『RIZIN.17』
▽28日 埼玉・さいたまスーパーアリーナ 観衆 16,930人(満員)
元K-1ファイターの大雅は、2017年6月、K-1のリングで皇治に勝ってから約2年間勝利から遠ざかっていた。K-1 WORLD GPスーパーフェザー級王座にまで上り詰めたものの昨年にK-1を離れ、RIZINやRISEに主戦場を移すもなかなか結果が出なかった。今回の町田光戦は「負けたら死ぬ」覚悟で臨んだという。
記者会見や計量では、RIZIN初参戦で爪痕を残そうとした町田の個性的なキャラクターに持っていかれたが、試合では、1Rから町田がアグレッシブな動きを見せる中、大雅は冷静に対応していたように見えた。町田が必殺技の居合いパンチのポーズを見せると、大雅も掟破りの居合いパンチのポーズで応戦するなど、「後がない」精神状態の中にも余裕が見受けられた。
2R終盤には大雅のスーパーマンパンチが町田の顔面をかすめると、そこから怒涛のラッシュ。惜しくもこのラウンドは倒しきれなかったが、3Rは町田の飛びヒザ蹴りやワンツーをかわし、終盤にラッシュからの左フックでダウンを奪う。これが有効打になり、大雅が3-0の判定で町田を倒した。
試合後、マイクを持った大雅は「RIZINに出させてもらってから全然いい試合ができてなくて、きょうの試合もダメダメだったんですけど、これからRIZINファイターとして、RIZINをもっとでかくして、盛り上げられるように頑張るんで。僕の目指しているところは変わってないので、これからも追いかけ続けていきます」とあいさつ。テレビカメラはリングサイドの那須川天心が笑顔で拍手を送る姿を捉えている。
インタビューブースで大雅は「ホントはもっとリラックスして試合したかったんですけど、固くなっちゃって倒しきれなかったですね。負けたらホント死ぬと思ってたんで(苦笑)。固くなってましたね。リラックスしきれなかったです…まだやりきれてないですね。ホント全然2割しか出てないんでもうちょっと冷静に試合できるよう練習します」と反省しきり。以前から熱望している天心戦については「年末にやりたいです。次って言ったら早いと思うので、10月に強い選手とやらせてもらって、そこでしっかりKOしてアピールしたいです」と語った。今後は大晦日での天心との対戦を見据える。
報道陣からこれを伝え聞いたRIZINの榊原信行CEOは「RIZINでもやっと1勝して片目が開いた。試合後、話しましたけど反省しきりだったので良かったなと。この試合で満足されても困るわけで。もっと高みを目指してまだ若いのでしっかり頑張ってほしい。(天心戦については)試合後、カメラが天心を抜いてましたけど、天心は笑ってましたからね。眼中にないと言うか、視界にも入ってないんじゃないですかね」と辛口。「試合を見て天心がシリアスな顔をするくらいにさせないと、きょうの試合内容で天心とやるにはまだまだだと思います。でも全然若いんで一気に成長する可能性がある。まだまだ期待はしたいと思いますね」と来月23歳を迎える大雅に榊原CEOらしいエールを送っていた。
天心対大雅はK-1離脱後すぐに実現していたなら、さいたまスーパーアリーナが埋まるぐらいのドリームカードだった。しかし、天心は堀口恭司とキックボクシングルールで、フロイド・メイウェザーとボクシングルールでそれぞれ対戦し、さらに大きな存在になり、大雅は足踏みをしてしまった感が否めない。ここから年末に向けて、“あの頃”以上の進化した大雅を披露し、再び天心戦をドリームマッチと思わせてもらいたい。
取材・文・写真 / どら増田