「東京マガジンバンク」の所蔵雑誌数はなんと1万誌! 秋までにはさらに約1万6000誌、120万冊まで充実させる予定。そうなると、国立国会図書館を除けば、大宅壮一文庫(東京都世田谷区=約1万誌70万冊)を上回り、国内最大の雑誌図書館になるという。
書棚に並ぶあらゆる雑誌のなかでも、特に海外雑誌の種類が突出している。フランス版「ELLE」に、世界で最もメジャーな黒人向け米国雑誌「Ebony」、ドイツ週刊誌「Stern」、英国で180年以上の歴史を持つ週刊誌「The Spectator」、米スポーツ週刊誌最大手の「Sports Illustrated」などなど。これら知る人ぞ知る海外有名雑誌の最新号が読めるのだ。外国語を専攻する学生はもちろんのこと、日本在住の外国人にとっても待ちに待ったサービスといえる。
同館では貴重な創刊号約3000誌のコレクションも所蔵している。篠山紀信氏が撮ったケレン吉川さんが表紙の「JJ」創刊号(1975年)の実物を手にとって見ることのできる図書館はそうない。ページをめくればもはや死語となった「大特集ニュートラ あなたもニュートラをはじめよう」の文字が郷愁を誘う。そのほか「右手にジャーナル、左手にパンチ」と言われた「朝日ジャーナル」(59年)と「平凡パンチ」(64年)をはじめ、「アンアン」(70年)、「ぴあ」(72年)など、マニア垂涎(すいぜん)の創刊号がズラリだ。
しかし、雑誌不況の時代になぜ“雑誌バンク”なのか? 都直営の図書館は同館を含めて現在3館あるが、同館の瀬島慶子課長補佐は、都立図書館としての役割を問い直す時期にきていたと語る。
「近辺の図書館も充実してきたなかで、普通の図書館にはないものを作って差別化を図りました。区や市の図書館とお互いに刺激し合えればいいですね」
館内には文庫本や事典なども少ないながらも置いてある。雑誌の貸し出しはできないが、利用は都民に限らず無料。コピー(有料)もできる。
「分厚い雑誌は売れない時代になりましたが、雑誌の時代が終わったわけではない。雑誌にはそれぞれの時代・世相を反映する面白さがあります。実は1万6000誌中、約1万誌がすでに廃刊したものですが、今後も置いていきます」(瀬島さん)
これまで、際立って特色のある公共図書館はほとんど存在しなかった。廃刊となった雑誌を読みたいがための遠方からの利用者も多数見込まれるほか、新聞・出版の業界関係者の注目度も高い。利用者の約7割をマスコミ関係者が占める大宅壮一文庫のように、業界人御用達の図書館にもなりそうだ。(関 淳一)
「都立多摩図書館」東京都立川市錦町6-3-1(西国立駅より徒歩10分)。開館時間=平日9時半から19時、土日祝は17時まで。