これは、本来そこにいてはいけないスタッフやキャストが映り込んでしまう事故のこと。人間が作り出したフィクションの空間であるテレビドラマは常に「映り込み」との戦いであるといえよう。
そんな映り込み現象で比較的有名なのが、1966年に放送されたTBS・円谷プロ制作の特撮ドラマ『ウルトラQ』の特撮シーンに、スタッフらしき人間の手が映り込んだ事件であろう。
『ウルトラQ』の第9話「クモ男爵」は最後、クモ男爵が住んでいた館が火事で崩壊するシーンが描かれるのだが、その崩壊するシーンで、巨大な蜘蛛の怪獣よりもさらに大きい人間の手が映り込んでいたのだ。
ミニチュアセットを崩壊させる際、人間の手を使ったものの、現場のミスで映ってはいけない人間の手が映り込んでしまったようだ。
この映像は、しばらくLDやDVDにもそのまま収録されていたが、CG処理が発達したこともあり現在は手が消された状態のものを見ることができる。
また、2004年のホラー映画『感染』(落合正幸監督)で「女の幽霊が映り込んだ」と話題になったことがある。この映画の中盤あたりで、看護師役の星野真里が注射を打つシーンで、星野の背後に険しい顔をした女性が幽霊のように立っていたのだ。
このシーンは星野以外に出演者はいなかった。ホラー映画ということもあり「撮影現場に本物の幽霊が現れた」と話題になったのだ。
なお、この幽霊の正体は『感染』に出演していた女優・真木よう子であったことが後に判明している。このシーンでは出番のない真木が星野の演技を見学しようとセットの物陰へと潜んでいたが、完全に隠れておらず、彼女の顔がバッチリ撮影されてしまったのだ。
このシーンは一瞬だったためか、なぜか修正されることなく、現在に至っている。
現在はCG処理が進化したことにより、このような豪快な映り込み事故はほとんど見られなくなったが、同時に何とも言えない寂しさも覚えてしまうのは筆者だけだろうか。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)