その西荻窪に、喫茶スペースへのこだわりを持ち続けているカフェがある。JR西荻窪駅北口大通り沿い、善福寺川を過ぎた場所にある「多奈加亭ファームハウス西荻店」(たなかてい・西荻北5-25-16)。閑静な住宅地に造られた明るい外観の店舗だ。
多奈加亭を運営する「田中企画」専務の田中久美子さんに伺った。
多奈加亭はケーキやランチを取りそろえ中央線沿線に複数の店舗を持つが、もともとは紅茶専門店だった。現在でも、紅茶は、フルセットで出している。トレーには砂時計も乗せられ、一杯目はストレートで香りと味を楽しみ、2杯目以降、渋くなったらウォータージャグのお湯で薄めることを勧めている。しかし、かつては、「紅茶といえばミルクティー」「ミルクをどのタイミングで入れるのか」「あくまでもストレート」など顧客それぞれが紅茶へのこだわりを持っていた。
「世の中が変わり、人々のライフスタイルが変わり、そして、西荻の街も変わりました。でも、親子3代に渡って来てくださるお客様もいます」(田中さん)
西荻店のコンセプトは、健康・いやし・ゆとり。ほんの少しの時間でもつくろいでもらうため、奥にはゆったりとしたテーブル席も用意されている。ハーブ、ダージリン、アッサムなど、紅茶は20種類以上。また、ケーキは西荻店隣接の直営工場からできたてが運ばれてくる。ケーキのお勧めは、数量限定だが、「よくばりプレート」(630円)。日替わりのカットケーキが4つ乗せられる。田中さんが「お客様によっては、ボリュームがあり過ぎるかもしれません」と笑うお得なセット。
多奈加亭のケーキはすべてオリジナルで、工場と店舗で話し合いながら商品を開発してきた。顧客のお子さんが描いたイラストを工場でデコレーションした特製誕生日ケーキのリクエストなども受け付けている。近隣の住民をはじめ、小さなお子さんを連れた家族やアーティストたちで賑わっている。
武蔵野台地のなごりを残す杉並区では、現在、人間と自然が共生する街並み作りが進められている。善福寺川緑地の五日市街道沿いには、道路拡張工事の際、住民の要望で守られたケヤキ並木がある。多奈加亭ファームハウス西荻店からも歩いて行ける「坂の上けやき公園」にも、多くの人の想いが込められたケヤキの木が残されている。(竹内みちまろ)