武藤敬司がプロデュースする「プロレスリング・マスターズ」の第5回大会が行われた。“プロレスの達人“が集結する“レジェンドだらけ“の興行は過去の大会でも札止めを記録。世間の注目度は高く、今回もチケットは早々にソールドアウト。超満員の後楽園ホールは、開始前から熱気であふれていた。
セミは”往年の新日本プロレススーパースターズ”獸伸サンダー・ライガー、長州力、藤波辰爾の3人と、”UWFの遺伝子”冨宅飛駈、長井満也、藤原喜明。セコンドに”格闘王”前田日明がつく豪華な6人タッグが組まれた。
試合は序盤から長州のサソリ固めがさく裂。藤原はコーナーのガードを外して自らヘッドバットをし、石頭ぶりを見せつけた。その後もライガーの掌底、藤波のドラゴンスリーパーなど、オールドファンにとってはヨダレものの攻防が続いた。途中、藤原がコーナーの椅子に座り込む前田にリングに上がるよう促すと、会場は大「前田コール」に包まれ盛り上がったが、前田が試合に介入することはなかった。
最後は6月26日に引退を決めている長州が、冨宅に渾身のリキ・ラリアットを叩き込み勝負あり。最後の参戦になるマスターズのリングで、有終のスリーカウントを奪った。
試合後、リングに上がった前田はマイクを持って観客に「ありがとう」とあいさつ。しかし長州はラリアットを仕掛けるふりをし、幾度となく復帰を促している藤波は”ジャケットを脱げ”とアピールするなど、元気な先輩たちに押され気味の前田は苦笑いを浮かべリングを後にした。
試合後の囲みで藤波は「リングには上がった。もうちょっとで背広を脱がせる。リングに上がったら目つきが変わった」と、引き続き復帰させる考えを示したが、前田は「俺は引退試合をやったんで…」と前向きな言葉は聞かれなかった。
メインでは武藤敬司率いるBATT、大谷晋二郎、新崎人生、太陽ケア、ドン・フライ組と、蝶野正洋率いるTEAM2000、ヒロ斎藤、スーパーJ、小島聡、天山広吉組が対戦。この試合もセミ同様、ヒロのセントーン、天山のモンゴリアンチョップ、人生の拝みロープ渡り、小島の”行っちゃうぞバカヤロー”エルボー、大谷の顔面ウォッシュなど、懐かしのテクニックが目白押し。セコンドの両雄も黙っているわけがない。蝶野はケンカキック、武藤もドラゴンスクリュー、シャイニング・ウィザードなどを繰り出し試合に介入。会場は大いに沸いた。
しかし最後は、椅子を手にしたフライがまさかの味方のケアに攻撃。それを受けて小島がラリアットを炸裂させ3カウント。17分強の熱戦に終止符が打たれた。
リングで蝶野は「かつて新日には神がいた。マスターズにはキング武藤がいる。キングとは詐欺師だ!お前らはだまされている」と時事ネタをぶっこみ「T2000がマスターズを防犯する。武藤をしっかりとチェックする」と宣言した。
囲みで武藤は、フライの裏切りについて「俺の人望のなさ」と自嘲気味に話しながらも笑顔で「エネルギーをもらった。早く復帰したい」と前を向いた。
一方蝶野は「ドンはもともとT2000の立ち上げメンバー。絆がある」と裏切ったのではなく戻ってきただけと強調。武藤に関しては「(手術後の)膝の経過も良さそう。リングに上がってほしい。選手は純粋だが、裏方に行けば行くほど悪くなる」と言いたい放題。「T2000はまだまだメンバーがいる。何かあれば顔を出す」と、今後も活動を広げる考えを示した。
まだまだ元気なリビング・レジェンドたちによるプロレスリング・マスターズ。プロデューサーの武藤は「夏にもう一発やりたい」と発言。次回も達人による奥深いプロレスが見られそうだ。
取材・文 ・ 写真/萩原孝弘