過去160キロ以上の"マイル越え"をマークした日本人は、160キロの阪神・藤浪晋太郎、161キロのソフトバンク・千賀滉大、同じく161キロの当時ヤクルト・由規、そして165キロの大谷翔平しかいない大記録である。
10年目の今季はオープン戦からストレートが走り、今までの自己最速だった156キロを3月16日に157キロを出して超えて見せると、19日には158キロ、21日には159キロと立て続けに自己最速を更新していった。そして、6日の5回、打者ゲレーロに対する5球目の外角に外れたストレートが、161キロを記録。「スタンドが沸いていたので、どうしたのかな」と思った時に最速が計測されていたと振り返っていた。
オフシーズンは、ベイスターズが戦略的パートナーシップ契約を結んだオーストラリアン・ベースボールリーグの強豪チーム"キャンベラ・キャバルリー”で武者修行。家族と離れ、単身赴任で野球に打ち込んだ。実戦の中で鍛錬を重ね、フィジカルトレーニングで鍛え上げた結果、身体は一回り大きくなった。球速の大幅アップは、その結果の賜物だ。
ストレートだけではなく、110キロ台のカーブに、フォークも146キロで鋭く落ちるなど、他のボールもクオリティーが高い。何よりコントロールで苦しまなくなったことで、精神的に余裕が生まれている。力と技で押さえ込むスタイルは、まさに"マウンドを制圧する"との形容が相応しい。
今後、スピードについては「バッターと勝負する中で更新出来ればいいな」と、笑顔で語る身長196cmの大器はスター性も十分。「何年かくすぶっていた思いを、結果で返す」と、久々のヒーローインタビューで宣言した10年目の国吉の完全覚醒は、ベイスターズ投手陣の強烈なストロングポイントになる。
取材・文・写真 / 萩原孝弘