女子高生殺人事件の容疑者となった息子の無実を信じ、救うためには殺人すら厭わない母親像。従来のイメージとは、まさに正反対だったからだ。
「母の愛とは無条件なもの。この世に母なくして生まれた人はいません。役の“母”がどういう存在か胸に抱き、忠実に演じるよう心がけました」
ちなみに配役に名はなく、単に「母」としか記されていない。
「誰の母親か特定しないこと、つまりみんなの母親だと思わせることが重要でした。ああいう状況に置かれたら他に取るべき手段はなかったろう…そう感じてもらえることが大切だったのです」
ただ、普通に生きていて劇中のような状況に陥ることはまずない。演技では相当に悩んだという。
「“母”の心中は理解できますが、表現することは難しかった。どうしていいのか分からず、ただただ私はポン・ジュノ監督の顔を見つめていました。すると監督は、例えば熱した焼きゴテで胸をドンッて突かれたら、体が硬直して悲鳴すら出せないでしょう。それを連想して演じればいいんです…と。こんなゾッとするような話をニコニコしながら言うわけです」
それを聞いて、ますます混乱する彼女。
「役の人間を表現できそうで、うまくいかない。高い壁を越えられない、けど戻ることもできない…そんな絶望的な気分にもなり、私はこの程度の女優かと挫折感を感じていました。けど、やり遂げたとき監督は手放しで誉めてくれました…携帯のメールで(笑)。すべてが終わった今では現場が恋しいですね。監督は私に新しい服を着せてくれた人。感謝しています」
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