『RISE WORLD SERIES 2019 Semi Final Round in OSAKA』
▽21日 大阪・エディオンアリーナ大阪・第1競技場 観衆 5,850人(超満員札止め)
キックボクシング団体RISEは21日、ワールドシリーズの準決勝をエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)で開催した。
格闘技界の“神童”那須川天心(TARGET/Cygames)が大阪に初上陸するとあって、試合前にグッズ売場の開場時間を早めることに。難波の街に天心のTシャツやマフラータオルを身にしているファンを多数目にするなど、この日のミナミは“神童”歓迎ムードが出来上がっていた。チケットも約2カ月前に完売し、天心が参戦した6月のRIZIN兵庫・神戸ワールド記念ホール大会も札止めになったことからも関西での“天心待望論”が高まっていることが分かる。
今回はカードも良かった。昨年2月にKNOCK OUT東京・大田区総合体育館大会で「いままでの相手でいちばん強い」という触れ込みで対戦し、判定勝ちを収めたもののKOを逃したスアキム・PKセンチャイムエタイジムとの再戦が、-58kg世界トーナメント準決勝で実現したのだ。天心にとって今年の目標はこのトーナメントで優勝し“世界一”になること。この日は「本気の天心」が見られると大きな期待が寄せられていた。
天心はそんな大阪のファンに応えるかのように、なんとタイガーマスクのような虎柄のコスチュームで入場。これがスクリーンとビジョンに映し出されると大きなどよめきが起こった。先日、天心は矢沢永吉のライブを訪れている。いつもより入場に時間をかけ、入場テーマ曲『止まらない Ha〜Ha』も長く流れた。パンパンに入った会場から途切れぬ大歓声が寄せられる中、試合開始のゴングが鳴った。
「もっとガンガン来ると思った」
スアキムは今年に入り、少し荒っぽい試合を繰り広げ豪快に勝ってきたが、天心は「そこに迷いを感じるし隙がある」と戦前に分析していた。しかし、この日のスアキムは距離を作り見合う闘い方に切り替えていた。「パンチを警戒していると思った」という天心は「いろいろ試そうとしてしまった。重いパンチをもらってしまったり課題は残った」と試合後に反省。しかし3Rになると、「狙っていた」胴回し回転蹴りがスアキムの額を見事に捉えた。スアキムは「骨が見えるほど」のカットを負い、1分13秒ドクターストップでTKO勝ち。決勝進出を決めた。
セコンドのTEAM TEPEN・那須川弘幸会長は「あれ(胴回し回転蹴り)は彼の判断でやったもの。決まったときは『あっ』と思った」とその瞬間を振り返っていた。
「大阪はアツかったですね」
試合後、客席を仕切る柵が10本折れたそうで、関係者は苦笑い。「もっといい那須川天心が見せられたら良かったかなと。9月の決勝は楽しみにしてもらいたい。最近よく(相手を)切ってるんですよね。殺傷能力がついたのかな。パンチでもキックでも切れてる。肘じゃないですから。『侍』ですね(笑)」と天心流の言い回しでマスコミを和ませた。
決勝(9.16千葉・幕張メッセ・イベントホール大会)の相手は、セミファイナルで優勝候補のルンキット・ウォーサンプラパイ(タイ)を破った志朗との日本人対決に。志朗は「天心君はルンキットとやりたかったと思うけど、9月は僕が倒す」と優勝宣言。インタビュールームでは「天心君とやるならボクシングジムに通わないと」と話していた。天心は「志朗君は強い。一発一発が的確。しっかり距離を取ってやらないと厳しい闘いになる」と語り、早くも臨戦態勢だ。
9.16の前には8.18RIZIN愛知県体育館大会があるが、天心が出場するかは流動的。今年の目標である世界トーナメント優勝に向けて、決勝までの時間は準備に充ててもらいたい。
取材・文 / どら増田
写真提供 / ©︎RISE