平日だが、それなりに人通りは多い。数寄屋橋交差点の交番には10人近い警官がいる。すぐ近くにも銀座4丁目交番がある。ここは秋葉事件の現場に比較的近いこともあるのだろうが、こういった厳戒体制ではひったくり事件など起きようもない。
「ここの治安はいいですが、7丁目には交番がないから狙われる」(お巡りさん)
ということで、いよいよ銀座のクラブ街である新橋駅最寄の銀座7丁目方面へ歩を進めた。
まずは、銀座駅近くにも裏通りに高いクラブがたくさんある。ここらへんの店もいわゆる銀座のクラブ、だ。途中で東南アジア人の着物のホステスとすれ違った。
やがて到着。福沢諭吉のつくった交旬ビルの周辺には、紫のパンプス、穴の開いたデザインの網タイツのようなストッキング、金髪のトサカ、などなどそれぞれがひとめで夜の女とわかる女性たち、それに着物の女性たちなどがご出勤の途であった。
中で抜群に綺麗な女性たちは、黒いワンピースに黒髪をかっちりと“ふんわり夜会”(謎)風の髪型が主流の様子。みな化粧はそれなりに濃い目だ。
それにしても誰もひったくり事件を知らなかった。見事なまでのいわゆる“空振り”。ライターにとってもっともつらい状況である(笑)が、結局ひったくりはあまりない、という結論でいいだろうか。
最後にヤナセの前の店のシスタ系推定177cm、ガングロだが綺麗なホステスさんにも聞いてみたが「ここは銀座ですからね…(ひったくりなんてね)」と軽くあしらわれる。
慣れない銀座観察を続けるうちに、時刻はもう7時30分過ぎ。同伴出勤の相手のおじさん達も、心なしか銀座族は品がいいようだ。それと30代サラリーマンとホステスの組み合わせがけっこう多いようだ…。
背広にピンクのネクタイ、ちょんまげの関取風も夜の遊びのご出勤、そんな光景を眺めながら帰路に就く途中、7丁目最寄の新橋駅近くで、「エクスキューズ・ミー.キャン・ユー・スピーク・イングリッシュ?」と後ろから声をかけられた。
しつこくついてくる男に仕方なく、はい英語少しだけ、そう告げるや、
「アイム・フロム・インディア.アイ・ハブ・ノー・ジョブ.アイム・ハングリー」
見た目は普通のインド人であった。
冗談じゃない、と思い、
「ア、ア…アイム・ノット・エンプロイヤー.プリーズ・ゴー・トゥー・ポリス!」
まったく似合わない外人風身振り手振りもなぜか織り交ぜてしまいながら、一蹴した。
と、男は(なんだよ)というような険しい顔をしたが、すぐ残念そうに去っていった。一瞬そういう助け合いの習慣が向こうではあるのか? などと考えたが、だけど、どうすることも出来ない。
日本>東京>銀座、みたいな安易な絞込みで、ここに流れて金を手に入れようとするのは、ある意味、各地でさまざまな金を取る計画を立てては同じようなことをしてきた少年たちと一緒の行為であろう。金離れがよさそうな街・銀座は常に狙われるのかもしれない。
しかし、銀座のタクシーも現在は近隣の上野方面の飲み屋街に流れていっているようだ。そんな不景気に、悪いやつらの思惑通りにはいかないのではないだろうか。(了)