もっとも、この日は裏番組がラグビーだった。ワールドカップ日本大会の準々決勝・日本対南アフリカ戦が41.6%の高視聴率を獲得した事情もあったが、もともと低視聴率で悩んでいた『いだてん』だけに、またも不名誉な伝説を生み出してしまったと話題だ。
さて、60年も続く日本のテレビドラマの歴史だが、『いだてん』をはるかに超える史上最低の視聴率となった作品は何かというと、昭和55(1980)年10月4日から放送された『ピーマン白書』というフジテレビ系のドラマだという。
『ピーマン白書』は『落ちこぼれ』と言われた小学生たちが、自分たちを受け入れてくれる小学校を求め放浪するという革新的なストーリーで、キャストは「怪優」として知られる岸田森を筆頭に中条静夫、樋口可南子と実力派をそろえ、脚本も『刑事くん』などのヒットドラマを手掛けてきた佐々木守と盤石の布陣だった。
しかし、あまりに革新的すぎたのか、前評判とは裏腹に視聴者がついてこれず、初回から5%と低迷。また裏番組が毎週30%以上の視聴率を記録していたお化け番組の『8時だョ!全員集合』(TBS系)だったためか、第2話にして視聴率2.6%を記録してしまいその後は一切回復することがなかった。結局、当初の予定を大幅に変更。全9話のうち6話以降を放送せず、あえなく打ち切りとなってしまったのだ。
この当時は、まだ家庭用ビデオデッキが普及しておらず、1ケタの視聴率は即打ち切りを意味していた。ある程度は仕方のない部分もあるが、今となっては信じられない措置である。
なお、『ピーマン白書』は打ち切りから1年後、深夜帯に未放映分を含む全9話を放送。やはり視聴率は取れなかったが、一部の視聴者には受け入れられ、今では低視聴率のエピソードも含め「伝説のドラマ」としてカルト的な人気を誇っているという。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)