強いて挙げるとすれば、侍ジャパン大学選抜との壮行試合で好投した広島の塹江敦哉(18=左投左打/高松北)だろうか(6月29日)。塹江はNPB選抜チームの二番手として登板し、三者凡退に抑えている。しかし、その投球内容は緒方孝市監督を喜ばせるほどではなかった。先頭打者を三ゴロに仕留めているが、制球難に苦しんだ。老獪なプロの一軍打者が相手ならば、自滅に陥っていたかもしれない。
中日の大ベテラン・山本昌がどのタイミングで一軍登板するのかもポイントになるだろう。NPB初の50歳となるシーズンに突入したレジェンドが、どんな投球を見せてくれるのか、楽しみにしているファンも多いはずだが、登板機会を与えるタイミングが難しい。セ6球団は僅差のゲーム差とはいえ、中日は最下位争いのなかにいる。“消化試合のような状況”で登板させることはできないはずだ。山本昌は「使うタイミング」が難しい。
では、そんな見どころの少ないセ・リーグ後半戦はどこに注目すればいいのか。
どの球団にも後半戦に頭角を現す若手、不振から立ち直りそうな選手がほとんどいないと仮定する。その場合、中畑DeNAが混戦を競り勝つのではないだろうか。
去る5月24日の対阪神戦、9回最後のマウンドに山崎康晃が送られた。山崎は新人ながらDeNAの守護神に抜てきされ、その期待にもこたえてきた。横浜スタジアムのファンは山崎がコールされた時点で勝利を確信したが、先頭の阪神・上本の頭部にぶつけてしまう。危険球、退場。阪神・和田監督が飛び出し、DeNA捕手・嶺井に胸を突き付ける。両軍入り乱れ、キナ臭い様相のまま、試合が再開された。その後も走者を出し、失点したが、中畑清監督(61)は田中健二朗、国吉佑樹のリレーで逃げ切った。
「勝つには勝ったが、後味の悪いゲーム」
試合後、中畑監督は難しい表情を浮かべたが、DeNAナインは興奮していた。通常、絶対的守護神が降板した場合、チームは浮足立つ。また状況はどうであれ、イニングの途中に守護神に救援を送るということは敗北を意味する。しかし、DeNAは違った。守護神に救援を送る緊急事態に対し、チーム一丸になって戦っていた。
このチームは長く低迷していた。旧横浜ベイスターズ時代に逆上っても、ローテーションの柱となる投手や4番を予定していた選手が機能せず、苦しんでいた。自ずと「全員野球」の体制となり、中畑監督はエース、4番、守護神といったチームの大黒柱を育ててきた。単に育てるだけではなく、全員野球の状況に闘争心を植え付けた。山崎降板後、DeNAナインは全員、ベンチから身を乗り出して声を張り上げていた。
中畑監督の明るさとは、単にチームを盛り上げるだけではなかった。チームを盛り上げる目的は「苦しい状況でも、全員野球で勝ち抜く」ためだった。そう考えると、混戦・低迷の6球団を競り勝つ可能性を秘めているのは、DeNAではないだろうか。(スポーツライター・美山和也)