さて、紅白歌合戦にまつわる放送事故だが、50年以上に渡る放送期間の長さ、そして生放送ということもあり、これまで数多くの放送事故が発生している。
中でも、最も視聴者の関心を引いた(心配した)とされるのが、1981年に放送された第32回の紅白歌合戦における北島三郎の猛吹雪事件であるという。
その紅白歌合戦にて、北島三郎は大トリでの出演であり、代表曲である『風雪ながれ旅』を歌唱した。タイトルの通り、『風雪ながれ旅』は北の大地の冬景色を描いた歌であるのだが、後半、美術スタッフが用意した雪に見立てた紙吹雪が大量に降り注いだ。その紙吹雪の量は、北島や他のスタッフが想定していた以上に多かったようで、あたり一面真っ白になり、何も見えなくなってしまった。
北島は口の中に入る紙吹雪で、声が出づらい状況にあったが、なんとか歌い切り、その回の紅白は「伝説の紅白」と呼ばれるまでになったのだが、この演出が好評だったのか、北島がNHKで『風雪ながれ旅』を歌う際は「いつもの3倍以上の紙吹雪を用意する」という暗黙の了解が誕生したという噂がある。
また、近しい例だと、テレビ朝日系の音楽番組『ミュージックステーション』での嵐の「Sakura」が挙げられる。
2019年7月5日、嵐は「Sakura」を熱唱したのだが、ラスト1分、演出効果として大量の花びらが舞ったところ、それが嵐のメンバーが想定していたより大量で、マイクに雑音が入るなどのハプニングが発生し、以来、「Sakura」での花吹雪の演出は控えられることになったという。
何事も「やりすぎはよくない」ということなのかもしれない……。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)