またの名を「百鬼どんどろ」ともいう。
岡本氏は、現在全国順次公開中の瀬々敬久監督の映画『ヘヴンズストーリー』(http://heavens-story.com/)に重要なシーンで出演 し、その幻想的なパフォーマンスで話題を集めている。
しかし、とても残念なことなのだが、百鬼どんどろこと岡本芳一氏は、昨年7月に62歳という若さでお亡くなりになってしまった。
ただ、岡本芳一氏が存命中に、彼を取り上げたドキュメント映画『人形のいる風景〜ドキュメント・オブ・百鬼どんどろ〜』と、岡本氏原作にして、岡本氏と少女人形が主人公の映画『VEIN〜静脈〜』の2本が、この春「渋谷アップリンク」にて公開されるという。
といっても、岡本芳一氏のことを知っている方は少ないかもしれない。『VEIN〜静脈〜』のHP(http://vein-dondoro.jimdo.com/)によると、岡本氏は1974年よりテレビ人形劇などの人形製作をしながら、自作の等身大人形を使ったパフォーマンスを都内小劇場、街頭などで上演。
80年より荷車を引いて芝居道具、生活道具を積んで歩く旅芸人生活を開始する。
その人形劇のスタイルは、岡本氏ご自身も黒子としてではなく、人形と共演するという独特のスタイルであり、従来の人形劇ではなく、岡本芳一オリジナルの幻想的で妖美なものであった。
そう、岡本芳一が描き出す独特の等身大人形との共演劇は【幻想的で妖美】なのだ。
岡本芳一の人形劇にはセリフがない。
その分、エロチックなのである。
「エロス」が「生の世界」であるとすると、岡本芳一氏の人形劇は「タナトス(死の世界)」をも同時に感じさせてくれる。
岡本芳一と人形が主演する映画『VEIN〜静脈〜』は、とても静かな映画で、観る者は「生の世界」と「死の世界」の間を、漂流させられてしまうような作品だ。
そこには一抹の狂気すらも感じられる作品なのだ。
決してエンターティンメントの娯楽作品ではない。どちらかというと、アンダーグラウンドの映画や、サブカルチャーの映画、マイナー作品にジャンル分けされる映画であろう。
『VEIN〜静脈〜』を撮った渡邊世紀監督に、この作品を撮った意義と、これから観る皆様に対して見どころをお尋ねしてみた。
−− 映画『VEIN〜静脈〜』を撮った意義や思いを教えてください。
渡邊世紀監督(以下「渡邊」) この作品は、今までになかった、新しい「映画」だと思っています。新しいというのは、3Dのように映像の技術面ではなく、人形と人形遣いが映画の登場人物となってドラマを紡ぐ、という表現においてです。
−− 岡本芳一さんと人形の共演ということですね」
渡邊 等身大人形と芝居をするという、岡本さんがずっとやってきたこと自体が極めてオリジナルなものですが、この作品を通して、そういった『表現の多様性』をもっと一般的に受け入れてもらえる社会になってほしい、というのが僕の願いです。
−− 確かにオリジナリティがありますね。観ていて不思議な気持ちになります。
渡邊 でもこの作品は、様々な人に訴えかける作品だと思っています。岡本さんが言っていましたが、人形は空っぽの〈器〉だから、「観ている人の心を映す鏡」になりうると思うんです。
−− この映画はどうすれば、観ることができますか?
渡邊 日程はまだ決まっていませんが、2011年陽春、「渋谷アップリンクX」にて公開になります。決まり次第、ホームページでお知らせしますので、もうしばらくお待ちください!(映画『VEIN』HP http://vein-dondoro.jimdo.com/)「百鬼どんどろ」を追いかけたドキュメントと同時上映です。ぜひ、新しい「体験」をしに来てください。
−− ありがとうございました。
岡本芳一(百鬼どんどろ)は、いまはもういない。
しかし、日本の芸術史に記録と記憶に残されておくべき人であろう。
(巨椋修(おぐらおさむ) 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/