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長州力がファイナル興行でプロレス界に残したかったことは何か?90年代の熱気が再燃!

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長州力、藤波辰爾

長州力ファイナル興行
『POWER HALL 2019 New Journey Begins』
▽26日 東京・後楽園ホール 観衆 1797人(超満員札止め)

◎THE FINAL RHAPSODY(60分一本勝負)
●長州力&越中詩郎&石井智宏(17分29秒 片エビ固め)藤波辰爾&武藤敬司&真壁刀義○
※キングコングニードロップ

 プロレスラー“革命戦士”長州力が26日、東京・後楽園ホールで、ファイナル興行『POWER HALL 2019 New Journey Begins』を開催し、メインイベントで“ファイナルマッチ”を闘った。

 長州は新日本プロレス現場監督時代の1998年1.4東京ドーム大会で一度引退をしている。本人の意向もあり、今大会では「引退」と表現していない。その後、“邪道”大仁田厚による執拗な挑発に根負けする形で、2000年の7.30横浜アリーナ大会で電撃復帰。新日本を退団し、WJプロレスを旗揚げするもWJが崩壊すると、再び新日本で現場監督として復帰。近年ではプロデュース興行をしながら、フリーとして各団体に参戦していた。

 1度目の引退が超満員の東京ドームだった長州にとって、今回のファイナルマッチの会場が後楽園だったのは、さすがに小さ過ぎたのか、昨年末に大会が発表されると、チケットは発売と同時に即日完売。追加分もすぐ売れた。「1人でも多くのファンにファイナルマッチを見てもらいたい」という関係者の思いから、全国27スポットの映画館でパブリック・ビューイングによる生中継が行われた。

 18時30分の試合開始の時点で、客席、立ち見ともに9割は埋まっており、ロビーや各スペースはレスラーや関係者、マスコミ、ゲストであふれた。後楽園ホールにとって今世紀最大の入りになったのではないだろうか。会場はアンダーカードから熱気にあふれていた。バルコニーの立ち見スペースからは、90年代にはよく聞かれたほほ笑ましい野次も飛び出すなど、お目当てのメインイベントに向け懐かしい雰囲気をファンが作り上げていったのは間違いない。

 メインの前に休憩時間が設けられ、アンダーカード6試合の間に大会記念Tシャツは完売。休憩時間ではあらゆるところでファンや関係者が“懐かしの”再会を果たす場面が見受けられた。

 休憩明け、まずファンを喜ばせたのは、長州の盟友であり、ライバルでもある天龍源一郎氏。テレビのゲスト解説として、入場テーマ曲『サンダーストーム』とともに大・天龍コールを背に受けながら実況席へ。続いて、場内のスクリーンに90年代のテレビ朝日系列『ワールドプロレスリング』のメイン実況を務めた辻よしなりアナウンサーが大写しにに。どよめく観衆は久々となる辻節に聞き入っていた。これは80年代の新日本ファンが古舘伊知郎アナウンサーに抱く気持ちと同じである。

 サプライズはここで終わりではない。煽り映像の後、リング上にスポットが当たると、そこには新日本80〜90年代の黄金時代の顔だった元新日本の田中ケロリングアナウンサーの姿が。レフェリーのタイガー服部も上がっている。舞台は完全に整った。

 「45年、ここに迎えし闘い納め、そして新たな旅立ち、午後8時26分!時が来た!」

 田中リングアナの前口上に続いて、武藤、越中、真壁、石井、藤波、そして最後は「心に刻め!ファイナルパワーホール!」の声で長州が入場。田中リングアナによる試合の前口上は「多くの心をつかみ、走り続けたプロレス。2019626、白いリングシューズを脱ぐ時。さあ見納めだ!45年間のメインイベント、60分一本勝負を行います!」だった。真壁と石井は言うまでもなく、現役の新日本の選手。新日本がこのクラスの選手を“派遣”するのは珍しく、田中リングアナが新日本勢をコールするのはかなりレアである。

 試合は長州と藤波の“名勝負数え唄”から始まると、なんと長州が“掟破りの”ドラゴンスクリューを決め、いきなりファンの度肝を抜いた。この日が1年3カ月ぶりの国内復帰となった武藤だが、人工関節の手術をした膝の影響を感じさせない動きを見せる。藤波や越中もコンディションが良く、真壁と石井は新日本で見せているようなエルボー合戦を繰り広げるが、レジェンドたちの存在感が強過ぎたか、客層の違いがあるからか、普段とは少し違う観客のリアクションの中、最後はしっかりと盛り上げてみせた。現在進行形の新日本を90年代のファンに見てもらう機会はめったにないだけに、これも長州から2人の弟子に送られた最後のプレゼントになったのではないだろうか。試合は、真壁のキングコングニードロップを3回返した長州が、4発目に沈み、かつての付き人である真壁が長州に引導を渡した。

 「今からUターンして、家族のもとに帰ります」

 ファイナルマッチを終えた長州は、今まで私たちに見せたことがないスッキリした笑顔で冗舌に話した。驚いたのは「私にとってプロレスは何だったのかなと振り返りますと、全てが勝っても負けても私自身はイーブンです。ホントにイーブンでした。ただ、今からひとつだけお願いがあります。どうしても勝てない人間がいました」と、奥様の英子さんをリングに上げたこと。新日本の現場監督時代、女子とのミクスドマッチをやらせなかった長州力の面影はなく、長州が本当にリングには帰ってこない覚悟を持っている証を見せた場面だった。

 「やっぱり90年代ってすごかったんだね」

 これは会場を後にするファンから聞かれた声。ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのグッズを全身にまとっていた。おそらく現在の新日本ファンで、真壁や石井を観戦しに来たのだろう。会場にいた人間なら誰もが今のプロレス会場とは違う“熱”を感じたはずだ。

 今後は藤波や武藤たちが長州の穴を埋めていくことになる…と言いたいところだが、この日もプロレスリング・ノアのGHCヘビー級王者、清宮海斗がプロレス界の未来を、真壁と石井が現在進行形のプロレスを見せて、会場に“熱”を生んだのも事実。ここはレジェンドと現在、そして未来のスターが一体となって、日本のプロレス界を盛り上げてもらいたい。それが今大会で長州が残したかったものだったのではないかと思うのだ。

取材・文 / どら増田
写真 / 萩原孝弘

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