日本人メジャーリーガー史上初のヤンキースでのワールド・シリーズMVPという勲章を持つ松井vs9年連続200本安打のメジャー新記録を誇るイチローの対決に大喜びをしているのが、NHKと2人をCMに起用している企業だろう。NHK衛星のメジャー中継も完全にマンネリ。昨年の盛り上がりは3度だけ。イチローが張本勲氏の持つ通算安打日本記録の3085本超えを達成、9年連続のシーズン200本安打のメジャー新記録。そして、ヤンキース・松井のワールド・シリーズMVP獲得の三大イベントの時だけ盛り上がったものの、シーズン通しての話題性がなかった。
が、今季は3年連続地区優勝中のエンゼルスと久々に下馬評の高いマリナーズの優勝争いに、松井とイチローがどう貢献するかというチーム絡みの興味もある。日本人メジャーリーガー中継に食傷気味だったファンの関心が戻り、NHK衛星第1テレビは万々歳だろう。
松井vsイチローのCM対決も面白い。牛丼店、中古車販売店、トラクターなど庶民的なCMが多い松井に対し、一流企業のCMばかりというイチロー。こういう対比があったが、現在は珍しく同じ一流企業でCM競演をしている。イチローがビール、松井は缶コーヒーのCMだが、どちらも負けられないだろう。CM出演は人気の最大のバロメーターだからだ。
松井を缶コーヒーのCMに起用した企業には先見の明があったと評判にもなった。松井の去就がオフの球界最大の話題で、まだエンゼルス入りが決まっていない段階だったのに、ゴジラが火を噴くCM。エンゼルスのチームカラーの赤を先取りしたレッドゴジラだったからだ。
イチローに対するゴジラの大逆襲が勝負の焦点だけに、この企業の松井の起用はクリーヒットだ。日本球界では巨人の4番・松井がオリックスの天才児・イチローをしのぐ人気を誇っていたが、メジャーリーグでは立場が逆転。とくに2度にわたるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2人の野球人生は明暗を分けてきた。出場できず、ケガに泣かされてきた松井。日の丸を背負ってヒーローになり、CMキングになっているイチロー。今季は昨秋のワールド・シリーズMVP獲得の大偉業で巻き返しを始めた、赤いゴジラ・松井の大逆襲が最大の見所になっている。
イチロー効果もあって久々にビール業界のトップの座に返り咲いたこの企業、今度は松井の大活躍で缶コーヒーの売れ行きを爆発的に伸ばすのか。いや、松井vsイチローのどっちが勝ってもメリットはあるのだから、NHK同様に笑いが止まらないか。