これが石井の実力なのか。かつて“人類最強の男”と称されたヒョードルもすでに35歳。ここ数年は負けも込み、引退も取りざたされ、全盛期の力はもうない。そのヒョードルにわずか154秒で惨敗を喫し、総合格闘家としての石井の実力に再び疑問符が付いた。
10年大みそかの「Dynamite!!」では打撃系のジェロム・レ・バンナと総合ルールで対戦したが、終始、極めきれずに判定までもつれ込んでの辛勝。負けを恐れての消極的ファイトには批判も多かった。
昨年は米ストライクフォースと契約したものの、同団体が米最大手のUFCに買収された関係もあって、マットに上がることができず、米国内で柔道の「全米体重別選手権」に出場するなど、迷走が続いた。総合の試合は9月14日にブラジルで行ったパウロ・フィリォ戦(引き分け)だけで、大みそかのヒョードル戦は大きなアピールの場であった。
この試合にはUFC関係者も注目し、勝てなくても好内容を残すことができれば、UFC参戦への道も拓けるところであった。だが、衰えたヒョードル相手に完敗を許したとあっては、米メジャー進出への道は遠のいてしまったといえよう。
石井で気になるのは、やはり試合数の少なさ、強豪選手との対戦の少なさだ。米国を拠点に練習して、チャンスを待つのもいいかもしれない。しかし、プロで実績ない者にオファーはなかなか届かないだろう。たとえ、ファイトマネーが安くても、日本国内で試合数をこなして実戦経験を積むことも、米メジャーに進出するためのステップとして必要なことかもしれない。
(落合一郎)