小谷野は2002年にドラフト5位で創価大学から北海道日本ハムファイターズに入団。繋ぎの4番として主軸を任されるなど、主力として3度のリーグ優勝に貢献。2010年には打点王、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞するなど輝かしい実績を持っている小谷野だが、パニック障害に悩まされ、2006年の秋に行われたフェニックスリーグ(秋季教育リーグ)で、当時日本ハムの二軍監督代行だった福良淳一監督に「立ってるだけでもいいから」と打席に送られるなど、福良監督が親身になって小谷野に接したことが、後の活躍するキッカケになったのはテレビ番組でも紹介されたほど有名な話。
「福良さんがいなかったら僕は今ここにいないですから。福良監督を男にするためにオリックスを選びました」
2014年のオフにFA宣言し、西武との争奪戦になったが、小谷野の気持ちは初めから決まっていたという。2015年からオリックスに移籍した小谷野だが、死球によるアクシデントなど怪我の影響で、1年目は56試合と2年目は50試合の出場に留まり、怪我で悩まされ、本人も「何もできなかった」と悔やんでいたが、昨年は130試合に出場、打率.277、47打点と“オリの番人”として他球団から嫌がられる本来の小谷野が復活。シーズンオフには園部聡ら若い選手に声をかけて合同自主トレを行ったり、日本ハム時代から後輩の面倒見がいいことには定評があり、大谷翔平がメジャーで活躍していることに関しても「彼は人間的にも素晴らしいから成功するでしょう。翔平なら娘を嫁に出してもいいな(笑)。それぐらいいいヤツですよ」と笑顔で語っていた。
また、ファンに対してもアツイ気持ちを持っており、ヒーローインタビューでは「皆さんも一緒に戦いましょう」と度々呼びかけ、ファンもチームメイト同様、小谷野の言葉を信じて応援していた。昨年、東京ドームで行われた巨人との交流戦で3連勝を飾ったのだが、関東にもかかわらずファンの声援が凄かったことを本人に話すと「凄かったね。やっぱりああいう声援が、こういう結果になったと思うし、嬉しいよね」と語り、後に本拠地でヒーローインタビューを行った際にも「皆さんの声は聞こえています。皆さんの声援が僕たちの力になって、きょうのような結果につながるので、これからもご声援よろしくお願いします」とファンの声援が力になることを伝えている。
春季キャンプは2軍スタートだったが、これは福良監督と話し合って決めたことであり、「いつ上がるかは栄一に任せてある」と指揮官は話していた。その言葉通りキャンプ終盤に一軍に合流すると、シーズン序盤は昨年のような活躍を見せていたが、打撃不振に陥ると珍しく死球に激高する場面も見られた。8月7日に打撃不振により登録抹消。今シーズンで契約が切れることもあって、去就が注目されていたが、師匠である福良監督の退任が決まり、最終的に引退を判断したものと思われる。
現役通算成績は1393試合に出場、打率.264、1260安打、71本塁打、566打点。松坂世代の小谷野だが、今年は中日との交流戦で松坂との対戦も実現している。巨人の杉内俊哉、DeNAのG 後藤武敏、独立リーグの村田修一と松坂世代の引退が続いており、小谷野も加わることになってしまったのは残念。球団は来月5日に京セラドームで行われる本拠地最終戦のソフトバンク戦を、小谷野の引退試合として行う意向。当日は福良監督の最後の挨拶も予定されているので、ファンには温かく見送ってもらいたい。
今後も小谷野には指導者として選手の育成も期待したいところ。本人と球団首脳陣の言葉が注目される。
取材・文・写真 / どら増田