「巨人がオフに予定していた補強の内容も変わってきそう。投手の補強を一番に考えていると聞いていたが、バッターも補強しないと…」
日本シリーズ第3戦を現地視察したプロ野球解説者がそう言う。
>>巨人、今オフの狙いは投手と強打の外野手?「国内FA市場にも参戦するつもり」決戦の裏で外部補強は進行中か<<
8回表、左のリリーバであるモイネロがマウンドに上った。一死一、二塁とチャンスを掴み、1番・吉川尚に打順が回った。吉川尚と次打者の2番・松原は左バッターだ。原辰徳監督は「代打攻勢」に出たが、打席に立ったのは、同じ左打ちの田中俊、重信。右打ちの中島、ウィーラーをスタメンで起用していたため、「右打ちの代打要員」が残っていなかったのだ。
「吉川尚、松原の1・2番が当たっていません。第3戦は9回2アウトまでノーヒット、1・2番の出塁率が悪い上に、坂本、岡本、丸の中核を担うバッターが揃って不振なのは痛い」(前出・プロ野球解説者)
左ピッチャーに対し、左バッターの代打を投入。プロとアマチュアを同等に語るのは乱暴だが、同日、福岡入りしていたメディアにも高校球界の名将・木内幸男氏の訃報が届いた。木内氏は取手二、常総学院を率いて甲子園春1回、夏2回の優勝、通算40勝を挙げている。来季からDeNA二軍監督となる仁志敏久氏など多くのプロ野球選手も輩出しているが、同じ高校野球の監督となった教え子も少なくない。
その木内監督が現役の指導者だった頃、教え子の率いる私立高校との対戦を取材したことがあった(茨城県大会)。試合は師匠の“貫禄勝ち”だったが、衝撃的だったのはベンチを引き上げた後のシーン。木内監督は教え子のいる相手校の控え室に出向き、「勝敗を分けた選手交代」の場面を叱った。
走者が得点圏に進んだ後、木内監督率いる常総学院の主力左バッターが打席に立った。教え子はそこでエースを諦め、左投手を救援に送ったのだ。その左バッターが救援投手を打ち砕いたわけだが、木内監督はその場面を指して、
「左対左なんて単純な交代をやるな。どんな投球で相手を仕留めるのか、その投球ができるのなら、右も左も関係ないんだよ」
と教えた。
選手を活かす起用。それが、木内監督の野球哲学でもあったようだ。
プロとアマチュアは、スケールもレベルも大きく異なる。日本の最高峰を争う試合に学生野球を重ねて見るのは失礼ではあるが、数少ない得点チャンスで代打起用された田中俊、重信は「攻略のプラン」をきちんと持っていたのか、疑問だ。
日本シリーズ第3戦の終了後、巨人・坂本勇人がベンチに座ったまま、しばらく動けないでいた。グラウンドの方を見つめ、何かを考え込んでいた。攻略のプランを明確にし、セ・リーグ覇者の意地を見せてもらいたいものだが…。(スポーツライター・飯山満)