「ある程度のチーム情報の流出は覚悟しなければなりませんね」(プロ野球関係者)
見方を変えれば、『戦力として十分に見込める若手』が解雇されたとも捉えられる。その中日はトライアウトで好投した左腕・八木智哉投手(31)、福岡ソフトバンク育成の亀沢恭平内野手(26)の獲得を発表した。阪神が獲得した森越を切って、育成の亀沢が…。2人の差がどこにあるのか、また、大量解雇に踏み切った中日の決断が正しかったのか否かは、来季のペナントレースが終わるまで分からない。
しかし、阪神が内野手を獲得したのは興味深い。
「森越は内野ならどこでも守れますが、本職はショートです。打撃はイマイチですが、守備センスは一軍のレギュラー遊撃手と比べても引けを取りません。良い補強だと思います」(プロ野球解説者)
森越は中日の地元・愛知県の出身。愛知啓成高、名城大を経て、10年ドラフト会議で4位指名された。高校、大学時代から守備には定評があったが、「ショートが本業」と聞いて、ピンと来るのが、主将・鳥谷敬(33)の去就だ。
森越の獲得が発表された2日前(17日)、阪神は鳥谷と残留交渉を行っていた。阪神側が提示した慰留条件の詳細は不明。だが、推定年俸3億円からの大幅昇給はもちろん、『将来の監督手形』も提示されたという。
「鳥谷が海外FA権を行使した直後、スコット・ボラス氏と代理人契約を結んでいます。代理人契約の情報を掴んだ時点で、阪神は鳥谷の退団を半ば覚悟したような雰囲気でした」(前出・関係者)
ボラス氏と言えば、松坂大輔(34=前メッツ)の代理人として日本でも名を馳せた“豪腕交渉人”だ。当時、松坂がレッドソックスと結んだ「6年総額5200万ドル」の超大型契約に日米がド肝を抜かされたが、今回、阪神が恐れた理由は敏腕ぶりだけではない。
「今オフの米FA市場が注目するナンバー1投手は、デトロイトタイガースからFAとなったマックス・シャーザーです。昨季、最多勝とサイ・ヤング賞の2冠に輝き、今季も18勝(5敗)、252奪三振をマークしました。そのシャーザーの代理人がボラス氏なんです」(前出・同)
米国人ライターによれば、タイガースは昨年オフ、14年シーズンで契約が満了となるのを見越して、このシャーザーの放出トレードを画策したという。エース放出が検討された理由もやはりボラス氏もあり、「残留交渉にメチャクチャなカネが掛かる」と恐れたのだ。ボラス氏は昨年オフの時点から「7年2億ドル」をチラ付かせていたが、
「シャーザー獲得を狙う球団との交渉で、鳥谷との“抱き合わせ”もある」
と、メジャー球団側も出方を警戒している。
「鳥谷に興味を持ち、純粋に彼を評価しているチームもあります。たとえば、内野手が不足しているブルージェイズがそうです。でも、シャーザーの交渉の場で、鳥谷の名前を出されたら、相手球団は『鳥谷獲得がシャーザー獲得の条件』と解釈するでしょう」(米国人ライター)
こうした『抱き合わせ戦術』は、複数のメジャー選手を抱える代理人の常套手段でもあるのだ。鳥谷の去就は12月の米ウインターミーティングの終了後になる見込み。阪神が鳥谷だけにこだわり、米球界流出が決まった場合、後任遊撃手が補強できなくなる。
日本帰還が伝えられる中島裕之内野手(32)も、代理人をボラス氏に変えた。ボラス氏は日本の一部メディアに対し、「阪神以外の日本球団が好条件を提示した」とも答えている。阪神は中島にいち早く接触していたはずだが…。トラはこのボラス氏に振り回されていると言っても過言ではない。森越獲得は、鳥谷流出と中島の獲得失敗の両方に備えた“保険”でもあったようだ。
【訂正】文中誤りがありました、訂正してお詫び致します。