トラ渉外担当者の“眼力”は、さすがとしか言いようがない。
しかし、『先発=最多勝』『セットアッパー=ホールドポイント』『クローザー=セーブ』の投手3部門を制覇したものの、トラの投手陣は「再整備が不可欠」と言わざるを得ない。
まず先発陣だが、先発した投手の勝ち星だけで見てみると、50勝52敗。2012年から『3年連続』で負け越している。もっとも、今季20試合以上に先発登板したメッセンジャー、藤浪晋太郎、能見篤史、岩田稔の4人だけで見た場合は42勝39敗。「ローテーションの5番手がしっかりすれば…」と、来季の球団創設80周年に期待する考え方もできるが、能見は9勝13敗と負け越していて、最多勝のメッセンジャーも10敗を喫している。エース候補の藤浪が稼いだ貯金は『3』。岩田は『1』。ライバル巨人のエース・菅野智之は12勝だが、負け数は『5』。故障で離脱したとはいえ、登板した試合の『勝率』が高い。阪神打線には首位打者と打点王がいる。試合序盤に失点があったとしても、巻き返せるはずだ。阪神先発投手陣の勝率はもっと高くてもいいのではないだろうか。
要するに、投打が噛み合わないチグハグな試合が多かったとも解釈できる。
また、防御率は昨季の3.07(リーグ1位)から、3.88(同5位)まで落ち込んだ。失点は614。過去10年を逆上って見てみたが、600失点以上を記録したのは、今季と10年シーズンの2季。大量失点の試合が多かったということは、メッセンジャーが投げても、「今日は絶対に落とせない」「アイツが投げるのだから、今日は勝てる」という士気が沸いてこないからではないだろうか。『チームの勝ち頭』が助っ人ではなく、生え抜きの能見か藤浪であれば、ペナントレースの結果は違っていただろう。
もっとも、藤浪は3連戦の初戦を任されることが多く、エース対決の厳しい試合が続いた。その藤浪がさらに成長し、3連戦の初戦を高い勝率で抑えていけば、チーム全体に勢いが増して来るはずだ。それは同時に、対戦チームの「エースを叩く」というダメージも与えることになる。
外国人選手が活躍しなければ、長いペナントレースは乗り切れない。『エース』『4番』『クローザー』はチームの心臓である。80周年を優勝で飾るための最優先事項は『補強』ではなく、『藤浪のレベルアップ』ではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)