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連載ラノベ 夢ごこち(25)

 夕食は、伯母さんが作っておいてくれたカレーライスで済ませた。健太君は、あまり量は食べなかった。

 ラジオのニュースで、台風のことを盛んに告げている。台湾を過ぎ、沖縄が暴風域に入った。進路は予想と変わらず。台風は真っ直ぐに四国へ向かっている。速度が増しているそうだ。一日か、二日のうちに、ここに来る。

 夕食のあと、土間の横にある台所で食器を洗った。ちょうど洗っている時に、土間の端に立てかけてある、たらいが見える。小さかったころ、私も何回か、あのたらいで行水した。

 できるかどうか心配だったけど、土間の釜を三つとも使って、大鍋でお湯を沸かしてみた。沸騰してから、たらいに空けた。バケツの水を足して温度を調節した。

 健太君は、どのくらいの湯加減がよいのだろう。私は熱いお湯が好きだ。つかっていると、お腹も、足の方も、じんわりしてくる。けど、芯まで温まってしまうと、浴衣を着たあとに汗がひかない。体じゅうがぽかぽかして、ほほが火照ってきたくらいでお湯から出るのがよい。寝間着のまま、縁側で過ごす時間が好きだ。

 でも、今日は健太君一人なので、もう少し、水を足した。このくらいでよいのかはわからないけど、熱かったら、またそのときに注ぎ足そう。

 健太君は、夕食のあと、部屋に行ったみたいだ。何をしていたのかわからない。一度も顔を見せなかった。

 けど、夕食では、先にカレーを食べ終わった健太君は、私が食事を終えるまで、居間のテーブルに座って待っていた。この家では、いつもそうしているのかな。おばあちゃんはお茶を飲むとき、ズズっと音を立てる。でも、健太君は、牛乳を両手で持って、ゆっくりと、少しずつ静かに飲んだ。けど、飲み終わって健太君がコップを置いたら、鼻の下に、牛乳の白いひげができていた。

 「健ちゃん、ひげがついてるよ」
 そう言いながらタオルで拭いてあげた。とたんに健太君は、なんだか、もじもじして、顔をそむけてしまった。恥ずかしかったのかな。

(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)

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