その影響だろう。ベテラン鳥谷敬(37)の扱い方をめぐり、意見が二分してしまった。
「巨人との3連戦はひどかったね…。連勝し、その後、巨人3連戦での全敗を含む4連敗。阪神投手陣が巨人3連戦で食らった本塁打は計8本、25失点ですよ。打線が低迷しているのに投手陣が踏ん張れなければ、勝てません」(在阪記者)
阪神の先発投手陣の軸は、メッセンジャー、ガルシア、西勇輝。3人とも、2ケタ勝利を確実に計算できる投手だ。その一人のガルシアを開幕カードではなく、巨人戦の初戦まで温存したということは、矢野監督は「巨人戦で3連敗しないローテーション」を組んだつもりでいたのだろう。
しかし、深刻なのは打線だ。矢野監督は巨人3連戦で全て打線を変更している。
「4番の大山が打率1割ですよ。期待していた新人の木浪がペナントレース開幕と同時に打てなくなりました」(前出・同)
木浪は「1番・ショート」で開幕スタメンを勝ち取ったが、そのバットから快音が聞かれない。その木浪とショートのレギュラーを争って敗れたのが、ベテラン鳥谷だ。しかし、鳥谷は開幕戦で代打出場し、チームをサヨナラ勝ちに導く三塁打を放っている。
「鳥谷が登場すると、スタンドのファンが盛り上がるんです。長くファンに愛された選手ですし、『まだスタメンで活躍できる』と思っている関係者も少なくありません」(プロ野球解説者)
矢野監督は不振の木浪に代わって、北條をスタメン・ショートで起用した。当面、鳥谷は代打要員ということになりそうだが、こんな声も聞かれた。
「鳥谷は今年6月に38歳を迎えます。問題なのは、鳥谷と交わした複数年契約ですよ。5年の契約は今シーズン終了と同時に終わります。残留は間違いないが、年俸をどうするか…」(球界関係者)
鳥谷は5年総額20億円の契約を交わしている。チームの功労者であり、今のチームのように負けが込んだときに強い存在感を見せるベテランはむげにできない。かといって、代打要員に4億円を払うほどの余裕は、球団にはない。鳥谷をどう評価すべきか、フロント上層部は悩んでいるのだという。
「もう複数本契約は交わさないでしょう。新しい契約の年俸が4億円以下となれば、マイナス査定という意味になります。2億円前後で更新するとしても、周囲がどう判断するか分かりません。代打要員に払いすぎだという声も出るかもしれない」(前出・同)
圧倒的な存在感を評価し、大盤振る舞いするか、それとも、シビアに査定するか。後者の場合、虎ファンが「功労者に冷たすぎる」と爆発する可能性もある。
「矢野監督が鳥谷をスタメンに戻したとき、起死回生のためのカードは全て出し切ったと見るべき」(前出・プロ野球解説者)
こうした状況を見ると、良くも悪くも、阪神は鳥谷のチームだということがうかがえる。
(スポーツライター・飯山満)