川田が直面した苦悩は、ライバルであり盟友だった三沢光晴さんの急逝が多分に影響しているはず。心の支えを失い、川田はプロレスとどう向き合えばいいのか分からなくなったのかもしれない。それこそ引退の二文字が脳裏をかすめた可能性もある。
しかし、「オファーがあるということは自分が欲しがられているということ。若い世代の人間に自分がやってきたことを伝えられるんじゃないかと思って今回のオファーを受けました」と、心の整理をして迷いを断ち切り、タイトル奪取に狙いを定めた。
ベルトには思い入れがある。世界ヘビー級王座は、ジャンボ鶴田が歴代王者に名を連ね、伝統あるAWA世界ヘビー級王座の流れを汲むもの。
田中とのシングル対決は8年ぶりになるが、川田は前回の試合をはっきり覚えている。弾丸戦士の当たりの強い攻撃を受けてムキになり「ガンガンこられて、それ以上のお返しをした」と熱くなった過去を振り返る。
前回敗れている田中は「必ず防衛する」と雪辱に燃えるが、川田は「体がシェイプされていて動きやすい体になっているが、その分ヘビー級として通用するのか、試してみたい」と王者を分析。すでに攻略方法を見出しているようだ。