日本野球機構(以下=NPB)は2月26日、臨時の12球団代表者会議を開催する。新型コロナウイルスの感染防止(拡大防止)の対応策を話し合い、この先に予定されているオープン戦を予定通りに行うか否かを決める。「選択肢は、現状維持、無観客、中止、その他」と事務局長は語っていたが(同時点)、キャンプ地・沖縄の各球場入り口付近にはすでに消毒用のアルコールボトルが置かれており、センターバックスクリーンには「ご注意ください」の言葉が出ていた。
中止・延期を発表したイベント団体も少なくない。NPBもこのまま見過ごすわけにはいかなくなってきたのだ。
「巨人が2月29日、3月1日の主催ゲーム(東京ドーム)を『無観客試合にする』と、臨時代表者会議に先駆けて発表しました。これで同会議の話し合いが進めやすくなったというか…」(球界関係者)
プロ野球の興行はさまざまな企業が絡んでいるため、ゲーム主催球団だけでは決断できないという。簡単に言えば、広告出資した企業、テレビ中継、球場内での営業権を持つ企業などが絡んでいて、場合によっては違約金も発生するという。
それに対し、伝統球団の巨人が「無観客試合の決定」を早々に発表したことで、他球団は関係企業を説得しやすくなったそうだ。しかし、巨人も大きな痛手で被ることになりそうだ。
原辰徳監督は目下、売り出し中の育成選手、イスラエル・モタ外野手の支配下登録をほのめかしている。キャンプに訪れた同年代のプロ野球解説者に「(登録は)3人を予定している」と漏らしていたという。その第一号がモタであり、29日からの本拠地2連戦でお披露目をし、支配下登録の正式発表を盛り上げるつもりでいたそうだ。
「昨年オフは国内フリーエージェント市場での補強に失敗し、注目選手がいませんでした。そこに育成2年目のモタが急成長し、巨人のキャンプに関するニュースの主役級に躍り出ました。育成から這い上がったという経歴は日本人好みですし、強肩なのも魅力的です。ホームへの返球でファンを驚かすことのできる選手なので、人気が出そう」(スポーツ紙記者)
このモタの本拠地・東京ドームでの初陣が無観客試合となれば、営業的にも痛い。もっとも、無観客ということはライバル球団のスコアラーも球場入りできないわけだ。今は打撃面で絶好調だが、それが永遠に続くということはない。現時点では、無観客試合でオープン戦を消化していくとの見方が有力だ。
「関東圏でのオープン戦を無観客試合にすれば、どの球団も収入減は避けられません。今年はオリンピックによる変則日程となるため、興行成績を不安視する声も多く聞かれます。どの球団もより実戦的になってくるこれからのオープン戦で、新戦力の分析をするつもりでいたので、ペナントレースに及ぼす影響も大きくなりそう」(前出・同)
新加入選手の苦手コースを攻めることができなくなる。力と力の勝負も面白いのではないか? そう思わなければ、この危機的状況は乗り切れないだろう。(スポーツライター・飯山満)