『アリアドネの弾丸』は第1話で死因を調査するAi(死亡時画像診断Autopsy Imaging)の威力を見せ、第2話ではAiの限界を示した。今回はAiを悪用した病院ぐるみの犯罪を描く。ドラマは死因不明社会に対してAiを推進する立場から描かれるが、Aiの診断結果が錦の御旗となってしまうことの恐ろしさも忘れていない。
今回は対外的にはAiの手柄と報道され、第2話で「弱点だらけ」と酷評されたAiの汚名返上になった。しかし、初期調査ではAiでも解剖でも問題を見抜けておらず、痛み分けである。真の手柄は真実を追求し続けた白鳥・田口コンビにあり、本来はAiが持ち上げられる話ではない。
この論理のズレはAiが酷評された第2話も同じであった。第2話ではAiが死因を見抜けなったが、警察も事件性なしと判断しており、やはり痛み分けであった。ここでも真実の解明は熱心に調査した白鳥・田口コンビの賜物であり、Aiが一方的に非難されるものではなかった。このように本来的な論理とズレたところでAiの成功や失敗を結びつけることで、ドラマではAiと解剖の対立を盛り上げる。
このズレは白鳥にも生じている。Aiセンター潰しを目論む警察庁長官官房情報統括室室長・斑鳩芳正(高橋克典)は白鳥の過去を漁り、運営会議の席上で暴く。白鳥は恋人を医療ミスが疑われる手術で亡くしており、医療を恨んでいると攻撃する。ただならぬ関係の笹井スミレ(小西真奈美)からも批判された斑鳩の陰湿な攻撃であったが、驚くべきことに白鳥はダメージを受け、沈黙してしまう。
しかし、恋人の死因を究明できなかった無念が死因究明の原動力になっていることは、別に非難されることではない。白鳥のような立場の人物がAi推進を志すことは、自然な帰結である。それが自分の問題意識であると白鳥は胸を張って主張すればよい。反対に個人的な思いや背景なしで、あれだけAi推進に燃える方が不自然であり、底意を疑われてしまう。
斑鳩の陰湿な攻撃にダメージを受ける白鳥は「ロジカルモンスター」らしからぬ存在である。しかし、白鳥がダメージを受けたことで、白鳥に代わって斑鳩に抗議する男前の田口という珍しい姿が見られた。さらに白鳥が田口の前で愚痴を言い、田口に励まされるという逆転現象も展開された。既存のキャラ設定を少しずらすことで、登場人物の関係性に新鮮な息吹を吹き込むことに成功した。
(林田力)