私は、伯父さんの横で桃を食べながら、伯父さんの胸に抱かれている自分の姿を想像した。
私は、伯父さんの胸に抱かれたまま、前を見ていた。
私の髪の毛は、なびいている。けど、つり橋は揺れていなかった。私は顔じゅうに山の風を受けた。体から、力を抜いた。そのまま、伯父さんの胸にもたれかかって、目を閉じた。
目の前にある木橋は、小さい。
デパートの屋上の遊具は、小さな子ども向けで、運動公園にあったつり橋とは比べものにならなかった。
それに、固定式で揺れなかった。
けど、伯父さんに抱かれながら想像で渡ったつり橋も、揺れていなかった。
健太君が、また、服を引っぱってきた。
「ねえ、お姉ちゃん、やらないの」
おねだりするみたいな声だ。私にやってほしいのかな。
やりたい、一瞬、私も、そう思った。
けど、運動公園の空は透き通っていた。でも、今は、どんよりしている。それに、今日は、生理が始まりそうで体調が悪い。
「お姉ちゃんは、よしとく」
告げると、健太君は、私の服をつかんでいた手を放した。
背中の方から、健太君よりも、もっと小さな子どもたちのはしゃぐ声が聞こえた。アトラクションの汽車が、走りだしたみたい。
健太君、つまらないのかな。
「健ちゃん、帰ろっか」
うつむいていた健太君を促した。
帰りがけに、デパートの食料品売り場に寄った。
びっくりした。フロアーいっぱいに、果物、お野菜から、お菓子、缶詰まで、何でも並んでいた。
人もたくさんいた。町の人口が、いつからこんなに増えたのかと思うくらいだ。
お魚、お肉もあった。しかも、みんな、冷凍庫みたいな棚に入っている。
私が小さいころ、おばあちゃんの家に泊まりに来ると、おばあちゃんはいつも、商店街で買い物をした。魚屋さんにはお魚しかなくて、お肉屋さんには、コロッケや肉団子も売っていたけど、こんなにたくさんのお肉が並んでいるのは初めて見た。
お肉は、全部が、パックに包まれている。
(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)