「SATC」とは全米で1998年から2004年まで放映されて大ヒットしたセクシー・コメディ・ドラマである。放映が始まった年には主人公のコラムニストを演じるサラ・ジェシカ・パーカーが横たわり、「Sex And the City」とデカデカと書かれたラッピング広告の市営バスがニューヨーク市内を走って行き、(え? こんなのが許可されるの?)と目を疑ったものだ。日本でもスカパー!で放映されてブームを巻き起こし、人気はいまだに衰えない。終了後には劇場版が2本作られている。
熱烈なファンに説明は必要ないが、そうでない方の為に少し説明をしておきたい。このドラマの売りは当然セックス。仲良し4人組の独身女性が赤裸々にセックスを語り、自由なセックス・ライフを謳歌する。特にキム・キャトラル演じるサマンサ・ジョーンズの大胆でコミカルなセックス描写は話題となって、キャリー・ブラッドショーを演じるサラ・ジェシカ・パーカーともども一躍スターの仲間入りを果たした。
●NYにはセックスがいっぱい
キャリーのナレーションに「New York is all about change.(ニューヨークは変化がすべて)」というのがあったが、本当は「New York is all about sex(ニューヨークではセックスがすべて)」と言いたかったかもしれない。何しろニューヨークを歩けば棒、ではなくSEXの3文字に当たるのだ。さすが「SATC」のお膝元である。
ドラマに出て来たロケ地を巡る「セックス・アンド・ザ・シティ・ツアー」も大人気だが、映画公開後には映画音楽のCDまでが売れ行き好調、DVDも発売されている。彼女達が身に付けたドレスやアクセサリー、小物に対する興味も大きい。
どうしてそんなにこの番組が人気なのか、アメリカ女性に聞くと「ニューヨークのシングル(独身女性)のありそうな生活をおしゃれに描いている」「彼女達のドラマを長く見ていると他人じゃないように思えるの」「彼女達はアイコンなのよ」など、思い入れがかなり強いようだ。
「SATC」の後には二匹目のどじょうを狙っているのか、セックスやセクシーという言葉を入れた映画や番組がやたら目に付く。2008年スタートのABCのドラマは「DirtySexyMoney」ダーティでセクシーなお金。大富豪を巡るセックスとお金と陰謀の物語だ。今年8月に日本でDVDが発売になったドラマ「カリフォルニケーション」は奇しくもセックス中毒でリハビリ施設に自ら進んで入った事のあるディビッド・ドゥカブニー主演で、カリフォルニアとフォルニケーション(姦淫)をかけている。
これらの宣伝ポスターがNYの地下鉄やバス停に張られており、いやでも子供達の目に飛び込んでくる。問題だと憂える声もあるが、それでもメディアは消費者を惹きつけるこの強力な言葉を手放そうとはしない。本のタイトル、映画やドラマのタイトル、特集記事、そしてあろう事かウォッカの広告までがセックスを売り物にしている。「セクシー・ウォッカ」ってどういう味? と思ってしまう。それを真似したのか日本酒の宣伝にまでセクシーという形容詞が使われていた。更にはタコスにまでセクシーという宣伝文句が使われていた。
ニューヨークでは「SEX」の露出度は信じられないぐらい大きい。「セックス・アンド・ザ・シティ」を下敷きに、10月からはニューヨークの現場からセックスの実情をお伝えしたい。(セリー真坂)