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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」亡国の外国人受け入れ

 11月2日、政府は、外国人単純労働者の受け入れを可能にするため、新たな在留資格を創設する入管難民法などの改正案を閣議決定し、国会に提出した。法案によると、簡単な試験のみで仕事に就くことが可能な特定技能1号と、ある程度の熟練技能が必要な業務に就く2号という2つの在留資格が新設される。1号は在留期限が通算5年で家族帯同を認めないが、2号は期限の更新ができ、家族の帯同も可能とした。条件を満たせば永住にも道が開ける。外国人技能実習生から新資格への移行もできる。政府は、この法案を今国会中に成立させ、来年4月からの施行を目指している。

 法案が施行されると、何が起きるのか。確実に生ずるのは、単純労働分野の賃金低下だ。政府は、受け入れ人数を4万人程度と想定しているが、最終的には、そんなレベルで収まらないのは確実だ。5月30日の日本経済新聞が、外国人単純労働者受け入れ構想をスクープしたときは、建設、農業、介護、宿泊、造船業の5業種で’25年に50万人超の外国人労働力を確保する方針だと報じられた。今回の法案では、受け入れ対象となる業種は、省令で決めるとされているが、報じられるところでは、ビル清掃や外食などを含む14業種まで対象業種が拡大している。さらに、実際の外国人労働者数の推移をみても、’08年に49万人だった外国人労働者数が昨年は128万人と、9年で79万人も増加している。この現実を踏まえれば、今回の法案が施行されれば、100万人以上の外国人労働者が流入してくることは、間違いない。

 一橋大学経済研究所の所長を務める小塩隆士が経済企画庁(当時)の広報誌『ESP』(’90年6月)に寄稿した論文「外国人労働者問題の理論分析」によると、単純労働の外国人労働者が100万人流入した場合、単純労働の賃金は24%も下がる。政府は、70歳まで働き続けろと言い始めているが、ビル清掃や外食というのは、定年後の高齢者が多く働く分野。そこの賃金が大幅に下がれば、定年後の生活は、ますます厳しくなる。

 社会面でも大きな問題が発生する。大量の外国人労働者は、社会不安を高め、差別を助長し、排斥運動をもたらすことは、いまの欧米の姿をみれば明らかだ。また、外国人単純労働者は低賃金だから、納める税金は少なく、必要な行政コストは大きいから、財政赤字を拡大させることも確実だ。

 そして、最も大きな被害は、日本経済が第四の産業革命に乗り遅れることにつながるということ。現在、人工知能やロボットを使って労働を置き換えるシステムの開発に、世界中がしのぎを削っている。しかし、安価な外国人労働者が手に入ることになれば、そうした技術開発への意欲が大きく削がれることになるのだ。

 例えば、労働力が稀少な日本では、駅の自動改札や自販機、産業用ロボットなどの省力機器が広く普及しているが、途上国にはほとんどない。それは、豊富で安い労働力が手に入るからだ。

 第四の産業革命で、十数年後には、いまの職業のおよそ半数が消滅するとされている。そうなったとき、日本に残されるのは、仕事を失った大量の外国人単純労働者とその家族だ。その意味で、今回の入管難民法改正案は、目先の利益に目がくらんで日本の未来を奪う亡国の法案なのだ。

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