誰もが心を奪われ、太陽光線みたいに焦げ付くジョーに対し、月の光のように静かに冷たい存在感をあらわす力石徹。彼はマンガの登場人物ながら1970年3月に「天井桟敷」で有名な劇作家の寺山修司が発起人となって葬式が行われたり、「あしたのジョー」ファンからすごく慕われているキャラクターだ。しかし、ジョーと対戦するため過酷なダイエットで階級を下げたり、ヒロインのお嬢様には“男”と見られてなかったり、実はあんまりオイシクない一生を送る男。ジョーが織田信長なら、徳川家康みたいな役どころだ。
今回、力石を演じる事になった伊勢谷友介は、デザイナーの山本寛斎の親戚で、東京藝術大学美術学部大学院修士課程修了(芸大卒って事だよね?)という華麗なプロフィールの持ち主。ジャニーズのHと結婚が決まった女優のKと、かつて共演しお付き合いしていたが、すぐ別れた経歴がある。それからナゼかイケメンのはずなのに、生田斗真に変わる前のロッテ ロッテガム「ACUO」のCMでは「ひどく息の臭い男」をやらされていた。カッコいい割にはいままで日が当たっていない。
記者は彼が主演した「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(監督:三池崇史、2007年)は見てないけど、中谷美紀主演の『嫌われ松子の一生』(脚本・監督を中島哲也)では、松子の元教え子のヤクザ・洋一役がすごく上手かった印象がある。見た目もカッコいいし、演技も上手い伊勢谷はなぜブレイクしないのか、不思議に思っていたのだが、今回力石徹を演じるにあたって、原作ファンもなんとなく納得(というか許せる)の評価を得ているらしく、この出演がきっかけで“ブレイクの兆し”が見える。
実力もあり、華がありすぎる伊勢谷友介。主人公・矢吹丈(ジョー)役・「NEWS」の山下智久がジャニーズでなければ、伊勢谷がジョーを演じてもいいぐらいの俳優だ。このままでは実写版「あしたのジョー」が“ライバルの魅力が主人公を上回る”映画的には「最悪な結果」になりかねない。くれぐれも映画のためには、伊勢谷はジョー役の山Pを“食わない程度”に演技するしかないのではないか。(コアラみどり)