2003年7月11日、福岡県警中央署は、福岡市内に住む無職男性、守口信一を殺人未遂容疑で逮捕した。被害にあったのは、同じアパートに住む71歳の中島譲さん。
実は2人は、少し前までは親しい友人の間柄だった。
守口はかなり以前に妻と離婚し、単身で3年ほど前に事件のあったアパートに引っ越してきた。そのアパートには、すでに8年前から中島さんがやはりひとりで暮らしていた。
同じひとり身で、しかも年齢が近いことなどもあって、2人は次第に親しく付き合うようになっていったらしい。
ところが、その高齢者2人の関係に変化の兆しが訪れたのは、その年の1月頃からだった。守口の部屋に、26歳の若い女性がやってくるようになったのである。
その女性の素性や、どうやって守口と知り合ったかなど、詳しいことはわからない。守口は「たまたま近くの公園で出会った」などと言っているらしい。
事情はともかく、その26歳の女性は頻繁に、多いときには毎日のように守口の部屋を訪れていたという。そして、その親子どころか祖父と娘ほどに年の離れた間柄にもかかわらず、どうやら2人は男女の仲として交際していたらしいという証言もある。
その女性だが、近所の住民によれば、「化粧っ気もまったくない人で、服装もすごく地味。あまり話さないし、あいさつもしないので、傍からみていると陰気なくらい」とのことだ。
そして、朝の8時頃になると彼女は守口の部屋にやって来て、夕方には帰っていくのがパターンだったらしい。
その女性と付き合うようになって、守口の生活は変化していった。以前は着古したシャツ程度だった服装が、スーツ姿で外出することもしばしばとなる。
そして2人で出かけることも多くなり、その際にアパートの住民に会うと、実に生き生きとした表情をみせた。
さらに、守口が近所の住民などに「若い子と付き合っている」などとうれしそうに話すことも多くなったという。趣味の釣りに彼女を連れて行くこともあった。
しかし、そんな守口の楽しい男女交際も、そう長くは続かなかったのである。(つづく)