シアトル・マリナーズがオークランド・アスレチックスと日本で開幕戦を行う。マリナーズが巨人とのプレシーズンマッチを行った3月18日、アスレチックスも日本ハムと戦っていた。その重要な一戦の先発マウンドを託されたのが、斎藤だった。
2回1失点。打者9人と対戦、全31球、被安打1、四球2、奪三振1。相手はメジャーリーガーである。上出来と言っていい。
「2イニング目を終え、斎藤がベンチに帰ってきたとき、栗山英樹監督(57)が近づいて行きました。後で何を話したのかを聞いたら、『交代させるから、ゴメン』と。交代の理由は他投手の調整のためと説明したそうです」(スポーツ紙記者)
一般的に、先発投手の責任イニングは5、6回と言われている。そこに中継ぎ専門のセットアッパー2、3人が登板し、クローザーが9回を締めて終わる。ペナントレース本番も近いだけに、先発マウンドを任されたピッチャーはある程度、長いイニングを投げなければならない。好投していた斎藤の降板がアナウンスされると、スタンドのファンも少し驚いていた。
しかし、アスレチックス・ベンチは“違和感”を持たなかった。
同試合を観戦していたア・リーグ中部地区チームのスカウトがこう質問してきた。
「『オープナー』という投手継投策が、メジャーでははやりなんだ。ファイターズもサイトーをオープナーで使っているのかい?」
オープナーの戦術とは、先発ピッチャーに打者1巡をめどに2イニング程度しか投げさせないこと。その後、セットアッパーのピッチャーを3、4人投入するか、本来ならば先発で投げていたはずのスターターを出す新・継投策だ。
「スターター(先発)は立ち上がりが悪く、試合の中で投げながら、調子を上げていくタイプが多い。初回に失点すると、試合の主導権を奪われてしまうから、そこをしのぐためにセットアッパータイプのピッチャーを先に出すんだよ」(前出・同)
たしかに、斎藤が相手打線につかまるのは、「打者2巡目以降」というパターンが多かった。打者1巡、1番から9番までにしか投げさせないと決めて投げさせれば、何とかなるのではないだろうか。
パ・リーグに詳しいプロ野球解説者もこう言う。
「斎藤を中継ぎに転向させる案が、一昨年あたりから日ハム内で出ていました。2巡目、3巡目を抑える力がないからです。でも、肩を作る(登板準備)のが遅い。だから、リリーフに不向きなんです」
オープナーに専念させるとなれば、基本的に先発投手と同じ日程間隔で調整できる。中6日も休ませて2イニングしか投げないのはいただけないが、今年31歳になるピッチャーを二軍に置いておくよりはマシだ。戦力として「オープナー専門」で使ったほうがいい。
栗山監督はメジャーリーグの野球スタイルに詳しい。2回で交代させたとき、斎藤に謝ったというが、本当は「オープナーなら、使える」と確信していたのではないだろうか。
(スポーツライター・飯山満)