問題発言が飛び出したのは23日夜、東京都台東区内の区立施設で開かれた学生主催イベント「ちょっと聞いていい会」でのこと。学生が首相にさまざまな質問をぶつけるスタイルで進行する中、少子化問題の根源に言及した男子学生がいた。
「結婚資金がなかなか貯まらず婚期が遅れ、ひいては少子化を招いているのではないか。」
景気低迷に伴う非正規雇用問題などが深刻化する折、就職を控えた学生にとっては身近で切実なテーマといえる。
ところが首相は「金がないなら結婚しないほうがいい」とズバリ。その根拠を「オレは金がないほうではなかったが、43歳で結婚した。稼ぎが全然なくて(結婚相手として)尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい感じがする」と経験則を踏まえて述べた。
リアリティーある回答に会場に集まった約50人の学生は静まり返るしかなかった。通常、人生の先輩方は“若いのに金の心配をするな”とか“苦難を一緒に乗り越えてこそ夫婦”などと結婚に前向きな意見を述べるものだが、国のリーダーから“まず金を貯めろ”と言われては不安にならないほうがおかしい。
さすがの首相もそんな空気を読み取り、「金があるから(結婚)する、ないからしないというものでもない。人それぞれだからうかつには言えないところ」とまとめた。
祖父・吉田茂首相の側近だった池田勇人蔵相の“貧乏人は麦飯を食え”を想起させる発言だった。
首相はこの日の街頭演説で格差拡大の「反省」と景気対策の「実績」を強調。「市場競争原理主義で、皆さんの生活にかなりのしわ寄せがいった。率直に反省し、政策をやり直さねばならない」と陳謝した。テレビ出演では「先週よりは今週、昨日よりは今日と手応えがだんだんよくなっている」とし、「1日、2日あれば全然変わる」と大逆転を予告した。
一方、民主党の鳩山由紀夫代表は「最後の最後まで気を抜けない」と楽観ムードを警戒。東京都荒川区の商店街では「社会保障をぶった切り、ハコモノ行政を優先する官僚任せの政治が、皆さんの生活を厳しくした」と与党批判を展開した。