涌井にとって、今季は苦しいシーズンだったに違いない。昨季、右ひじの故障で9勝止まり。5年間続けてきた2ケタ勝利が途絶えた。巻き返しを懸けた今季は5年連続で開幕投手を務めながら、3連敗で屈辱の2軍降格。1軍昇格後は抑えに回されたが、その直後、5月18日発売の写真週刊誌「FRIDAY」で、福岡・中洲のクラブホステスとの女性問題が報じられ、球団から無期限の謹慎処分を受けた。
謹慎は1軍の出場選手登録抹消から実に1カ月も要した。6月22日に1軍復帰後、涌井は先発に戻ることはなく、抑え役のままでシーズンを終えた。
残した成績は55試合登板、63回を投げて、1勝5敗30セーブ3ホールド、防御率3.71と立派なもの。セーブ王のタイトルには武田久投手(日本ハム)の32に、わずかに2つ及ばなかったが、1カ月のブランクや開幕を先発でスタートしたことを思えば、守護神として十分な成績といえる。
謹慎から復帰後、大車輪の活躍を見せたことで、「周りからの信頼を得た」(渡辺監督)と首脳陣やチームメイトも認めた。
10年オフには球団と契約更改交渉でモメて、NPB(日本野球機構)での年俸調停に持ち込んだことで、球団との間には大きな確執が生まれたといわれる。今回の女性スキャンダル発覚で、一時は「オフにはトレード」との声も聞かれたが、来季はエースとして“復権”することになりそうだ。
涌井は「後ろの大変さも分かったので、より一層、最後まで投げようと。肉体的にしんどくなってくる後半戦、先発が頑張ればメチャクチャ強くなる」と、エースの自覚といえるコメントを残した。
(落合一郎)