およそ5年前、史上最年少で漫才協会(現:財団法人漫才協会)の理事に就任。漫才日本一決定戦『M-1グランプリ』(終了)では、2008年から3年連続で決勝戦に進出。ナイツ。テレビタレントとして十分な知名度を得た今でも、年間500本の寄席をこなす、舞台のプロフェッショナルだ。
骨の髄まで、漫才師。“ヤホー漫才”を生み出した塙宣之は、生粋のコメディアン体質といえる。見るもの、聞くものすべてにたいして、ボケざるをえない。その延長戦で完成したのが、言い間違い漫才。『M-1』では、持ち時間の4分間で37個ものボケを詰めこみ、あの松本人志をも驚愕させた。実兄は、ギター漫談のはなわ。異なる芸風にもかかわらず、兄弟そろって成功した稀なパターンだ。
めがねをかけて、有能な営業マンのような風貌の相方・土屋伸之は、塙の言い間違いを訂正する役割。実母は、演歌歌手。にもかかわらず、学生時代から芸事には興味がなく、公認会計士を目指していた。顔面偏差値の高さを全面的に打ちださない、地味なほう。いわゆる“じゃないほう芸人”の筆頭格で、かつては新宿カウボーイの地味なほう・石澤勤と思われたまま、密着取材をされたことがある。
師匠は、内海桂子。芸歴60年を超える浅草演芸界の生き証人。夫は24歳年下のマネージャーという、今はやりの年の差婚を先取りしていた。そんな内海を、ナイツは愛してやまない。浅草の師匠方と内海の話題を必ずトーク番組でするのは、寄席の灯火を消さないため。そして、内海にもっと若返ってほしいという弟子からの、ささやかなギフトなのだ。(伊藤由華)