−−日本語の勉強はいつからはじめられたのですか?
10年前に独学ではじめました。イタリアに留学して帰国してからです。僕はイタリアで言語学習がとても好きだということがわかり、帰国してから、幼なじみの日系人の女の子と再会して、僕が彼女にイタリア語を少し教えて、僕は彼女に日本語を教えてもらいました。お互い文化交流みたいな感じで、勉強しました。もともと、小学生の頃から日本に対する親しみを感じていました。伝統的な日本の美意識に興味を持って、将来は絶対に日本語を勉強したいと決心していました。そして、大学では日本文学を専攻しました。日本の岡崎市に留学もしました。
−−大学で日本文学を専攻されたということですが、日本人の好きな作家は?
好きな小説家はいっぱいいるのですが、谷崎潤一郎ですね。大学の時の僕の論文が谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」でした。この作品は日本的な美意識の説明をするような作品ですから、僕はとっても興味がありました。谷崎潤一郎の作品は西洋と日本の関係が扱われているので、僕にはピッタリでした。
−−興味のある日本人のミュージシャンはいますか?
まずは、サザンオールスターズです。「太陽は罪な奴」はアメリカの60年代を思わせるような曲です。桑田さんは声も魅力的ですし、本格的な英語の発音もできますよね。そして、高校生の時に影響を受けたのは、モンゴル800です。寿司屋さんで、握り寿司を食べている時に耳にして、すぐに夢中になりました。あと、まったくジャンルは違うのですが、美空ひばりさんです。歌詞に含まれている物語や感情的な歌い方に感動しました。好きな曲は「川の流れのように」です。
−−ちなみに、「川の流れのように」の作詞家は知っていますか?
もちろんです。秋元康さんです。すごいですよね。AKB48の「ヘビーローテーション」と同じ方が「川の流れのように」を作詞しているなんて。これは日本の音楽業界の魅力的なところだと思います。アメリカだと違うジャンルの曲の作詞を同じ方が担当するということはあまりありません。
−−NYで日本の音楽のCDは簡単に買えるものなのですか?
実は、容易に買うことはできません。大学の時にクラスの先生に色んな日本の音楽を紹介して頂きました。
−−日本の音楽からも影響は受けましたか?
日本語の歌詞である「CHANGE」と日本での経験を曲にした「American Boy」は、日本の音楽から影響を受けて製作した作品です。
−−「CHANGE」は日本語の歌詞ですね。なぜ、日本語で歌詞を書こうと思ったのですか?
外国語で作詞をすると、ある意味で解放されるんです。先入観もないので、白紙の状態からはじめることができます。
−−日本語の歌詞で難しかったところは?
イントネーションですね。やっぱり、日本語が母国語ではないので、イントネーションに関する微妙なところは難しいです。アナウンサー向けのアクセント辞典を参考にしました。
−−また、「CHANGE」は日本の震災復興の曲でもあるということですね。
震災のニュースはテレビで知りました。恐ろしい映像が見えて非現実的な感じで、「まさか…」と思いました。機会があれば、ぜひ被災地で「CHANGE」を歌ってみたいです。そういうコンサートができたら、光栄ですね。
−−東北以外で日本で行ってみたいところはありますか?
きのう、ウニのお寿司を食べました。とっても美味しかったです。なので、北海道で魚介類を食べてみたいです。イクラも好きなんです。日本食は何でも好きなんです。納豆、もずくも塩辛も。最初は抵抗があったものでも、何度もトライしていくうちに、好きになっていきました。あとはご当地ラーメンを食べ歩いてみたいです。
−−最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
人生の豊かさをエンジョイして下さい! 僕も絶対に日本でCDをリリースしたいと思います。着うた、着メロもでます。僕はファンとの交流を大事にしていますので、Facebookやツイッターで最新情報をぜひチェックしてみてください。
●アレックス・ヨーク
アレックス・ヨークは、日本への深い関心から、独学で日本語を始め、歌や作詞作曲をも手掛けるようになる。それにより、名門私立イェール大学では、日本文学を専攻、古典文学をも含み日本語を極める。人気雑誌「Time Out New York」のネット上で、彼を「ロック・スターの卵」と呼ぶ。「ロックNYC」でのレビューでは、「観客との、稀に見る見事な連帯感」と、彼の特徴ある表現の巧みさを絶賛される。名誉ある音楽祭、「ハリウッド・ミュージック・イン・メディア・アワーズ(HMMA)」では、彼の楽曲「Spaceman」(スペースマン)が、2012年最優秀ポップ賞にノミネートされ、昨年の「Tokyo Heartbreak(東京ハートブレイク)に続き、2回目のノミネートとなる。 日本の視聴者の間で、YouTube、世界のミュージシャン部門では、上位50位内にランクインする根強い支持を得ている。
写真=Ash Fox