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藤川の日本帰還に積極的になれないトラの事情

 テキサスレンジャーズから事実上の戦力外通告を受けた藤川球児(34)の周辺が、慌ただしくなってきた。
 古巣阪神の坂井信也オーナーが関西系メディアの取材を受け、「向こうからのお話しがなかったら、こっちも何も動くことはできない。それからの話ですね」(5月18日)と答えた。額面通りに受け止めれば、藤川獲得の意思ナシということになるが、実際は違う。阪神も、今季中に藤川が獲得可能な選手リストに入ってくる情報を把握していたのだ。

 「藤川はメジャーに昇格しにくい、あるいはマイナーに落とされやすい状況にあったと言っていいでしょう。レ軍は右の救援投手層が厚く、本当に欲している戦力は、左のリリーバーでした」(米国人ライター)
 レ軍は先発陣が不振。今後、先発か、左のリリーバーを補強するにあたって、メジャー昇格可能な40人の選手人数枠に『空き』を作らなければならない。右のリリーフである藤川は現有戦力と重なるので弾き出されたというわけだ。
 藤川はレ軍入りする際、契約に「本人の合意がなければマイナー落ちさせることはできない」とする条文を入れていた。そのため、レ軍はまずマイナー降格を藤川に打診。藤川サイドが拒否したため、事実上の戦力外通告となり、ウェーバー公示となった。今後、藤川獲得の意思を示す米球団が現れなければ、日本球界とも交渉できる。その交渉解禁は現地時間で5月21日だが−−。

 「カブスを退団した14−15年オフ、巨人が藤川獲得に動いていました。巨人、DeNAが交渉解禁と同時にラブコールを送るものと思われますが(19日時点)、古巣阪神がどう出るのか…」(球界関係者)
 坂井オーナーの口ぶりは消極的だが、阪神も藤川が右の救援投手層の厚いレ軍と契約した時点で、“生き残りレース”を強いられるのは分かっていた。
 「藤川は阪神と喧嘩別れしたわけではないので、『帰って来い』のひと言で(交渉は)まとまるのではないか。近年、クローザーの呉昇桓に繋ぐセットアッパーがいなかった。そこに藤川をはめれば」(球界関係者)

 しかし、悲観的な声も聞かれた。
 資金力豊富なDeNAも藤川に興味を示しているという。一部報道でも伝えられたが、中畑監督はグリエルとの再契約を進めていた昨年オフ時点から、「グリエルがダメなら、ケツ(クローザー)を獲ってくれと言おうと思っている」と何度か口にしていた。そのグリエルと再契約を交わしたものの、来日を拒むようなゴタゴタがあり、契約は破棄された。そのグリエルに用意した年俸5億円が“手付かず”のまま、球団にストックされているという。
 「藤川サイドが先発での起用を要望しているとの情報も交錯しています。その通りだとすれば、巨人、DeNA、阪神は救援での起用を予定しているのでスンナリとまとまらないかもしれない。DeNAが交渉に乗り出せば、藤川争奪戦はマネーゲームになる」(同)

 阪神は藤川の付けていた背番号22を呉昇桓に渡している。守護神の絶対的地位もそうだ。阪神サイドから交渉に積極的な言動が聞かれないのはそのためだろう。
 藤川サイドにも日本帰還に関する条件、要望はあるかもしれないが、阪神は球団創設80周年のメモリアルだというのに、下位に低迷したまま。巨人、DeNAにかつての守護神を奪われたとなれば、精神的ダメージも大きい。トラはオフの補強に失敗したので、その軍資金でDeNAに対抗すればいい。上位チームとのゲーム差が広がり、諦めムードが漂う前に『藤川帰還』をまとめるべきだと思うが…。

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