福留は今季「43試合・.154・1本・12打点・12安打」と不振にあえいだが、これまでに古巣の中日を筆頭に複数球団が代打を軸とした起用や、他選手への打撃指導といったメリットを見込み獲得調査を進めていると伝えられている。また、これらの報道では今季年俸約1億3000万円(推定)からどこまで減額に応じられるかも移籍実現に向けたポイントになるとみられている。
今季成績や来年44歳になることを踏まえると、各球団は少なくとも約1億円ダウンの5000万円以下の年俸で獲得を想定しているとみられている福留。ネット上には「これまで相当稼いでるから、多少の減額にはビクともしないだろう」、「年俸はいくらでもいいって気持ちなんじゃないの?」といった声が多いが、一方で一部からは「過去に大揉めしたことある福留が大幅減額に応じるのか?」といったコメントも挙がっている。
今季までのプロ22年間で、報道されている金額だけを見ても約75億円以上の年俸を受け取っている福留。どれだけ所属球団に評価されてきたかを如実に物語っているといえるが、過去にはその年俸を巡り球団側と“銭闘劇”を繰り広げたことがある。
騒動が起こったのは、中日時代の2006年オフの契約更改。当時プロ8年目・29歳の福留は、同年太ももの故障もあり16試合を欠場しながらも「.351・31本・104打点・174安打」で自身2度目の首位打者を獲得。この成績を中日側も評価し、オフの契約更改では前年から約1億2500万円アップとなる年俸約3億8000万円(同)を提示した。
ところが、交渉前から「評価は言葉ではなく金額」と大幅アップを暗に求めていた福留は、球団側の提示を受け入れずサインを保留。当時の報道によると4億円を希望していたという福留は、「言葉が出ませんでした。あ然とした」、「これ以上の成績を求められても僕自身苦しい。一番いいと思った年。その評価としてはちょっと低いと思う」、「『球団としては精いっぱい』と言われたが、いくら言葉で最大限の評価をしたと言われてもね」と公然と球団を批判した。
ただ、球団側も故障で16試合を欠場していることや、既に年俸約3億9000万円(同)で契約更改していた守護神・岩瀬仁紀を超える金額は出せないことを理由に譲歩せず。その後、複数回の再交渉を経て、既に春季キャンプが始まっていた翌2007年2月下旬にようやく年俸約3億8500万円(同)で両者合意に至った。
それまでの言動に加え合意後も「ユニホームを着て野球をしたいのでサインしました」と不服そうなコメントを口にした福留に対し、当時のファンは「4億近い年俸でも不満ってどれだけ銭ゲバなんだ」、「あんだけ好き勝手言っておいて結局500万しか上積みなかったのはダサい」と猛バッシング。なお、福留がそれまで2004年オフ、2005年オフと2年続けて契約更改でゴネていたこともバッシングが強まった要因とみられている。
こうした経緯があるだけに一部ファンから新天地探しが難航するのではと心配されている福留だが、どうしても現役を続けたいのであれば年俸の大幅減額は避けて通れないことは濃厚。昨季限りで阪神を退団しその後ロッテに入団した鳥谷敬は、年俸が前年の約4億円(同)から実に約3億8400万円ダウンとなる約1600万円(同)となっているため、福留も鳥谷と同程度の金額となることを覚悟しなければいけないかもしれない。
前述した通算成績をはじめ、実績・経験については申し分ない福留。かつて銭ゲバとまで呼ばれた年俸面のこだわりをどれだけ捨てられるかが移籍実現を左右するのかもしれない。
文 / 柴田雅人