石井は4月29日(日本時間30日)に開幕する全米柔道体重別選手権(フロリダ州)に100キロ超級にエントリーした。同選手権への出場には米国の永住権や市民権などは必要ないという。同選手権は8月にフランスで開催される柔道世界選手権の選考会を兼ねており、まずは世界選手権への出場を目指す。
その先にあるのは、16年のリオデジャネイロ五輪。五輪の米国代表になるためには、永住権、市民権が必要。石井はすでに昨年8月から、拠点をロサンゼルスに移しており、それらを取得した上で、米国代表としてリオデジャネイロ五輪に出場する腹づもりだ。米国柔道は日本ほどレベルが高くはなく、米国代表への道も困難ではないといわれている。
一度は柔道を捨て、プロ格闘家となった石井の柔道復帰には、「今さら何故?」の疑問符も付く。その背景には日米の総合格闘技市場の低迷、不安定があるようだ。バブル時には、大物選手なら1試合○千万円ともいわれていた日本の総合格闘技界。石井もそれを当て込んでのプロ転向だったわけだが、国内最大手団体のDREAMは運営元のFEGの経営不振で低迷。第2団体のSRC(戦極)はスポンサー撤退で、事実上の活動休止状態。
米国では石井が契約を結んだ第2団体のストライクフォースが、最大手のUFCに買収された影響で、試合出場がままならぬ状況で、これらの事情が柔道復帰に拍車をかけたと見られている。
また、側近には「総合をやるには、米国人になるしかない」と語っているといわれる。米国柔道界では国内のように厳格なプロアマ規定もなく、総合との両立も可能。柔道で活躍することで、総合での商品価値を上げることも可能で、かつ永住権や市民権の早期取得に役立つと考えているようだ。
(ジャーナリスト/落合一郎)