前回は“ニューヨークの帝王”ボブ・バックランドが来日し話題となったが、今回は“仮面の魔豹”エル・カネック(メキシコではカネック)が来日し、かつて新日本プロレスで抗争を繰り広げた藤波と約30年ぶりに対戦する。
藤波とカネックは、藤波がWWF(WWE)ジュニアヘビー級王者時代に対戦したが、可ネックが敵前逃亡する“事件”を起こした。また、藤波がヘビー級に転向してからも常に敵対してきた。そんな2人が1985年に開催された'85IWGPタッグリーグ戦(初代IWGPタッグ王座決定戦)の決勝でアントニオ猪木からドラゴンスープレックスで初フォールを奪い、その後のセレモニーで、電撃的な握手を交わしたシーンは知る人ぞ知る名場面だ。
カネックは第1回IWGP決勝リーグ戦にも出場している。当時、メキシコの最大手団体だったUWAで予選を勝ち抜いての出場だった。メキシコではUWA世界ヘビー級王者として、ミル・マスカラス、ドス・カラス兄弟とともに、レジェンドと言われている。メキシコマットでは外国人選手を相手にすると異様な強さを発揮。あの“大巨人”アンドレ・ザ・ジャイアントをボディスラムで投げた一人として世界に名を刻んでいる。
藤波は「今回、久しぶりにメキシコからエル・カネック選手が参戦することとなりました。僕とカネックと言えば40年前の敵前逃亡事件。今となってはなぜあのようなことが起きたかは分かりません。なので今回のツアー名に『リベンジ』という言葉を使いました。僕にとってもカネックにとってもリベンジです。何年か前に来日をしていたみたいだけど、タイミングが合わず再会することができませんでした。そんな中で今回がお互いにとって一番良いタイミングでした」と今回カネックを招聘した経緯を語った。
カネックの初来日は1978年で、今年で来日40周年になる。カネックは今回、藤波、越中詩郎&丸藤正道のトリオと、東京、大阪で対戦する。丸藤との対戦にも注目したいところだ。新日本時代に対戦していた藤原喜明がパートナーを務めるのも異色で面白い。東京ではKAZMA SAKAMOTO、大阪では大谷晋二郎がそれぞれ加わり3人で試合に臨む。また両大会ともに谷津嘉章が参戦し、ヒロ斉藤とタッグを結成する。
武藤敬司がプロデュースするプロレスリング・マスターズは90年代のプロレスを現代に蘇らせているが、藤波は80年代の古き良きプロレスを現代に伝えようと、かつてのライバルを来日させている。この2人から大きな影響を受けている棚橋弘至が「プロレスは繋がってますからね」と話していたが、この2大会はまさにプロレスの“繋がり”を感じる。プロレスは長く見続けていればより楽しめるのだ。
取材・文・写真 / どら増田