「オフの補強」と言えば、かつては星野仙一監督(64)の独壇場だった。
しかし、今オフは目立った補強は出来ていない。むしろ、エース・岩隈久志(30=海外FA)の喪失分がそのまま「マイナス」として残ってしまったと言っていいだろう。古巣阪神と上園啓史(27)を得る交換トレードをまとめたが、「ウチの井坂、戸村、長谷部、それと(ヤクルトから入団の)川島と、争ってもらう」(12月9日談話)と、上園にローテーション3番手を期待していた。上園には失礼だが、「補強の星野監督」にしてはあまりにも“小粒”である。
「阪神指揮官だった02年オフの補強のインパクトが強かったせいもあると思います。現有戦力の24人を入れ換える大粛清で、オフの間、星野監督のことが報じられなかった日はなかったくらいでした。当時、何でこんな大規模な補強ができたかと言えば、01年オフ、星野監督は中日指揮官から横滑りしたからです。それもドラフト会議終了後だったので、阪神フロントは星野監督と戦力面について話し合う時間がなく、02年オフに本格的なチーム作りに着手するという約束を交わしていたからなんです」(当時を知る関西球団関係者)
今回の楽天監督に着任したときと事情が異なるのも、大型補強ができる要因でもあるようだ。
しかし、こんな情報もある。補強費にシビアな三木谷浩史会長も、楽天が背負っている『責務』は重く受け止めているそうだ。
「東日本大震災が発生し、楽天球団には今も『頑張ろう東北』の期待が寄せられています。補強らしい補強をしないままキャンプインするわけにはいきません」(チーム関係者)
一部報道によれば、星野監督、三木谷会長が兵庫県西宮市内で「元阪神・井川慶(32)と接触した」とあった。また、星野監督の野球は『先行逃げきり』。つまり、強いクローザーが不可欠なのである。
星野構想では2012年の新クローザーは外国人投手を予定している。2011年はサンチェス、金炳賢のクローザー候補が機能せず、シーズン途中に先発のラズナーをコンバートさせた。「中継ぎとして51試合に投げた青山浩二(28=23ホールド)をクローザーに固定させるべき」との声もチーム内にはあるが、すでに星野監督は「密使を米国に飛ばしている」(関係者)という。
その通りだとすれば、星野監督はロースター漏れする(メジャー登録選手枠)マイナー投手を狙っているのではないだろうか。中日時代、ロースター漏れ選手リストからギャラード(日本通算120セーブ)を見つけている。サンチェスはこの方法で失敗だったが、星野監督は2011年キャンプ中、取材で訪れた栗山英樹・現日本ハム監督と外国人選手の補強方法についても談義し、「(渉外担当者には)ロースターから落ちた選手をチェックしろと言い…」と語っていた。
プロ野球解説者の1人が、一般論としてロースター漏れした投手についてこう説明する。
「開幕40人のメジャー出場枠を争っていたわけですから、それなりの実力はあります。日本球界に売り込みをしてくる投手の代理人に騙されるよりも、最初からロースター枠ギリギリの投手に調査を限定すれば、日本向きなのかどうかをじっくり確かめられます。それに、年俸も比較的安く済む」
今オフの米FA市場は例年よりも好投手が少ないという。蛇足になるが、米国人ライターに「日本向きの投手はいるのか?」と聞いてみた。
「ロースター漏れ? 上原(浩治)がワールドシリーズ(対カージナルス)のロースターから漏れました。レンジャーズの本拠地・テキサスは高温乾燥地区なので、直球のキレが生命線となる投手には不向きとも言えます。上原に興味を示すメジャー球団スカウトも少なくなく、レ軍首脳陣も上原を放出要員と捉えており、上原は開幕ロースターから漏れる可能性の方が高い」
上原も獲得しようと思えば何とかなるようだ。上原を獲るのであれば、「補強の星野監督」に相応しい大型補強となるだろう。実現の可能性はともかく、星野監督はこのままオフの沈黙を続ける気はないようだ。