、どの家庭が受信しているのかが分からない。一方、地方はいまだにアンテナがある家庭が多く見分けが付きやすく、受信料をきちんと支払っている家庭が多い。ただし、都会に比べ、自身の家庭がどんな受信状況であるかを把握していない視聴者も多いはずで、ターゲットにされてしまっている。この記事を受け、同じような手口の“告発”が相次ぐかも」(放送担当記者) また、父親がすでに亡くなった家庭を訪問した際、本来はその義務が生じないにもかかわらず、事情が把握できていない息子に父親の滞納分を引き継ぐ契約をさせ、会社の業績にしていたというのだ。 元徴収員の告白は波紋を広げそうだ。
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