北京五輪金メダリストの実力はさびついていなかった。100キロ超級にエントリーした石井は、2回戦でカイル・バシュクラットを、準決勝でエイドリアン・アロンゾを、決勝でジェイコブ・ストロメキを、いずれも一本勝ちで下し貫禄勝ち。3試合トータルの試合時間はわずか1分39秒。日本ほどレベルが高くない米国柔道とはいえ、圧倒的な力の差を見せつけた。
石井が見据えているのは、16年リオデジャネイロ五輪への米国代表での出場。米国代表になるためには市民権が必要で、これが大きな壁となる。米国柔道連盟のナディング会長は、「将来的に米国代表になる気持ちがあるなら、可能な範囲でサポートしていきたい」とコメント。同連盟のサポートがあれば、市民権の取得が早期に進む可能性もある。ただ、ナディング会長は「全日本柔道連盟との関係を大切にしたい。何も問題が起こらないよう、繊細に扱っていく」と、日本との摩擦は避けたい意向で、慎重な姿勢も見せた。
全米制覇を果たした石井は、「米国での金メダルをかけて、鈴木桂治現王者と闘いたい。彼にその度胸があればの話ですけど。彼も自分に負けたまま終わりたくないでしょうし、柔道でも格闘技でもWiiでも何でもいいですよ」とブチ上げた。鈴木は29日の全日本選手権を4年ぶりに制したばかり。国士館大の先輩との対戦希望も、現実的には困難な話で、リップサービスにすぎない。
現在、プロとして上がるリングを失っている石井。柔道復帰はあくまでも、米国格闘技界へのアピールだ。「格闘技界にインパクトを与えないといけない」と語った石井。思惑通り、米国で活躍する場ができればいいのだが…。
(ジャーナリスト/落合一郎)