最終回前半では沙希の夫・筧雅彦(高知東生)によって沙希の異常性が説明される。この説明によって沙希はミステリアスな存在から、頭が良くて美人だがヒステリックな女性という、ありふれた存在のようになってしまった。ところが、後半に進むにつれ、物語は急展開する。
前回放送から引き続いて、絵里子は狂気を増していく。まるで沙希とポジションが入れ替わったようである。この沙希と絵里子の類似性についてはラスト近くで興味深い説明がなされた。沙希を追う絵里子の視点でドラマは進み、遂に絵里子は沙希を見つける。
ミステリアスな笑みを浮かべる沙希に視聴者は引き込まれる。そして絵里子は沙希と対決する。「幸せな人って無神経なのかもしれないわね」「あまり不幸ぶらないで欲しいわ」と二人が本音をぶつけ合うクライマックスであるが、幕切れはあっけなかった。そして日常生活に戻る。
ここでエンディングになれば物語として区切られるが、ドラマには続きがあったために謎を残す結末となった。果たして沙希は生きているのか、誰が転居後の絵里子の家にDVDを送付したのかなどの点について説明されずに終わっている。そしてラストに登場した現実世界か夢の世界か区別できない沙希の妖艶さは視聴者の脳に焼付く。謎を残すラストに対する賛否は分かれるだろうが、謎を視聴者に考えさせることで強く記憶に残るエンターテイメントとなった。
(林田力)