新・正遊撃手は大和(27)−−。大和は秋季キャンプでショートの守備練習を始めている。阪神首脳陣は常に「鳥谷がメジャーに移籍した場合…」と前置きしていたが、和田豊監督(52)は上本博紀(28)との二遊間コンビも予定しているという。そんな『和田構想』に「待った!」を掛けたオトコが現れた。西岡剛(30)である。
話は、阪神電鉄主催のパーティに逆上る(11月28日)。和田監督は川藤幸三OB会長、掛布雅之DCとのトークイベントで、こんな質問を受けた。
「鳥谷選手のメジャー移籍が決まったとき、どうするのか」
和田監督は苦笑いを浮かべたが、こう言い切った。
「西岡をどうするか…。外野もできるのかな? 彼はずっと二遊間を守ってきた選手だし、プライドもあるので、しっかりと話をしたい」
この時点で、西岡の外野コンバート案は報じられていた。同22日のファン感謝デーでは「オレは一切言っていない」と完全否定していたが、実際は違った。
もっとも、本人と話をする前にチーム構想をメディアに喋るのは芳しくない。発言の撤回は『気配り』と見るべきだが、12月5日、西岡は自身の契約更改を終えた後の会見で、
「二遊間というのにこだわっていく」
と訴えた。
トークショーでの和田監督の発言は伝えわっているはずだ。
阪神に詳しいプロ野球解説者がこんな話をしてくれた。
「14年シーズン、西岡は開幕カードで故障し、長期離脱しています。復帰後、三塁でスタメン出場しましたが、『三塁手・西岡』に対する首脳陣の評価は、記録に残らないエラーも多いというものでした。三塁は俊敏性が不可欠なポジションです。急造三塁手の西岡以外の内野手が守っていたら、レフト前ヒットにならなかった打球もあったという意味ですよ。右肘を故障し、オフにメスを入れた経緯もあり、外野にコンバートした方が良いと判断したようですね」
西岡のスピードと肩の強さなら、外野手部門でゴールデングラブ賞に選ばれた大和にも勝るとも劣らない守備を見せてくれるはずだ。
先のトークショーで和田監督が『中堅手・西岡』の構想を明かした直後、掛布DCがマイクを握った。
「西岡を説得するのも、監督の手腕ですね」
和田監督は笑っていたが、「余計なことを言ってくれるな」の心境だったのでないだろうか。西岡に配慮し、直接談話の機会を伺っていたとき、球団編成は中島裕之内野手(32)の争奪戦に奔走し、一方で、守備に定評のあった森越祐人内野手(26=前中日)を獲得した。北條史也(20)の成長も報告されている。外野コンバートは「打線から外せない」というメッセージでも含まれていたようだが、西岡には西岡の野球人生がある。
西岡がプライドを捨てられなかったとき、“和田監督の手腕”に疑問符が付くのだろうか。(スポーツライター・飯山満)