プロ野球に時間制限があった方がいいかどうかの是非は、意見が分かれるところ。昨季は開幕前の時点で、東京電力、東北電力管内の電力事情がひっ迫。東京電力管内では計画停電も実施されたことで、文部科学省や経済産業省からNPB(日本野球機構)に圧力がかかり、一昨年までの時間制限なし延長12回制から、3時間半の時間制限制とされた。
昨季の平均試合時間はセ・リーグが3時間9分(前年3時間17分)、パ・リーグが3時間6分(前年3時間18分)で、最長試合は9月8日、横浜スタジアムでの横浜対ヤクルト17回戦で、4時間33分だった(9回)。
数字だけを見れば、両リーグとも、3時間程度で試合が終わっており、観戦するにはほどよい時間といえる。ただ、いざ勝負となれば、時間制はプロ野球そのものをつまらなくするとの意見も多い。まさに、緊迫した1点の攻防となる延長戦にこそ、野球のだいご味が詰まっているとの声も多いのだ。しかし、3時間半という時間制限を設けることで、延長戦は大方10回まで。引き分けに持ち込むために、片方のチームが露骨な時間稼ぎを行うケースもあった。
一昨年、両リーグでわずか16試合だった引き分け数は、昨季は3.5倍の56試合に激増した。決着がつかない引き分けが多ければ、ファンも消化不良に陥る。引き分けの差は優勝争いや順位争いに直結する。プロ野球では通常、引き分けが多い方が勝率の点で有利とされる。昨季、終盤まで中日と優勝を争ったヤクルトは、両リーグ最多の引き分け数15を記録したが、野球自体が勝つための試合ではなく、負けないための試合になってしまい、野球そのものがつまらなくなる懸念も出てくる。
電力事情は昨年3月11日の福島原発事故直後から夏場に比べれば回復している。一昨年までの時間制限なし延長12回制に戻すのはむずかしだろうが、せめて間を取って、4時間の時間制限制あたりで、落ち着かせるわけにはいかなかったのだろうか。3時間半の時間制限制は、プロ野球自体をつまらなくしてしまいかねない。
(落合一郎)