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2010年 夏の甲子園ダークサイド情報(2)〜天才球児は高校で伸び悩む!?〜

 今夏の大阪府代表校は履正社に決まった。同校が勝ち上がっていく過程で、注目されたのは4回戦のPL学園戦だろう。両校は昨夏も準決勝で対戦している。履正社にしてみれば、その惜敗した相手のPL学園が甲子園行きの切符を勝ち取っただけに、「今年こそは!」の思いも強かったはずだ。この両校の激突は、延長10回表、履正社の主将・江原祥太内野手の一打で決まった。
 この好試合で注目された有名選手もいた。勧野甲輝一塁手である。彼は1年生から4番を任されることもあり、「清原2世」とも呼ばれた“プロ注目のスラッガー”だった。高校野球ファンなら覚えていると思うが、甲子園行きを果たした昨夏、彼は極度の不振で大阪府大会からベンチ入りできなかった。「最後の夏」に賭ける思いは人一倍で、履正社との試合では久々に「4番」に入ったが、ノーヒットに終わった。勧野は試合後、人目も憚らず号泣していた…。
 「プロでやりたい気持ちはあります」
 試合後の勧野のコメントだ。どうやら、『プロ志望届』を提出し、ドラフト指名を待つ気でいるようだ。しかし、筆者がPL学園OBのプロ野球選手に聞いた限りでは「今の力では(プロでやっていくのは)厳しい」と否定的な声の方が多かった。

 PL学園の練習は、他校と比べて『特殊』と言っていいだろう。
 学校の授業終了後に行われる練習は基礎体力と基本練習の確認であって、その時間、量は他の名門私立高校と比べても短い。練習メニューも一般の公立高校とほぼ同じだ。授業終了後から3時間弱で切り上げられる。では何故、PL学園は『強豪校』であり続けるのか? それは、夕食後の『個人練習』で全てが決まるのだ。
 PL学園の球児は夕食後、先を争って室内練習場に向かう。寡黙にバットを振る者もいれば、同僚にノックを打ってもらい、守備練習に時間を費やす者もいる。個人練習のメニューは人それぞれだが、時間にして3時間強。『全体練習』よりも長い。誰かに強要されたのではない。また、仮にサボッたとしても、咎める者はいない。たとえば、全体練習で指導者が打撃フォームの修正点を伝えたとする。各位は、それを『課題』とし、『個人練習』を克服していくのである。
 「いつまでもその課題が克服できなかったり、悪癖を修正できなかったら、指導者が遠回しに『諦めろ』ということを伝えるんです。全員、名門PLの門戸を叩くくらいだから、それなりに自信を持って入学したわけですが、自分で練習ができなければレベルアップできないんです」(OBの1人)

 甲子園ベスト8進出の実績を持つ有名監督は「一般論」と前置きしたうえで、こう言う。
 「それなりの素質を持った中学生はいくつかの高校からスカウトされたり、硬式野球クラブの指導者のルートで強豪校に進みます。だけど、その素質を本当に開花された球児は数える程度しかいません」
 素質を持った中学生球児は自信と、「オレは巧いんだ」という自負を持っている。たとえそれを口に出さない球児でも、高校指導者に叱られると、「分かってるよ〜」という態度を取るという。「練習してやっているんだ」と見下した言動を取るのだ。そのため、練習で全力を出さない。肉体的疲労や苦痛は味わうが、何処かで手を抜いているので、本当の意味で成長しないのである。
 野球に限らず、天才は早熟だ。プロに行ける素質を持った大多数の球児は“それなり”で終わってしまうという。
 「幸運にもプロ野球チームに指名された球児も、素質だけで野球をやっている子が多いですよ。高校在籍中、たまたま甲子園に出られて、目立つこともでき、ドラフトに引っかかったというか…」(前出・同)
 勧野選手に関しては、そういったおごった言動は聞かれなかった。PL学園の野球は『大人』である。その大人の野球に適応できなかったのか、スランプの壁を乗り越える前に3年間がおわってしまったのだろう。
 「越境入学が社会問題となり、ウチの高校は他県の有望中学生を勧誘するのを辞めました。むしろ、練習の雰囲気は良くなったような気がする(笑)」(関東圏の中堅指導者)
 天才を育てきれない指導者の側にも、問題があるのかもしれない。

 今夏、甲子園に駒を進めた高校の多くは「スター選手」がいても、「スーパースター」のいない『全員野球イズム』だ。興南・島袋、東海大相模・一二三が何処までやれるかも注目だが、ノーマークの無名校が旋風を巻き起こしそうな気がする。(スポーツライター・飯山満)

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